第二小節:雨と出逢い
小雨が降りだしていた
すでに息は切れ切れで
もう大丈夫だと思っていても足が止まらなかった。
わけのわからない恐怖が体を動かした。
女の子を横切るとき見てしまった
あれは
私だった
わけがわからない。
どうして…
―同じ自問を繰り返しながら走り続けた。
*****
どれくらい走ったか
どの道を選んできたかも覚えていない。
気付けばそこは人気のない路地だった。
「もう…走れない」
こんなに走ったの初めてだ。
一度その場にうずくまると体が言うことを聞かなくなったように動けなくなった。
仕方なく しばらくそこで休むことにした。
秋も中頃で もう日が落ちるのが早い。
ただでさえ曇りで薄暗かったのに
心音がおさまるころには辺りは真っ暗になっていた。
冷たい風が止んだのをきっかけに立ち上がり
意味もなく辺りを見回した
「…!」
…誰かがこっちを見ている。
治まったばっかりの心臓がまた張り裂けそうになった。
心を落ち着ける間もないまま
もう一度ゆっくりと振り返ると
……大人?
そこには男性が立っていた
40歳くらいのおじさん
細身で長身
髪はぼさぼさで無精髭を生やしている
見るからに怪しい。
けど さっきの今だったから
どちらかと言うと人に会えたことに安心した。
男性は不審がる様子でこちらを見ている。
こんな人気のない場所でうずくまっていたのだから当然と言えば当然だ。
「あ、大丈夫です」
私が先に声をかけようとすると
男性はびっくりしたような表情を浮かべ
「……!
君は……そうか」
「…??」
何が何だか分からなかった
頭の上に「?」を浮かべまくっている私を見て
おじさんは続けた
「…そうだな。
突然のことでびっくりしただろう
ついて来るといい、何があったか教えてあげよう」
「え……?…ええ?」
まるで事を知ったような口調で
それだけを言い残しておじさんはその場を離れていく。
普段ならついて行くはずもないんだけど
私はおじさんの言葉が気になってついて行くことにした。
何より今は 1人になることの方が怖かった。




