17
「小説の通りに話が進むとは、私も思っていない。違ってきている点はいくつもある。だけど、パパとママは依然不仲のままだし、レヤードが本当に現れた。私心配なの! だから、ママにはうんと注意をして欲しい。絶対にレヤードに誘惑されたりしないで、……お願い、ママ……」
次第に涙声になってゆくキアラをアミーリアはぎゅっと自分の胸に押し付けて、頭を優しく撫でた。
「馬鹿ね。あんなうらなり、ママの好みじゃないってキラちゃんがいっちばんよく知ってるじゃない。あんなのにママが好き好んで付いて行くはずないでしょ!」
「……うん」
笑い交じりだが断言するアミーリアに、キアラは安心したようにアミーリアの胸に顔を埋めた。ギディオンも植栽の陰で大きく安堵の息をつく。
「でも気を付けて……。ママ、死んじゃヤダよ……」
「わかってるって。ママだってキラちゃんを置いて死ねないもの。ん? そう言えば、小説の中のキアラはアミーリアが死んだ後どうなったの?」
「あぁ。……アミーリアとギディオンが相次いで亡くなった後、孤児になったキアラはね、シルヴェスターとロザリンド夫妻に引き取られて、アーカート王家の養女として育てられるの。ただ、ファーニヴァルの血筋って出自は秘匿されていたから、従姉同士だとは知らずに主人公と対立する悪役令嬢みたいな役どころになる。で、あれやこれやの末、主人公を殺そうとして返り討ちにあって二十歳くらいで死んじゃうの」
「な……な……、なんですって——⁉」
よりにもよって、あの二人に引き取られる⁉ わなわなとアミーリアは震えた。
「有り得ないッ! あの二人に私の大事な大事なキラちゃんを渡せるものですかッ‼ 死なないわ、ママっ! ええ、ええ! 石にかじりついてでも死ぬもんですかッ! キラちゃんを一人になんて、絶対ぜーったいしないから! 約束するわ!」
ギディオンも激しく頷き同意していた。何が何でも二人は守り抜くと、拳を固く握りしめていた。
涙ながらの懇願よりも、こっちの方が効果的だったのがなにやら複雑な気分になったキアラだが、結果オーライだ。
「ママ、その言葉忘れないでね。絶対だよ」
「もちろんよ。ママがキラちゃんと約束したことを守れなかったことがあって?」
ドヤ顔で言うアミーリアに、キアラはパッと満面の笑顔を見せた。
「ない!」
「当然よ!」
二人は視線を合わせてニヤッとし、明るく笑い声を上げた————時だった。
俄かに世界が赤錆色の、不吉な色に染まる。突如、晴れた朝から夕暮れ時に切り替わった。それぐらいの変化だった。
「え? なに……?」
咄嗟に空を見上げたキアラは、ギクリと体を固くした。一瞬、前世で死んだ時のことが頭を過ぎった。
空全体が夕焼けというより血が滴ったかの如き赤黒い色に変わっていた。太陽は、いつもとはまるで逆に光を吸収するかのように黒く、ぽっかりと空に空洞を作っている。自分の知っている日食とはまるで違う。初めて見る光景に、キアラは底知れぬ恐怖を感じた。
「蝕……!」
アミーリアはひとこと呟くと、弾かれた様にキアラを抱えたまま立ち上がり、慌てて建物の方へと走り出した。近くに控えていたらしいアナベルがすぐさま駆け付けキアラを受け取ると「こちらへ! 急いで」と先導する。
ギディオンはアミーリアとキアラが建物の中へ入るのを見届けると、急いで隠し通路の扉を潜り、執務室へと踵を返した。
子供部屋へ戻り、慌ただしくメイドたちが部屋中のカーテンを引き、気持ちを落ち着かせるハーブティーを用意すると、部屋を下がっていった。
アミーリアはキアラを何かから守るようにぎゅっと抱え、ソファに沈み込んだ。誰も部屋からいなくなったのを見計らい、キアラが尋ねる。
