20 さぁ、楽しもう!
「で、なんでバッティングセンター? うわっ!」
私が首を傾げていると、勢いよく球が飛んできた。
「かなたさん、ちゃんとバットを振らないと危ないですよ」
「そんな事言われたってーっ!」
そう、今私たちはバッティングセンターにいます。
「だって、振ったところで当たらないもの……」
私は文句を言いながら皆を見た。皆少なからず当てているので驚いた。
つばさちゃんとあかりさんはともかく、まこちゃんでさえ当てているので、私は内心焦っていた。
「どうしよう……当ててないの私だけ?」
私がうなだれていると、頭の中に声が響いてきた。
「かなた、そっちはどうだい? 楽しめているかい?」
「え、アル?」
なんと声の主はアルだった。これはテレパシーというものか。
「アル、こんな事も出来たんだね」
小さい声で私はアルに話しかけた。
「これはけっこう力を使うから、あまりやりたくないんだよね」
「なら、なんで今使ってるの?」
私は一応不自然にならないように、バットを振り続けた。
「かなたをからかうためさ」
「はぁ?!」
「君は皆の中で1番体力がないからね。今も皆に置いてけぼりをくらっているんじゃないのかい?」
その通りだったので、私はぎくっとする。
「そ、そんな事ないもん!」
「君には無理だね。すぐにあきらめてしまうもの。出来っこないさ」
「なんですってーっ!」
アルの言葉に怒りを覚えた私は、大声とともに勢いよくバットを振った。
すると、それがたまたまなのかボールに当たり、なんとホームランの的に当たってしまった。
「あれ……?」
「すごいです! かなたさん。あんなに文句を言ってたのに」
「すごいわ、姫野さん」
「へぇー。やれば出来るじゃねーか」
「コツとかあるんですか?」
皆に拍手されて私はすごくうれしかった。
「いやー。私1人だけの力じゃないんだけど……」
気づけばアルの言葉は聞こえなくなっていた。もう、終わらせるのも勝手なんだから。
私はまた文句を言いたかったが、それは今度にしよう。
それからホームランの景品をもらって、私たちはバッティングセンターを出ていった。
ちなみに、景品は食事券でした。帰ったらお母さんにあげよう。
「まひろちゃん、次はどこに行くの?」
「次は、体を動かしたのでカフェとかどうでしょう」
「やったー! ご飯だ。もうお腹空いたよ」
「ふふっ。かなたちゃんは食いしん坊ですね」
私たちは近くのカフェに入り、人数が多いのでテラス席を選んだ。
「さーて、何を食べようかな」
「いろいろあるんですね」
「あたしはもう決めた!」
「皆さん決まりましたか? じゃぁ注文しますね」
それから少ししてそれぞれ頼んだのが来た。
私はパンケーキ、あかりさんはガトーショコラ、つばさちゃんはチーズケーキ、まこちゃんはアップルパイ。
「ま、まひろちゃん……それ、全部食べれるの?」
そう、まひろちゃんは巨大なパフェを頼んでいた。
「もちろん、食べれますよ! 私、夢だったんです。友達とカフェに行って、パフェを食べる事」
「そ、そうなんだ……」
私はちらっと残りの3人を見ると、パフェの大きさにちょっと引いていた。
「では、皆さんいただきます!」
「いただきまーす!」
私はホイップクリームとはちみつのかかったパンケーキを頬張った。
「うーん! このもちっとした触感がたまらない!」
「姫野さん、すごくおいしそうに食べるわね」
「いいなー。あたしもそっち選べばよかったなー」
「人の食べてるのがよく見えるって言いますよね」
「なぁ、かなた。少し分けてくれよ?」
「えー。私まだ食べたいよ。ねぇ、まひろちゃん?!」
まひろちゃんを見れば、もう半分食べ終わっていた。
「ふふっ。このフルーツとクリームがマッチしてて、とてもおいしいです!」
「すげー……本当に1人で食べ終わりそうだぜ」
「早乙女さん、一体どんな胃袋をしているの……」
あかりさん、その問いは私も思いました。
あれから皆で談笑して全員食べ終わった。まひろちゃんも完食である。
「ふー、食べ終わったー」
「少し休んでから移動しましょうか。早乙女さん、次の予定は?」
「次は、ショッピングモールに行きましょう!」
あー、やっとショッピングか。でも、私あまりお小遣いないんだよなー。
私がボーッとしていると、皆準備を始めていた。
「さぁ、かなたさんも行きますよ!」
「ま、待ってー! 皆早いよー!」
「あ、待って下さい……」
まこちゃんは慌てて立ち上がったものだから、つまずいてこけそうになった。
「きゃぁっ!」
「まこさん?!」
まこちゃんが勢いよく床に激突しそうだった時、誰かに受け止められた。
「あれ? 痛くない……」
「君は本当に目が離せないね」
まこちゃんが顔を上げると、ササヤキと目が合った。
「さ、ササヤキさん! どうしてここに?」
「た、たまたま近くにいただけだよ」
「本当はずっとつけてたりしてな」
つばさちゃんがそっと私に耳打ちしてきた。それは、ありえるな。
「ありがとうございます、ササヤキさん。もう大丈夫ですから」
ササヤキがずっとまこちゃんを抱きしめていたので、まこちゃんは照れて下を向いた。
すると、あかりさんが2人に近づく。まさか、また言い合いに……
しかし、私たちの予想は外れた。あかりさんがササヤキに頭を下げたのだ。
「池上さんを助けてくれてありがとう。あと、この間は責めたりしてごめんなさい……」
ササヤキとまこちゃんは驚いていた。
「あかりさん……」
「でも、やっぱりあなたを信じる事は難しいの」
「……それでいい。じゃぁ、僕はこれで……」
まこちゃんを離して行こうとするササヤキの腕を、まひろちゃんが強く握りしめた。
皆でわいわいしてます。




