第30話「営業中の彼女たちの姿」
その後時刻は9時を過ぎて、最初は奈々と汐花に人気が集まっていたが、女長と言うこともあってなのか、そこから桜を指名するご主人様が4人も続くこととなった。
一部時間帯は待合室で待ってもらう状態にまでなっていて、11時すぎには桜を指名するご主人様が増えていってしまい、その様子を見ていた奈々が小さな声
でこういう。
「やっぱり女長さんと汐花さんはすごいね!あたしは最初に来られたご主人様だけだよ」
奈々の話を聞いて僕は少し不思議そうな表情をしながら奈々に尋ねる。
「奈々ちゃん、ここって完全指名制じゃないのに、どうしてほとんどの人が誰かを指名するんだろう‥」
すると奈々が苦笑いしながら、僕の耳もとで、ささやくような感じて教えてくれる。
「あたしもまだ2年目だから、くわしくは分からないけど、やっぱり人それぞれ好みや、こだわりがあるのかなって思う。あまり大きな声では話せないけどね ‥」
その話を聞いて僕は奈々の耳にささやくような小さな声で返事をする。
「そうなんだね、まぁ、確かに人それぞれ好みとかって違うからね。教えてくれてありがとう。でも奈々ちゃんの接客方法はすごく良いと思うよ。まだ再開してすぐだから気にせずに行こう!」
僕は奈々の耳もとでそう言うと、奈々はスッキリした表情をしながらこう言った。
「将史くんにそう言ってもらえるとすごくうれしいよ。そうだね。まだまだこれからだね、よし、かんばっていくぞ!」
そう言ってから奈々は気合いを入れていってから、その後頑張っていった。
そして気づけば僕は、従業員室で仕事をしたり、従業員のの様子を店内でみたりしているうちに、16時55分と夕方になっていた。
午後からの出勤者である香さん、小春さん、彩さんの3人が出勤していて、僕は店の外の入り口にある看板の従業員の名札を変更していく。
「メイドカフェさくら」では午前と午後で出勤される従業員が異なり、それを来られるお客様が、好みの従業員がいるかどうかがすぐ分かるように従業員の名札を提示している。
この仕事もメイド長の仕事となっているため、この変更を忘れた場合は、メイド長の責任と言うことになってしまうのである。
いよいよ午後(夜)の部まで2分前となる16時58分に彩さんが曇った表情をしながら僕にこう言ってくれる。
「ま、将史くん、こんにちは。し、しんどくないですか?」
僕は彩の暗い表情の方がどうしても気になってしまい彩の肩を優しく撫でながら笑顔で返事をする。
「彩ちゃん、こんにちは。大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。ここまでは朝から働いてくれている桜さん・汐花さんと奈々さんが、すごくがんばっていてお客様もたくさん来ているから大丈夫。今からは彩ちゃんが勤務をする時間になるけど、緊張せずにしてくれて良いから。僕は引き続き店内にいるから安心して!」
すると彩ちゃんが、少しだけニコッとしながら現場に移動していく。
「そ、そうなんだね。そう言ってくれて、ありがとう。将史くんがまだいてくれるなら、な、なんとかなるかも。そ、それじゃ行ってきます!」
ちょうど時刻は17時になり、仕事時間となった、桜と汐花と奈々の3人が従業員室にやってきて、汐花がなぜか僕の目の前でメイド服を脱ぎながら、肌着姿を密かに見せながらつぶやく。
「やっと終わった。久々の勤務はやっぱ、疲れる。しかも昼過ぎてからなんて身体中の一部が、かゆくなってきてしまってほんま困ったで。ああ、しんどかった。みんなおつかれ様!」
僕は特に大丈夫なものの、久々の仕事がすごく大変だったり、すごく忙しく他の従業員は感じたのである。
とはいえ営業再開当日の初日のメイドカフェさくらは大盛況であったため、メイド長である僕はひと安心したのであった。




