02 私、魔法少女やめます
私たちはまだ路地裏にいた。
「それでアル。私のこの衣装は何? すごく恥ずかしいんだけど」
「それは魔法少女になった証だよ」
「その魔法少女ってなんなの?」
「魔法少女は、マジカルコードによって選ばれた戦士だよ。その力を使って、この世界を支配しようとしているジャークを倒してほしいんだ」
「そんなこと言われても困るよ……」
私が困った顔をすると、アルはきょとんとした顔をして首を傾げた。
「しかし、かなたはマジカルコードに選ばれた。これは事実なんだよ?」
「それが困るの! 私はただこのブレスレットを拾っただけなのに……」
「かなたの言っていることがわからないよ」
「もー……そして、これどうやって戻るの? このままじゃ目立っちゃうよ」
「あぁ、それなら戻れってイメージしたら元に戻れるよ」
早くそれを教えてよ。私はそう思いながらイメージした。すると、元の制服に戻った。ほっ、よかった。
「とりあえず家に帰ろう。ちょっと遅くなっちゃったし、話は帰ってからだよ」
「わかった」
私はアルを抱き上げて路地裏を出た。そして急いで家に向かう。外はもう日が暮れていた。
家に着いたのは、だいぶ日が暮れてからだった。どうしよう、怒られるかな。私は静かにドアを開けた。
「おかえりなさい。帰るのにだいぶ時間がかかったのね」
「う、うん。今日は違う道で帰ったから」
「それなら電話くらいよこしなさい」
「はーい……」
「で、その猫はなんなの?」
「途中で拾ったの。ちゃんとお世話するからうちで飼っちゃだめかな?」
私のお願いに、お母さんは考えこんでいた。アルもお母さんをうるんだ目で見つめていた。
「し、仕方ないわね。ちゃんとお世話するのよ!」
「ありがとう! お母さん」
そして私は夕食を終え、私の部屋に来た。
「でも、よかったよ。危うく追い出されるかと思ったからね」
アルはひょいっと私の腕から逃げ、ベッドの上に乗った。
「アルがしゃべらなくて助かったよ。しゃべってたら追い出されてたね」
「では、さっきの話の続きといこうか」
「あのー……私戦わなきゃだめなの?」
「そうだね。今のところ戦えるのは君だけなんだ」
アルは話を続ける。私は黙ってそれを聞いていた。
「本当は君以外にも魔法少女はいたんだ。でも、ジャークに負けてしまった」
あれ? それってもしかして……
「その人って、赤い髪の女の人じゃない?」
「なんで君がそれを知っているの?!」
「いや、夢で見たってだけだよ?」
ということは、あの相手がジャークということなのだろうか。
「彼女は強かった。だけど負けた」
アルは淡々と話していた。
「だけど君にはそうなってほしくないんだ。だから戦えるように鍛練しよう」
「ちょっと待って! 私まだ戦うとは言ってないよ。それに、私怖い。だって、夢の中の人は強かったんでしょ?」
私は震える体を抱きしめた。
「でも、負けちゃった。ただの中学生の私に何ができるっていうの!」
「だから特訓するんだよ。君が彼女みたいに強くなるために」
「嫌! 私は魔法少女なんてやりたくない!」
私は恐怖のあまり怒鳴ってしまった。アルは無表情だった。
「……わかった。短い間だったけど楽しかったよ。じゃぁね」
アルはそう言うと、開いている窓から出ていった。私は力なく座りこむ。
「だって、怖いものは仕方ないじゃない……」
次の日、私は夢も見ずに目が覚めた。アルはあれ以来戻ってきていない。てっきり、すぐに戻ってきて説得されるかと思ったけど、戻ってくることはなかった。
「なによ……倒してほしいんじゃないの? あっさりあきらめてくれちゃって」
私はぶつぶつ言いながら階段を下りる。リビングに向かうと、アルが普通にご飯を食べていた。
私はズッコケる。それはもう盛大に。そしてすぐにアルのところに向かって小声で話す。
「なんでまだいるのよ」
「一応、ここで暮らすという流れだったからね。ご飯だけでもいただこうかと思っただけだよ」
「何よそれ」
「ちょっとかなた! 起きたんなら挨拶ぐらいしなさい!」
「ご、ごめんお母さん。おはよう」
「おはよう。ほら、さっさと支度しなさい。猫ちゃんはもうご飯食べてるわよ」
「はーい……」
私はアルをジロッと睨みながら洗面所に向かった。
「なによアルの奴。すっかりうちになじんじゃってさ……」
「まぁ、僕もご飯いただいたからもう出ていくよ」
「わぁ! びっくりした。急に現れないでよ」
「猫はそういうものだろ? じゃぁね、かなた。僕はまた新しい魔法少女でも探すよ」
アルはそう言うと、庭におりてそのまま行ってしまった。
「ちょっと待って。新しい魔法少女って、他の子にもあんな危ないことさせるつもり?」
私は恐ろしくなったけど、私には何もできない。そう思って、すぐ顔を洗った。
「本当に私には、何も出来ないの?」
ふと私は鏡を見る。そこには、魔法少女の私がいた。
「本当にこれでいいの?」
魔法少女の私が問いかけてくる。私はぐっと手を握った。
「だって、危ないじゃない……」
「それでもアルは私を必要としてくれた」
それだけ言うと、魔法少女の私は消えて元の私に戻った。
「もう一度アルと話そう。早く探しに行かなきゃ!」
私の心は決まった。そして、急いでリビングへと向かい、朝ごはんを食べて家を出た。
「アル、どこ行っちゃったんだろう……」
「見つけましたよ、魔法少女」
いきなり呼び止められ私は足を止めた。声のする方を向くと、昨日会ったキラメキがいた。




