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王国戦国物語  作者: 遠野時松
とある王国のエピソード
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武の道 3 肉

 日が沈んだ頃に船への積み込みが終わり、フビットと街を探索した。

 アンカレ港同様に港街だが、都市となっているので規模が違う。嵐の影響が少ないのか建物も高い。ベイナイ家で土をやってた時にマルセールへはきたことがあるが、街に足を運んだのはこれが初めてだ。

 頻繁に乗っていた半島の西側と湾内を結ぶ荷船は、荷を積み込んだら直ぐに出港する。速度より安定性に重点を置いている船なので、多少海が荒れていても航海できる。風と波さえ良ければ船の上が休憩場所だ。

 どこもこんな感じで、ホロイ家の船も次からは荷を積み込み次第出港となる。港で腹を満たし、船の上で一夜を明かせば暖流がアンカレ港まで運んでくれる。

 金など持っていないが、街には金があったら欲しいなというものがいくつかあった。良いものが沢山あるから、家族がいるならお土産を買っていこうと思うだろう。

 金など持っていないなりにこれだけは食べたいと思っているものがあって、それだけは食べた。あれは美味かった。

 隣国から取り寄せた質の良いハオス牛にカルマドの塩をかけただけの串だが、塩とは美味いものなのだなと思った。

 漁村に住んでいる者なら分かってもらえると思うが、主なタンパク源は魚だ。干し肉では味わえない肉汁が、体全体に染み渡る。体が肉を欲していたのが分かる。

 あれは何度でも食べたい。

 朝飯を食べたが腹が減ってきた。

 俺は今、教わった灯台への道を街から離れるように岬の先へと歩いている。

 フビットはというと、昨日行った店の中にどうしても忘れられないものがあったらしく、それをもう一度見るために街に向かった。手持ちがなければホロイ家が用立ててくれるし、給金から差し引いてくれたりもする。

 取引先に一円でも多く金を落とすところも家の格の一つとしてみられため、今日に限ってはこの辺りはだいぶ緩い。賭け事は禁止されているので借金を抱えるものはいないが、給金のほとんどを使ってしまう者もいる。良い品が他よりも安く買えるし、期間中は食の心配がないので財を貯えるのには良い方法かもしれない。

 飯の時間を減らして買い付けをし、戻ってから売れば小遣い以上に稼げる。大きい荷はアスキ家が格安で運んでくれる。

 財の築き方は人それぞれだが、俺は俺の道を行く。

 広場の近くに、飾り気のない無骨な建物が並んでいるのが見える。さらに奥へと進むと、港と隣接するように海軍の基地がある。

 先ほどの建物で見えないようになっていた理由が分かる。街の雰囲気にそぐわない物々しい塀が、異様さを引き立てている。

 衛兵に身分を示す鯱の紋と書状を見せ、中に入れてもらう。土の影響か教えを乞うために門を叩く者にこの国は優しい。

 もちろん重要な施設なので誰でも入れる訳がない。使えるものは使わせてもらう。

 家の恥にならなければ、どんなことに使っても許される。むしろ進んで紋を使えとさえ言われる。そこで評価を得れば、家の評価につながり喜ばれる。

 無論、評価を得れば、の話だ。実力が見合わなければその先は無い。

 衛兵より、この時間はガフォレ隊が訓練をしていると伺った。先ずはガフォレ様の元へ挨拶に伺う。

「体はどうだ?」

 簡単な挨拶を済ませた後に、ガフォレは尋ねた。

「温めてきています」

「よし」

 兵達の輪に加われと、手で合図をする。

 木剣を使用した基本的な訓練を終えると、ガフォレはリュートを呼び寄せた。

「大体のことは分かった。次はそれを使うところを見せてくれ」

 ホロイ家の長剣を模した木剣を使えと指示をする。

「まどろっこしいことは嫌いだろ?」

 相対する兵の手にも木剣が握られている。

 同じ長剣だが反りはなく真っ直ぐで、両方に刃の部分がもうけられている。先端は弧を描いて細くなっている。

 先ずは、身をもって感じろとのことだ。

「リュートです。お願いします」

 リュートが木剣を上段に構えると、兵は弓を引くように構えた。

「緊張せずに、ぶつかっていけばよい」

 さっさと仕掛けろと、尻を叩くようにガフォレは声を掛ける。

 賊との争いでは先手必勝だ。被害を最小に抑え、最短で事を済ませる必要がある。わざわざ自分の武器を丁寧に説明してくるような、気の毒な賊などいない。初見の武器に対してどう戦うかも、訓練の一つだ。

 俺は半身だけ身を進める。相手には動く素振りはない。

 ありがたい。

 構え通りに突きが主であるなら、とっくに届く距離である。こちらの仕掛けを待ってくれている。それと共に、待てるほどの武に対し身が引き締まる。

 意を決して、相手の木剣の動きを抑えるように袈裟斬りを仕掛ける。

 相手はそれを木剣の腹でいなすと、剣先を弧のように描いて前に出ている俺の左足を狙ってくる。それを払い落としたと同時に相手の剣が引かれる。次を払い上げることは叶わず、首の横に痛みを残して相手の木剣は俺の横を通っていった。

 剣の特徴以前の話で、武そのものの腕が違う。

「ありがとうございました」

「まあ、こんな感じだ」

 ガフォレは答える。「それでは見せてやってくれ」

 兵は頷くと型を始めた。突きが主体の、踊っているような型だった。

「この港に入ってくる船は大型船が多い。相手の船に乗って制圧するより、乗り込んでくる賊を相手にすることが多い。乗り込まれる前に先ずは突き、そして船から落とす。甲板上は強い突きを打てるぐらいに足場はいいとなると」説明の途中でガフォレは用意していた長剣を手に取る。「これになる」

 兵は型を終わらせ、再びリュートと相対する。

「コイツはエイスローといってコヌセール出身だ。マルセールを使わせたら隊で一番上手い」

 ガフォレは長剣の柄を振って、何度か鞘を手に打ちつける。

 エイスローは何も言わずに先ほどの構えをする。

「では、続けようか。まずは先ほど同様にお主から袈裟斬りから行うといい」

「エイスロー殿、お願いします」

 リュートは木剣を強く握る。

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