「ママ……。あれが“蝕”なのね?」
“蝕”とは、この世界で時々起こる現象である。
この世界には、創世神という神の概念は存在するが、魔法もないし、不思議現象を起こす精霊だの妖精だのも(たぶん)実在しない。
だが、唯一不可解で、不思議と云える現象————それが“蝕”なのである。
“蝕”は、突然前触れもなく起きる。昼夜時間は関係ない。
特に“蝕”によって、世界に何かがあるわけではない。
だが、その現象がどうして起こるのか、何で起こるのかを知るものはいない。いないからこそ、人は恐れ、忌避する。
迷信だとは思うが、古来より“蝕”が起こっている最中に外にいると気が触れるとか、神隠しに遭うとか言い伝えられている。だから“蝕”が起こると、人々は何をおいても家の中に戻り、“蝕”が終わるまでその赤黒い闇を避けてやり過ごす。
そして、ファーニヴァル大公家では————
キアラの問い掛けに、アミーリアはキアラを抱え込む腕を少しだけ弛めて、顔を上げた。
「……そうか。キラちゃんは小説で知っていたのね」
「うん。でも読むのと見るのは大違いだね。びっくりした」
「アレを見るたびに、嫌な気分になるわ。昔はどうしてかよく分からなかったけど、咲の記憶を全部思い出してやっと理解した。キラちゃん……あなたを失った日を思い出すからなのね……」
アミーリアはキアラの存在を確かめるように、キアラの髪の匂いを嗅ぎながら自分の頬を何度もこすりつけた。
「うん……」
キアラもあの月蝕の夜を一瞬思い浮かべ恐怖を感じたから、きっとそうなのだろう。
アミーリアははぁっと大きくため息をつき「嫌な気分になる上に、面倒な儀式もしなくちゃいけないなんて」と少々愚痴っぽく零した。
キアラは(あ、もしかしてアレかな……?)と思い当たった。
小説の後半で謎設定がでてきたのだ。ファーニヴァル大公家で蝕の後に特別な儀式を行って『世界の落し物』なるものを集めていたことを知り、主人公がその『世界の落し物』探す為にレティス城を捜索する——と云うくだりがあった。
魔法のない世界なのに、 “蝕” や“世界の落し物”という突然の不思議設定にびっくりしたものだった。小説は未完なので、それが何なのか、どうして探していたのかは、分からないままだったが。
「それも知っているのね」
早合点されてアミーリアに流されてしまった。
「じゃあ、明日はキラちゃんにも付き合ってもらうわ。いずれ教えなくちゃいけないことだし。————ついでに確かめておくこともあるから」
と、アミーリアは聞くともなしに最後の言葉を呟いた。キアラは連れて行ってもらえるならいいかと、特にそれ以上追及しなかった。
次の日、レティス城の秘匿された場所“蝕の間”へ向かうことになった。
城の最奥にある“玉座の間”。その小さな部屋には、金銀と宝石でごてごてと飾られた玉座しかない。が、先々代の大公が命じ、当代最高の職人たちを呼び寄せて手間と贅を尽くして作らせたと伝えられる豪奢な部屋だ。
玉座の上には天蓋があり、玉座を守るように幾重にも美しいドレープを描くカーテンが降ろされている。
玉座の背面以外の壁と高い天井には、初代大公が民を率いて国を発展させていく様子が物語のように精緻な筆致で描かれている。玉座の背面だけは、ファーニヴァル大公家の紋章が織り込まれたタペストリーが掛けられていた。
金箔や宝石で装飾された柱や梁は、大きく豪華なシャンデリアの光を反射して、どこに目を向けても眩しいばかりに輝いている。
ふとアミーリアはそのシャンデリアに目を向け、この儀式のためだけに点灯される大量の蝋燭とその労力を考えてため息をつき、非常に申し訳ない気持ちになった。次回からはシャンデリアを点灯するのはやめようと心に決めた。
