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王国戦国物語  作者: 遠野時松
とある王国のエピソード
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世の流れ 4 面倒事

 それは、麓の街に着く前に起きた。

 民家が出てきたので、大きな括りとしての街には入ったのだろう。山の裾野を下りた所にある穀物の倉庫を過ぎたところで、遠くから賊の声が聞こえてくた。

 追いかける人の声も聞こえたので、すでに対応済みなのは分かったが数が多い方が有利だ。鎧は無いが剣は所持しているため、ルシータをキタシフの護衛につけて先に下らせ、ルコロフとファトストはフォレスター家と共に倉庫に向かって道を登る。

 助太刀の姿を確認すると、賊は食べ物を抱えて逃げていった。




「ありがとうございます」

 フォレスター家のフォニフが胸に拳を当てて、挨拶をする。

 聞けば、この辺りの倉庫はフォレスター家のものが多いらしい。最近増え始めた賊に対応する為、フォレスター家が代表してこの辺を守っているとのことだ。

 街は専属の自衛兵を雇っていて、それに合わせてフォレスター家は、独自に警護を行っているみたいだ。

「途中から新たな賊が現れました。初めから倉庫の食料が狙いだったのでしょう」

 フォニフは額の汗を拭う。「こちらには目もくれず、散らばって倉庫だけを狙われてしまっては、どうすることもできませんでした」

「何よりご無事で良かった」

 馬車を安全な所に置いてから戻って来たキタシフが、馬から降りて応える。

「この後に危険が及んでいたかもしません。重ねて感謝します」

「お気になさらずに」

 二人が握手を交わすと同時に、遠くから馬が走る音が聞こえてくる。皆が身構える前に「ホロイ家です!」との声が聞こえる。

「この辺でホロイ家の名を告げてもあまり意味がない。途中で伝達人とすれ違ったのかもしれませんね」

 キタシフの言葉に皆は一旦、警戒を緩める。

「賊が現れたと聞きました」

 掛け声とともに軽い鎧に身を包んだ男を先頭にして、十人前後が馬に乗って現れる。




「行くなら騎馬と一緒にした方がいいですよ」

 ファトストは同じことを口にする。一人の男がファトストに目を向ける。

「いつもあっちに逃げていくんですよね?」

 ファトストが指差す方を見ながら、フォニフは「そうだ」と頷く。

「荷を奪った賊はそっちに逃げて、別の賊は反対に逃げて行った。その先は賊出没注意となっていたはずでした、違いますか?」

 ホロイ家がこれから通る道には印だけでなく、盗賊についての但し書きが、どの地図にも書かれている。

「日に日に、街を襲われる頻度が酷くなっているというに、今回は食料が目当て。賊が増えたというよりは、どこかに籠るために必要だったのではないでしょうか。人や家を襲い慣れたさっきの賊たちが、次の行動に移していてもおかしくないと思いませんか?」

 倉庫の襲い方で手際の良さが分かる。

「騎馬がいたら諦めるかもしれないですが、いなかったら狙ってきそうですけどね」

 街に運び込まれた荷は、塩の高級品らしい。その為、騎馬の護衛まで付いている。品は幌で覆っているために外からは見えないが、馬車の飾りは豪華に違いない。

 エルドレに住んでいれば、中の品が何なのか見なくても分かる。高いやつだ。賊としたら、奪ってから売り捌けばしばらくは楽ができる。

「一つでも奪えばいいんです。うまくいかなくて当たり前という気持ちで仕掛けられてくる、相手の賭けにわざわざ付き合う必要はないと思います」

 誰も意見を言わない。

「慌てていて逃げ道を間違えたとしたら、戻ってきた賊と出会わない保証はありません。馬に乗っていたのでわざわざ山は越えないでしょう。確実にこの先には賊がいるんです。騎馬と共に進みましょう」

 相手は怪我の一つを負ったとしても、塩を手に入れれば勝ちだ。こちらは何ひとつ負けられない。そんなのは勝負じゃない。

「それは分かった」

 ファトストに目を向けていた男が口を開く。「それではこう尋ねたらどう答える? この先は街と街が離れている、道も悪いから盗賊も出やすい。それが分かっているから賊を始末したい。守るのは荷じゃない、人だ。できるか?」

「こちらの動きは、賊に筒抜けでしょう。どこかで必ず見ています」

 ファトストは直ぐに答える。「話によれば、賊の拠点はだいたい絞れているとのこと。少しだけ騎馬を残してこの街を守らせ、残りはエジート様自ら率いて賊を討ちに出て欲しいですね。荷は先を急ぐように、道を進ませます」

「多少の違いはあるが、予定通りに進めろというのだな」

 エジートはファトストと目を合わせる。

「はい。賊の頭は、外に出るのを好むようです。賊もその先に逃げたし、拠点にはまずいないでしょう。頭はこの先にいます」

「だろうな」

「賊としても拠点を壊されても問題ありません、次に移せばいいんですから。今頃、新しいところを探しているかもしれません」

「それで?」

 エジートは首を振って次を促す。

「策は単純です。荷馬車の中に人を潜めて道を進ませます。あとは賊が出てきたら迎え撃つだけです」

「騎馬がいるいないで、襲う襲わないを決める奴らなんだろ? ああ。それについてはまだいいか、次を聞こう」

 気にするなと、エジートは手を振る。

「騎馬は荷から離れ、力のありそうな者は倉庫の修理を手伝うために残る。賊はその姿を見たらどうでしょうか。それに、体の大きさなどいくらでも隠せます」

 エジートはまだ、首を縦に振らない。

「その荷を率いるのが、弱そうな男だったとしたらどうでしょう。考えを出した責任として、喜んで囮役を務めます」

「そこまではしなくて良い」

 エジートは首を横に振る。

「賊が襲ってきたら、ただ防げば良いだけです。危険ではありません。そうやって防いでいる間に、フォニフ様が賊の頭を捕らえれば良いのです。狙いは塩です。風から奪ったとなれば名が上がります。賊の頭は必ずどこかにいます。諦めて引くにせよ、動きがあれば頭の後は追えます」

 エジートは何も応えようとしない。

「風と賊の仲が悪いことは知っています。奴らは常に、一泡吹かせてやろうと考えているのですよね?」

 エジートは、ぴくりと眉毛を動かす。

「寡兵で敵を撃退するのがお好きだとか」

 エジートは少しだけ体を起こして腕を組む。

「幌の中に人を隠せますし、いきなり騎馬が現れたらどう思うでしょうかね?」

 エジートは問うような目で、フォニフに視線を移す。

「これだけやって捕まらない奴等です。普通のことをしても捕まえられません。長が私ほど若ければ、代理なのは見え見えです。どうでしょう。楽しくはないですか?」

「そこに頭がいたら私が、賊の拠点にいた時はエジート殿が。お願いします」

 フォニフはエジートに告げる。

「さて、いきましょう」

 ファトストは支度を始める。

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