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王国戦国物語  作者: 遠野時松
とある王国のエピソード
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兵の道 4 猛者

挿絵(By みてみん)

「考えてもみろ、誰一人として命を落とすものがいなかっただろ?相手が欲しているのは風との純粋なる力比べだ。何をどう考えたらそうなるのか俺には分からんが、勘違いをした世間知らずの破落戸どもに、世の中の仕組みを教えてやる良い機会だと思わないか?」

 言いたいことは分かる。しかし、このような状況でどう返事をしていいものかと、リュートは困惑する。

 武の印象が強い護衛業だが、風の中にも得て不得手が存在する。大きな商隊ならば役割毎に己の才を発揮する場も多くあるが、武に秀でていなければ単独での風は行えない。

「どうした?そんな及び腰でどうする。お前もそれなりに武に自信があるのだろう。それならその腕を試したいと思ったことはないのか?」

 不敵に笑うウルク。

 歯に衣着せぬ物言いに、ソルダは先ほど同様に苦笑いを浮かべる。

 ビークのように隊を率いる能力を持ちながら、己の性分から平常時には単独で荷を運ぶ者もいる。そして、ウルクがそうとは言わないが、そんなひとり者には特殊な者がちらほらといる。特に年を重ねた者に多い気がする。

 何か言わぬかと、ウルクはリュートに目で語りかける。

 ここで、見兼ねたシャルルイが話に加わる。

「ウルク殿、お気持ちは分かるがそれに関しては後程の方がよろしいのでは?」

 リュートに近付き肩をぽんと叩く。

「はて、後ほどとは?」

 ウルクはシャルルイに目を向ける。「他に手を挙げた者もいたのに、シャルルイ様が参加することを条件にあげ、誰を推挙されましたか?これ程までに経験を積める良い機会など他にはない。それを見越してその者を推薦したのではないのかな?」

 見た目通りの曲者。

 ウルクは愚者、賢者どちらにもとれる話し方を敢えてしている。ように思える。

「このようなことはそう呼ばれることもあります。しかし、被害にあわれたヴェレー家の前でそのように申されるのは、いかがなものかと思いましてな」

「そうであった」

 ウルクは、手の平に拳を落とす。「俺としたことがとんだ失礼を。怪我をした者におかれましては早期の復帰を願っており、ヴェレー家を貶すつもりは毛頭ござらん。お許しいただきたい」

 そう言うと両の太腿に手を置き、ソルダとビークに頭を下げる。

「我等にとって賊による災いは切っても切り離せないもの。お気になされるな」

 ソルダは決まり文句のように答える。

「災いとはいえ今回は天の意思ではなく、どこかの阿呆が起こした人災。しかも十人余りで奇襲を仕掛けてきたというではないですか。更に腹立たしいのが、このことを吹いてまわって馬鹿どもを集めることに使っている。腹に据えかねています」

「我がヴェレー家のためにそこまで思っていただき、例を言いますぞ」

 再びソルダは決まり文句のように答える。

 先ほどのシャルルイの一言によりこの場の雰囲気が変わった。

 そのシャルルイは右の口角を少し持ち上げる。

「安心せい。雰囲気が悪くなったのではない」

 リュートにだけ届く声量で、シャルルイは呟く。「皆、家だ何だと申しておるが、そんなものに拘ってはおらん。お主の前で恥ずかしい態度をとるなと忠告しただけだ」

 ソルダ殿の決まり文句のような響きの意味が分かった。普段ならこういったやり取りがあるのだろう。いや、俺が到着する前に済んでしまったのかも知れない。

「顔に泥を塗られた家の者ならば躍起にもなるが、助太刀をする身としては余興の一つだからあのような態度にもなる。そのように振る舞っても、両者の間で悪いという認識も少ない」

 シャルルイの声が再び聞こえる。

 持ちつ持たれつの関係というか何というか、色々と複雑な利害関係が働いているようだが現場の人間は至って簡単に考えているようだ。

「それではホロイ家が到着したので、ここで確認をとらせていただく。今回の賊は三人しか手足れがいないと聞く、ヴェレー家以外は私が相手するでいいかな?」

 シャルレイは無言で頷く。肩を揺すられたリュートは同じように頷く。

「ありがたき」

 ウルクは左胸に右拳を付ける。

「ヴェレー家も世の習い通りに、寡兵により賊を討つ。大軍を率いて無慈悲に賊を鎮圧するのではない。そんな事をすれば賊と一緒だからな」

 ビークは武を教えるようにリュートに語りかける。

「だから肩の力を抜けと言っておるだろうが、シャルルイ様の手が不自然に上がっているぞ。そんなのでは、いつも通りに木剣を振るえぬぞ」

 ウルクは笑う。

「状況にもよるが、習わし通り基本的に木剣で賊を制圧する。軍が恐ろしくて大それたことができぬ、多勢に無勢で風を襲う雑魚などと考えるでないぞ。荷運び中に命を落とすほどの危険は数多くあるが、これで命を落としたら目も当てられん。笑い者として名を刻むことになるから、気を付けられよ」

 ソルダは、人差し指をリュートに向けて微笑む。

 皆、雰囲気は鬼ほど恐ろしいが、根は優しいらしい。

 マシマシの村で以前に手伝いをした風は、皮袋を自ら投げ撃ち抜くというのを二袋やったらしい。それに俺は一袋だが挑戦した。シャルルイ様は自らの弓と潜伏技術を俺に見せつけた。

 不安は拭えないが、それと何ら変わらないのではないか。とすら思えた。

「それでは私はどのような役目を請け負うのでしょうか?」

「まだ決まっておらん。これから決める」

 ソルダは思い出したように腕を組んだ。

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