キアラもこのいわゆる“きんぴか”の部屋を見て、(腐ってるね、大公家)と呆気にとられた。何故なら、この部屋は“蝕”の後に大公家が行う儀式にしか使わないのだ。ここは、自分たちの富を確認し自尊心を満足させるためだけの部屋なのだ。
そんな部屋の扉の前に、キアラとアミーリアはいた。豪奢な部屋とは相反した、汚れてもいい簡素な普段着で。
しかもアミーリアはキアラを背におんぶしていた。さらしのような幅広の布のおんぶ紐を胸の前でバッテンに掛けた、古式ゆかしいおんぶ姿だ。手には実用的なランプがひとつとウエストポーチのようなものを腰に巻いている。
以前は、この部屋でなんやかんやと仰々しいセレモニーを行ったのだが、必要ないし面倒な上お金もかかるので割愛だ。使用人たちには、アミーリアとキアラがこの部屋で禁秘の儀式を行うのだといってある。
「では、いってきます」
アナベルに声を掛けると「私も居てはダメなのですか?」と昨日から何度も繰り返された懇願を再びされた。アミーリアも昨日と同じように首を横に振った。
「ダメよ。扉の前で待っていて」
そう言って、玉座の間の扉と鍵を閉めた。
本当にこの奥だけは、駄目なのだ。その意味を、代々の大公は次代へと伝えてきた。……ハズだ。
アミーリアは玉座の間をまっすぐ玉座の方へ進み、玉座に到着するとその後ろへ回った。玉座の後ろの壁に掛けてあるタペストリーを手に取り、ぺらりとめくる。ここには隠し扉がある。
「じゃ、キラちゃん。行くから、ちゃんと見ててね」
壁の、床に近いある場所を押すと、かちりと音がして壁の一部が静かに横にスライドする。
隠し扉の先には、何の装飾もないただの石の螺旋階段が下に向かっている。下の方は真っ暗で、かなりの段数があることが見て取れる。
ランプを付けて、慎重に降りていった。キアラをおぶっているのでアミーリアはいつも以上に気を付けた。
十数分も階段を降りただろうか。しばらくすると踊り場に到着した。踊り場からまっすぐ伸びた通路に繋がり、その先に扉が二つある。アミーリアはまずは奥にある扉の方へ向かう。ウエストポーチから鍵の束をだすと、扉に五個ある鍵穴のうち、三個を鍵束から鍵を選んでカチリカチリと開けていく。
「キラちゃん、これね、絡繰りになっていて、鍵の開ける順番を間違えるとロックされちゃうから。あと、この五個の鍵穴の内二個はフェイクで、そっちに鍵が差し込まれてもロックがかかるの。ロックを解除するには、城の宝物庫にある解除用の鍵を使わないといけなくて、何度も往復するはめになるから、気を付けて覚えてね」
「う、うん……」
アミーリアは、鍵穴はここが最初で、二番目はここ……、鍵は最初がこれで……と指し示してくれたが、キアラは一度で覚えられる気がしなかった。
「蝕の度にここには来なきゃいけないから、その都度教える。ちゃんと憶えてね」
「はい」
キアラが神妙に答えるとアミーリアは嬉しそうに頷き、扉を開けた。
「わ、あ……」
思わずキアラは声を上げた。扉の向こうは室内かとおもいきや、目の前には山々を見晴るかす景色が広がっていた。
そこは切立った山の中腹にある、ちょっとした窪地だった。城のある方向以外は断崖絶壁。誰も来るはずがないのに、不思議と手入れをされた広場のように窪地には草がない。周辺は茂みや木立が鬱蒼としているのに、なんとも不思議な空間だ。
この窪地がある山を背に城が建てられているので、城の隠し通路から来ないとこの場所には出られないのだろう。出てきた扉を振り返ってみると、平屋の石造りの建物になっており、出てきた扉と反対側の端が城の一部である背の高い塔に繋がっていた。
