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自像葬  作者: 漆々
1/5

第一小節:ドッペルゲンガー

 

そこは昔よく遊んでいた

だだっ広い空き地だった



現在は、以前行われた工事の為

そこらに鉄パイプが散乱している


数年前 町はずれに唯一あった小さな図書館の代わりが

この空き地に建設される話だったらしいけど、

ここ何年もこの状態で一向に工事が進んでいるとは思えない。

というか工事してる姿を見たことがない



最近は気がつくとここへ来ている


工事現場の奥はまだ工事も及ばず

鉄パイプで空が覆われていない。

この小さなスペースが私のお気に入りだった


適当な岩に腰を掛けて

ここからぼーっと空を眺めるのが

小さい頃からの贅沢。



「本日は生憎の曇りですが…」



晴れの日に雲の流れを見るのは好きだけど

ぎゅうぎゅうに敷き詰められた雲を見つめる趣味はない。


「…雨降りそうだし帰るかな。濡れたくないし。」


そう呟いて立ち上がったときだった




カタン…ッ





「?」



物音に気付いて 振り返ると




人……?



コートに身を包み、頭からフードをかぶった小柄な人が立っていた


小柄と言っても私と同じくらいの身の丈で

フードから髪が垂れている…女の子かな。

まだ雨も降っていないのに頭からフードを深々とかぶっているのはさすがに不気味に感じたが

それ以前に 自分以外の人間がこんな所にいることだけで十分不気味だった



私に気付いているのか、いないのか。

こっちへ向かって歩いて来る

そしてその女の子を見つめる中、ふと感じた違和感



見覚えのあるコート……靴も



そしてその違和感は

じりじりと近付いてくるそれに同調するように

徐々に確かな恐怖へとすり替わっていった



(どうしよう…

逃げた方がいいのかも知れないけど)


外へ逃げるにはあの女の子を横切らなければいけない

ジリジリと近づいてくる女の子の

右手は何かを隠し持っているようだった


そして頭が直感的に危険だと判断したときには

もうあれこれ考える余裕もなくなるほど近くにきていた



そして、あと一歩で私に飛びかかれるだろうという距離まで相手が詰め寄った


まさにそのとき




「………!?」


一瞬何が起こったのか分からなかった



雷が大きな音と共に光り

辺りが一瞬 真っ白になった



と同時に


私は女の子を横切り

全力で出口に向かって走っていた



感じたことのない恐怖に追われながら

角を曲がる瞬間 後ろを振り返ったが



女の子は追いかけて来るわけでもなく


ただその場に立ち止まって こっちを見ていた

 

 

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