18 ありがとう
「また逃げられた……」
「でも、まこさんの糸が切れて、こちらが有利になったんですよ」
「あの爆発は、もしかして……」
まこちゃんは辺りを見回すと、遠くの木の陰に人影を見つけた。
その人影はすぐその場を離れようとしたが、まこちゃんは声を出して呼び止める。
「待って、ササヤキさん!」
ササヤキは呼び止められて足を止める。
「え、ササヤキ?」
「なんで彼がここに……」
私たちもまこちゃんを追いかけると、ササヤキがそこにいた。
「さっきは、ありがとう。助けてくれて……」
「……別に助けた訳じゃない。ただ、あいつらが勝つのが嫌だっただけだよ」
「それでも、私たちはそのおかげで助かりました」
ササヤキはこちらに背を向けたままである。しかし、まこちゃんはササヤキに近づく。
「本当にありがとう……」
静かにまこちゃんがササヤキの手を握ると、ササヤキがやっとこちらを向いた。
「僕はもう、ジャーク様の元へは帰れない。僕の居場所なんてないんだ……」
「そんな事……」
「池上さん、彼から離れなさい!」
まこちゃんが振り向くと、あかりさんが剣を構えていた。私たちも驚いていた。
「あ、あかりさん?!」
「そいつは敵よ。すぐに信じちゃダメ!」
「あかりさん、待って下さい! 彼はもう戦ったりしません!」
まこちゃんがササヤキを庇うように前に出た。
「あなたはだまされてるのよ! 早くこちらに来なさい!」
「まこの言う通り、僕は戦ったりしないよ」
「黙りなさい。誰があなたの言う事を信じるの!」
「お願い、彼の話を聞いて!」
ササヤキとまこちゃんの言葉は、あかりさんに届いていなさそうだった。
「あかりさん、落ち着いて。アルからも何か言ってよ」
私の言葉に、アルはトコトコとまこちゃんたちに近づく。
「確かに、ササヤキからは戦意が感じられないね」
アルがそう言うと、あかりさんは少し納得したのか剣をおさめてくれた。
ふー、一時はどうなる事かと思った。私はほっとして、胸をなでおろした。
「僕は、まこに助けられた。その恩を返しただけだよ」
「そうだったんですか」
まこちゃんはササヤキのそばから離れなかった。ササヤキのまこちゃんを見る目はなんだか優しそうだった。
へぇー。あんな顔も出来るんだ。私は2人がとても微笑ましかった。
「では、ササヤキさん。あなたはこれからどうするんですか?」
まひろちゃんが疑問をササヤキに聞いた。ササヤキは少し考えて答えた。
「……ジャーク様から見つからないように、身を隠すよ。僕にはそれしか出来ないから」
「それなら私の所にいたらどうですか?」
まこちゃんがササヤキの手を握る。ササヤキはその手をそっと重ねた。
「ありがとう、まこ……でも、君に迷惑はかけられない」
「迷惑なんて思ってません!」
「もしかして、ササヤキはまこを守りたいのかい?」
アルー! 今いい雰囲気なのに、ちょっかい出しちゃダメだよ!
私が慌てていると、ササヤキが首を縦に振る。
「そうだよ。ジャーク様は裏切り者を許さない。僕といて、まこに危険が及ぶのは嫌だからね」
「なら、彼女たちと一緒に戦って守ればいいだろ?」
「元敵の僕を受け入れてくれるとは思えないけどね」
ササヤキは、ちらっとあかりさんを見た。
「当然でしょ……」
あかりさんは気まずそうに目線を外した。
「そういう事だから、まこ。僕は陰ながら君に協力するよ」
「ササヤキさん……」
そう言うとササヤキは、私たちの前から姿を消した。
「池上さん、一体彼と何があったの?」
「実は昨日、川辺で倒れているササヤキさんを見つけたんです」
「倒れていた? 仲間割れでもしたのかしら」
「ジャークにやられたみたいです。とてもひどい傷でした」
「そうだったの……」
あかりさんはそれだけ言うと、それ以上何も言わなかった。
「じゃ、じゃぁ今日はこれで解散しましょうか」
まひろちゃんが場の空気をよんだのか、手を叩いて知らせた。
「そ、そうだね」
「あたしはもう少しトレーニングしてもいいと思うんだけどな」
つばさちゃん、空気をよんでー!
私は急いでつばさちゃんの口をふさいだ。つばさちゃんは何か言いたそうだったが、我慢してもらおう。
「では、解散です!」
それから私たちは公園を後にした。私は、まこちゃんの事が気になったので声をかけた。
「まこちゃん、待って。途中まで一緒に帰ろう!」
「かなたちゃん! もちろん、いいですよ」
「よかったー。ちょっと気になる事があったから……」
「気になる事?」
「お2人とも、私もご一緒していいでしょうか?」
私がまこちゃんと話していると、まひろちゃんが突然声をかけてきた。
「わわっ! まひろちゃん、どうしたの? 先に帰ったと思ったのに……」
「お2人が遅かったので、ちょっと気になって戻って来たのです」
まひろちゃん、よく気になる事多いな。まぁ、私もなんだけど。
「ねぇ、まこちゃん。昨日ササヤキとどんな事を話したの?」
「どんな事って、普通の会話ですよ?」
「それにしては、ササヤキのまこちゃんを見る目は優しそうだったよ?」
「そ、そうでしょうか……」
なんだろう、まこちゃんの顔が少し赤いような気がする。
「どうしたんだい、まこ。なんだか顔が赤いようだけど」
こらー! アル。なんて空気のよめない猫なんだ。
私が焦っていると、まこちゃんが私たちに振り向いた。
「ねぇ、2人とも。今から私の家に来ませんか?」
「え?」
私たちは驚いて顔を見合わせた。