隠し扉の入り口があったのは城の最上階にある“玉座の間”、隠し扉の中の螺旋階段は、この背の高い塔。ということは、城の最上階から最下層まで一気に降りてきたのか、とキアラは塔を改めて眺めた。
(ママが面倒がるはずだ。これ、また昇っていかなきゃならないのか……)
キアラが帰りの心配をしている間に、アミーリアは窪地の中央まで歩いてきていた。周囲を注意深く見回すと「今回はなにも落ちてこなかったみたいね」と安堵とも残念とも云うような口調で呟いた。
「昨日の蝕は三十分くらいで終わったものね。時間が長いと落ちていることが多いらしいわ」
(世界の落し物って比喩ではなく、本当に何かが落ちているのか……)
そういった詳しいことは小説には書かれていなかったので、興味深く話を聞いていた。“世界の落し物”は毎回あるわけではないらしい。それにしても落し物っていったいなんだ。
「本当かウソかは知らないけれど、ずいぶん昔に丸一日以上蝕が続いたことがあって、その時は魔物が落ちてきたって話もあるわ。記録に残ってないから眉唾だけどねー」
“蝕”は突然前触れもなく起こり、起こっている時間も数十分の時もあれば、長い時には丸一日続くこともあったという。だが、丸一日以上は、破格に長い。
「えー? 魔物ってなんだろうね。気になるぅ」
ちなみにこの世界には魔物とか悪魔とかも(たぶん)いない。存在するのはほとんど地球上の生物と一緒である。
「その一端には触れられるわよ」
「どういうこと?」
「見ればわかるわよ」
キラちゃんの反応が楽しみーと、アミーリアは出てきた扉に戻り、さっき素通りしたもうひとつの扉へ向かった。
もうひとつの方も、最初の扉と同じ様に五個の鍵穴があり、また違う組み合わせで鍵を開けた。
「ママ……この鍵の開け方ってメモしちゃダメなんだよね……」
「そうねぇ。覚えてね」
にっこりと圧のある笑顔で返され、うぐっとキアラは口籠った。
「さぁ、キラちゃん。ここが“蝕の間”、ファーニヴァル大公家秘密の宝物庫よ!」
扉の先は、宝物庫という割に見た感じは倉庫だった。
二十畳ほどの広さの部屋に、陳列棚のようなものや、細かく仕切りのある棚や木箱などが、所狭しと置いてある。その中にはサイズの大小はあるがどれも手で持てるくらいの“なにか”がおさめられていた。
木箱の中に何個も無造作に置かれているもの、ガラスケースに大事に入れられているもの、と保管の仕方はさまざまではあるが、どれにも年代と日付が書かれた札が付けられている。
近くにあった木箱を覗くと、なんとなく見慣れた品々が目に入った。
「ママ! これ、スニーカーじゃん! え? それはTシャツ?」
片側だけの薄汚れて底が破れたスニーカー、何かのキャラクターが描かれたボロボロのTシャツ……。
驚くキアラを見て、アミーリアはしてやったりとでも言いたそうにニヤニヤしていた。
「“蝕”の後にはね、時々こういうモノがあの窪地に落ちているの」
「え。と云うことは、蝕の時に地球のものがあそこに落ちてくるってコト⁉」
「いまの私たちには地球のものってわかるけど、この世界の人間には全く見たことも聞いたこともない、“世界の落し物”としか言いようのない不可解なものなんでしょうねぇ」
「ここにあるモノ、全部地球のものなの?」
「全部って訳でもなさそうなの。ママにもなんだか分からないものが沢山あるから。ただ、落し物は過去も未来も関係ないみたいだから、もしかしたらママが見て分からないものは、うんと未来の地球から落ちてきたものかもしれないし、もしくは地球以外の別の惑星、別の次元の世界……そんな可能性だってあるわよね」
思っていた以上に“蝕”は不思議設定だった……! とキアラは愕然とした。
