04 まひろ登場!
私は急いで教室に向かった。そして勢いよく扉を開ける。
「すみません! 遅くなりました!」
しかし応答はなかった。教室には誰もいなかったからだ。
「あれ? 今日って休みじゃなかったよね」
私が教室に入って黒板を見ると、移動教室と書かれていた。
「あ、そっか。1時間目は移動教室だった。だから皆いなかったのね」
私は安心して席に着いた。時間を見ると、もうすぐ皆が戻ってくる時間だ。ふー。なんとかやり過ごせそうだ。
「ちょっといいでしょうか?」
いきなり声をかけられて、私はびくっとする。
扉の方を見ると、ボブカットの女の子が立っていた。そして、私の所に歩いてきて目の前で止まる。
「な、なんでしょうか」
「さっき裏庭であなたを見かけたんですけど、しゃべる猫と一緒じゃなかったですか?」
そう言われて私はドキッとする。しまった、見られてた!
「な、なんのことでしょう……」
私は必死にごまかしたが、多分私の顔はひきつっていただろう。目の前の子は、じっと私を見つめていた。
「まぁ、いいでしょう。また後で聞く事になるのでよろしくお願いします」
「はい?!」
私は驚いていたが、その子は軽い足取りで出ていった。
「な、なんだったのよ……というか、後でって何?」
私がうなだれていると、クラスの皆が移動教室から戻ってきた。
「あれ? かなた、いつからそこにいたの? 朝、いたっけ」
「あー……実はさっき来たの。先生には言わないでね」
「はいはい」
それから私は授業を受けた。友達が言わないでいてくれたのか、遅刻したことは触れられなかった。
授業中、何気なく窓の外を見ると、アルがスタスタと歩いていた。
「おや、かなた。感心だね、ちゃんと授業を受けているなんて」
私は驚いて大きな音を立ててしまった。皆がこちらを見てくる。そりゃそうだよね。
「姫野、どうかしたのか?」
先生がぶっきらぼうに聞いてきたので、私はとっさにお腹を押さえた。
「ち、ちょっとお腹が痛いので、保健室に行ってきます!」
「あ、あぁ。大丈夫か?」
「はい! それじゃぁ、失礼します」
そう言って、私はゆっくりと教室を後にした。少しして、辺りを気にしながら外に出た。
「アル、どこにいるの?」
「やぁ、かなた。まだ授業中だろ? ここにいていいのかい?」
アルは茂みから出てきた。私はため息をつく。
「あなたがいきなり現れるからでしょ。裏庭にいたんじゃないの?」
「あぁ、それなら授業で使うみたいなのか、生徒がいっぱい来たよ」
「え? あそこは滅多に使わないはずだけど」
「それは私の指示ですよ」
いきなり声がして、私たちはその声のする方を向いた。そこには、先ほどの女の子がいた。
「あなた、さっきの!」
「あの裏庭に人が行けば、そこにいる猫ちゃんがあなたの所に行くと思ったのです」
私はアルをジロッと睨んだ。しかし、アルはそっぽを向いていた。
「あの、私たちに何か用なの?」
「あぁ、自己紹介がまだでしたね。私は早乙女 まひろと言います。ここの校長の娘です」
「えぇーっ!」
「そんなに驚かなくても、皆さんとあまり変わりませんよ」
いやいや、全然違うでしょ。私がぽかんとしていると、早乙女さんはアルに近づいた。
「猫ちゃん、あなたしゃべれるんでしょ?」
「黙ってても仕方ないね。はじめまして、僕はアル」
アルは観念したのか、普通にしゃべり出した。いや、あっさりとしゃべるんかい!
「ふふ、はじめまして。あなたたちには色々聞きたいことがあるので、学校が終わったらまた裏庭に来て下さい」
「わ、わかりました……」
「かなた、なに緊張してるんだい?」
アル! 余計なことを言うな!
私が内心焦っていると、早乙女さんはにっこり笑った。
「普通にしてていいんですよ? これから長いつきあいになるんですから」
早乙女さんはそう言うと、立ち上がりくるりと方向転換した。
「じゃぁ、また後で」
「は、はい……」
私は棒立ちのまま返事をする。早乙女さんは、手を振りながら校舎の中に入っていった。
「なんだか、おかしな子だね」
「そうだね……一体何を聞かれるのか、それが心配だよ……」
それから私は宣言通り保健室に行ったが、幸い先生はいなくて安心した。
午後の授業には顔を出したよ。さすがに、ずっと保健室はまずいからね。
そして、約束の放課後である。私はアルを連れて裏庭に来た。早乙女さんは先に来ていたらしく、こちらに気づいて手を振った。
「待ってましたよ、かなたさん」
「なんで私の名前……」
「失礼ながら調べさせてもらいました。姫野 かなたさん」
もう名前まで知られているのか。私が警戒していると、早乙女さんが手を握ってきた。
「かなたさん! あなたのあの衣装はなんですか? なぜアルちゃんはしゃべれるのですか?」
「え、えーっと……」
まさかあの衣装を見られていたとは。私は恥ずかしくなり言葉を濁す。
「彼女は魔法少女だよ」
「魔法少女? それは一体なんですか?」
アルー! なにペラペラしゃべってるのよ!
私が青ざめていると、早乙女さんの関心はアルの方に向いた。




