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絶滅記  作者: banbe
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力の正体3

 翌日、ルインが目を覚ましたのは太陽が真上付近になってからだった。


「凄く寝た気がする……うーん」


 伸びをした後、ルインは地下に通じる扉の方を見る。


「まだやってるのかな?」


 地下への入り口からは物音が聞こえ、中の魔女が調べているのが分かる。

 ルインは周りの荷物を片づけ、作業場のドアをノックする。


「あれ?」


 返事は無くだが、作業の音は止まずに聞こえていた。


「あの~」


 ルインは恐る恐る扉を開け中を覗く。

 部屋の中では魔女はフラスコや試験管に囲まれ、机には魔法陣や呪文らしい物が書かれた紙が乱雑に散らばっていた。


「ん?あぁ、あなたか、もう少し待って。今度こそこれで分かる筈……」


 魔女は持っている試験管に他の試験管から入っている液を少量入れる、だが――。


「うーんまたダメか……」


 どうやら思ってる結果とは違うようで、魔女は机の上に項垂れる。


「ハァ……今何時ぐらい?」

「多分お昼くらい、上手くいってない?」

「……キリも良いし食事しながら上で話しましょう」


 二人は一階に上がり、魔女は二人分の食事の準備し始めるとルインも手伝った。


「悪いね、俺まで」

「良いのよ……お客さんなんだし」


 準備ができるとしばらく静かに食事をとるが、我慢できずルインが結果を聞く。


「それでどうだった?」

「……結論から言うわ、あなたの力の正体は分からなかった」


 魔女は口を拭きながら続ける。


「何か魔術に近いような気配は感じるのだけど……科学方面から見ても魔術的方面から見ても何も出てこなかった」

「そっか……」

「ごめんなさい、単純に私の力不足ね。調査の方のお代は要らないわ」

「わかった、ありがとう。なら宿泊費を……」


 ルインは財布を出す。


「それなんだけど……」


 魔女はルインの財布をジーっと見る。


「あなた財布の中に金貨しか入ってなかったわね……」

「そうだね?」

「金貨一枚で一宿は流石に貰いすぎよ」

「良いよ一枚くらい、いっぱいあるし」

「あなた行くあて無いんでしょ?ダメよ無駄遣いしちゃ……」

「でもどうすれば」

「うーん」


 魔女は腕を組んで何か悩んでる様だった。


「仕方がない……人間の国から見て西側山岳地帯に国があるの。そこに私の師が居るわ。私にできない事でも師匠なら……」

「そこに行けば力の正体がわかる?」

「多分ね、でもあなたはその国までの道は知らない」

「そうだね、地図もこの森付近で途切れてた」

「そこで私が国まで案内して、師匠に直接調査を頼んであげる。そうすれば金貨分に見合う仕事になるはずよ」

「俺はありがたいけど良いの?」

「そろそろ師匠の所に顔を出さなきゃとは思ってたし、師匠と一緒に調査すれば勉強にもなるわ」

「なるほど……そういう事なら案内をお願いするよ」

「そうと決まれば早速準備しなきゃ。その前に一緒に旅をするなら自己紹介くらいしとかないとね、私の名前はチウィー。よろしくルイン」

「ああ!よろしく!」


 二人は握手を交わした。

 「魔女は旅支度の為、二階の自室へ戻り、ルインは外の馬のもとへ向かい荷を積んだ。

 すると見張りながら座っている獣人が話しかけてくる。


「なんだ帰るのか」

「帰るとは違うけど、山岳地帯の国に行くことになってね」

「なら見張りも終わりだな」


 獣人は立ち上がり伸びをする。


「もう二度と来るな。確かに今のお前は俺達をどうこうする気が無いのは分かった。だが俺達はお前を忘れないし許さない」


 獣人は手でルインを追い払うようにする。

 ルインが馬に荷物を乗せてると家から魔女が出てきた。


「お待たせ」

「そんな軽装で良いの?」

「師匠の所に行くのには慣れてるもの」


 魔女の手には箒が握られており、箒の先には風呂敷が結ばれていた。


「まあ貴女がそういうなら」

「まさか魔女さんそいつに着いて行くのか!?」


 獣人は魔女とルイン二人を交互に見比べる。


「ええ、最近この森に来たあなた達は知らないだろうけど私だってずっとこの森に居る訳じゃないわ。森の外の人達と取引したり、必要なら国にだって行く。それに、今回だって師匠の所に行くのよ」

「魔女さん、あんたには戦場で敗れた俺達によくしてもらった恩があるから言う。そいつと行くのは止めとけ!」

「どうして?」

「確かにそいつに敵意や悪意が無く力も故意じゃないのは分かった、だが力が強すぎるんだ。巻き込まれるぞ!」

「それをこれから解明しに行くのよ、それに彼の力ならどんな敵も跳ね返してくれるんじゃない?」

「あんたはあの光景を見てないから……その悪魔は敵味方の屍の中、平然と歩いていたんだ。あの光景を見た時俺は死んだかと思った、正直今目の前に立ってる事すら恐ろしい……」


 獣人は震える手を見せる。


「ご忠告ありがとう、でもこれは私の仕事だから。それに私は巻き込まれても切り抜けられる自信はある」

「……そうか、あんたは強い。余計なお世話みたいだったな。だがな悪魔!」


 獣人はルインに向かって指を差しながら叫ぶ。


「この魔女に何かあったならこの辺一帯の者達から恨まれる事になるぞ!」

「ああ、分かってる」


 魔女とルインは獣人の横を通り過ぎ森の出口へ向かう。


「じゃあ道案内よろしく」

「そうね、でもその前にノバ族の所に行かせて、彼らはどっちの方角に行ったの?」

「それならあっちだ」


 ルインは馬にまたがり魔女は箒に腰掛け浮かぶ。二人は森を南西に向かった。

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