「それで、ここからが重要よ、キラちゃん。ファーニヴァル大公家は昔から、この落し物をきちんと保管し、記録を付けているの。この本棚にある日誌が全部そう。ここには“蝕”のあった日と時間、落ちていたものの形状をできるだけ詳細に記しておく。初代大公がこの場所を発見してからずっと続けてきたことなの」
初代大公——アーカート王国の元王子——がこの窪地を見つけた時、そこら中に妙なものが落ちていた。大方は何に使うのかわからぬガラクタばかりであったが、中には目を瞠るような驚くべきものもあった。
「初代大公はガラクタの中から、特殊な金属の破片や見たことの無い織り方の布、見知らぬ加工技術で作られた宝飾品……、そういったものを目敏くみつけたらしいの。いまのファーニヴァルの発展は、それらを研究資料として模倣したところから始まっているのよ」
「へぇぇー!」
そうか。だから主人公は、小説の中では失われてしまった“世界の落し物”の場所を探したのか。
「ここにあるものは本来持出禁止。国家機密ですからね。代々の大公は、この意味をちゃんと理解し、遵守してきたはず……なのに。あの馬鹿親子ッ……‼」
突然アミーリアは激高した。
「ママ?」
アミーリアはつかつかと部屋の奥にあったガラスケースに近付いた。ガラスケースの中はビロードのクッションが置かれていて何か貴重な物があったことを伺わせたが、そこには札が数枚残っているだけで、なにも入ってなかった。
「ここには宝飾品が保管されていた。大公の即位の際にだけ正妃がつけることを許される、ティアラと首飾りとイヤリングのパリュールがね!」
「城の宝物庫ではなく、ここにあったってことは……」
「そう。その宝飾品に使われているダイヤが“落し物”なのよ。この世界ではまだ存在しないブリリアントカットのダイヤ」
ママの説明によると……
ラウンドブリリアントカットが出来るようになったのは、地球でも十八世紀以降。ダイヤを精密加工できる機械の開発と数学者による屈折率や反射率の計算によって可能になったカットデザインなのだそう。
この世界の宝石加工技術のレベルはせいぜいが十五~六世紀くらい(らしい)。現在のダイヤのカットはオールドカットと呼ばれる、カット面がそんなに多くないローズカットが主流だという。
この世界に於いてブリリアントカットのダイヤは、いわばオーパーツ。まだ世に出してはいけないものなのだ。
そんな稀少なものが出回っては、国同士で奪い合い、争い合うことだって起きかねない。
「それをね、この前来た宝石商レヤード、あ、アランだっけ。もうどっちでもいいわ、そいつがその首飾りを持っていたのよ!」
それでレヤードの持ってきた宝飾品をママはあんなに舐めるようにみていたのか、とキアラは腑に落ちた。
だが、ならばどうしてあの時に首飾りを買い取らなかったのだろうか……。いや、よく考えればあそこで首飾りだけ買い取ってしまったらティアラとイヤリングを逃してしまう可能性がある。
(そうか。セットで取り戻す為にパリュールが欲しいだなんて、あの時ママは言ったんだ。だけど……)
「でも、それってどういうこと? 盗まれたにしても、誰もこんなところに入れるワケないよ」
ここに来るまでの道のりは秘密にされ、鍵は大公(現在はアミーリア)が隠し持ち、とどめは絡繰りの扉だ。
キアラが尋ねると、アミーリアは憤怒の表情を浮かべた。背中にいても爆発しそうな怒りのオーラにあてられ、キアラは体が震えた。
「あいつらが売ったのよ……! 今度きたら、絶対つきとめてやる……」
「あいつらって? 誰に? 何が?」
アミーリアはキアラの質問にはもう一切答えず、ずっと何かを考えるように黙ったまま、“蝕の間”を後にした。