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ハチノコ  作者: 南せつな
2/8

ハチⅡ

「あ、はるちゃん。おはよう」


 大学に着いた聖奈は友達を見つけて挨拶をした。学校自体は何も変わっていないことに安心した。しかしなぜか、見慣れているはずの友達がまるで別人のように思えた。見た目におかしなところはない。なのにどうにも知らない人に見えてしまうのだ。


「おはよう、聖奈ちゃん」


 聖奈は友達にあの城のことを聞くつもりでいたが、今は聞くべきではないと直感的に思った。私たちは講義の教室に一緒に向かった。すると聖奈は、ある異変に気づいた。


(あれ、人が少ない)


 聖奈はすぐにその違和感の正体が分かった。いつものこの時間の講義では100人近くの学生がいる。しかし今日は60人ほどしかいない。さらに女子の割合が明らかに減っていた。


(やっぱり昨日からずっとおかしい)


 まるで一人だけ全く違う世界に飛ばされてしまったみたいだ。それとも自分がおかしくなってしまったのか。


「それでは定刻になりましたので講義を始めます。今回は薔薇についてです」


(薔薇?)


 講義の内容が全く別のものに変わっていた。聖奈がこの時間に履修していたのは社会学のはずであるが、いつの間にか植物に関しての授業になっている。


「ねえ、はるちゃん。先週ってどんな内容だっけ?」


 聖奈はそれとなく、はるに聞いた。


「えー真面目に受けてたのに忘れたの?この前はラベンダーと梅だよ。ほら、ノートに書いてあるでしょ」


 はるがそう言ってノートを見せてくれた。きれいにまとめられていたそこには紫色のラベンダーと梅の木の写真が張り付けられていた。それぞれの写真の横にはメモがびっしりと書かれている。


(ありえない。授業の内容もだけど、はるちゃんがノートをこんなにしっかりとっているなんて。私の知っている、はるちゃんじゃない)


 聖奈が知っているはるは普段から講義を聞かず寝ていたり、スマホを触っていたりとお世辞にも真面目と言えるような性格ではなかった。それなのに今は隣でじっと、前にある大きなモニターを見ている。


(ほんっとにどうなってるの!?)


 聖奈は内容を何一つ理解できないまま講義を終えた。今の状況を理解するのに必死で、真面目に授業など受けられるはずがない。ただ、その時間で頭の中を整理しノートをちぎって紙にまとめてみた。



 ➀街には花が異常に増えていたこと。その影響なのか講義の内容も植物に変わっていること。

 ②人の数が少なくなっていること。特に女性が圧倒的に少ない。

 ③街の中心に大きな城が建っていること。



 城に関しては何一つ情報がない。それにお母さんからの連絡もない。どの謎もあの城に行ってみれば何か分かるかもしれない。聖奈はそう考えたがあの城に一人で行っていいものなのか、と不安になった。とりあえず、その紙切れを隣に座るはるにばれないようにポケットに入れる。


「聖奈は配属ないんだよね。それに男子だっていつも呑気でいいよね~。私は第二王宮配属だからいつも大忙しだよ。ま、女王様に仕えてるんだし仕方ないんだけどさ」


 はるは聖奈に自慢するように鼻を高くして言った。


「う、うん…そうだね」


(配属ってなに?第二王宮ってなんのこと?女王様ってだれ?)


 またもや謎が生まれ、聖奈は自分が見下されていることに気が付かない。歯切れの悪い返しをするのに精一杯だ。はるは次の教室に移動しようと聖奈を誘ったがトイレに行くと言って一度、一人になった。


(なんか気分悪い、とりあえずうまくごまかさないと)


 聖奈は病み上がりも相まって、いきなり訳の分からない世界に頭がパンクしそうだった。トイレを出た後自分に渇を入れ、次の教室へと向かった。

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