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翌朝 6時、ゆっくりと出勤してきた木下はいつもの自販機でいつものコーヒーを買おうとしが売り切れであった。そのためか少しイライラしながら、捜査一課の本部を顔を出した。
木下が一課の本部に入ると、すぐに松本が左手を上げて、木下を呼びつけた。
「おお、木下来たか」
木下は話すのはタイムカードを押してからと言いたげにタイムカードにきっちりと打刻してから、眠そうに欠伸をして挨拶をした
「先輩おはようございます」
「おはよう、今日は俺の知り合いの捜査官5人連れて行く、そいつらには周囲に張り込んだもらう、俺たちは木田悠馬の自宅へ押しかける役目だ」
朝からテンションが若干高い松本のテーブルを見るとエナドレが2本空いていた。
「まさか、今日、家に帰ってないとか言いませんよね」
「これ? これ昨日の、お前がそそくさと帰るから昨日0時過ぎまで俺は1人でパソコンと睨み合ってな、そこにいるだろ」
「何がですか」
松本はそこにいるだろと言いながら指を指した先には何も居ない。あるのは灰色のカーペットのみである。
「アキラちゃんだ、帰ったのか」
誰がですか? とは木下は聞けなかった。
「松本! 木下もこっち来い」
木下が立ち尽くしていると天からの声が聞こえた。
声をかけてきたのは松本の同期で木下の第二の先輩のような小笠原零士であった。本人曰く父親が銀河鉄道999が好きだっただが零士と名付けたようだ、なら鉄朗でもメーテルでもいいような気がするが誰もそのことは口にしない。
彼の見た目は松本と同年代言われたら絶対に反応できないほどに若い男である。そのせいで、今も渋谷や六本木、竹下通りに行くとスカウトされる、と、この間酒の席で愚痴っていた。
「零士さん? 零士さんも巻き込まれたんですか?」
「あぁそうだよ、昨日の夜にあいつから電話来て明日6時30分に来いって言われてさ、これから俺、有給だって言うのさ」
ハワイがーホノルルがーマイアミがーとぐだぐだ言っていた。木下はマイアミって違いませんかと思ったが口にはしなかった。
「ご愁傷様です」
「謝るな、謝るならお前の有給分けてくれ」
「仲良さそうだな」
「被害者の会ですよ」
6.5
『報酬30万は明日西大江駅で渡す。それと今日の撮影は、警察に捕まる場面を撮る。警察官を名乗る役者がお前の家を訪ねる。階段を降りたところでカットが入る。演技しようとしなくて大丈夫だ』
8
小笠原に呼ばれた2人は捜査一課の本部の隣の部屋に来ていた。そこに設置されたホワイトボードには木田悠馬の写真と殺された木田健人の顔写真が貼られ、木田悠馬の写真の脇には『闇バイト?』と赤文字で書かれている。
「松本、本当に闇バイトで親殺しか?」
「線としては間違ってないと思う、だが木田悠馬が、闇バイトで木田健人を殺せと指示されているわけではないと思う」
そこまで言うと一度言葉を切った松本は「仮にそうなら気づくだろバカでも、自分の親と名前が一緒なんだから」と付け加えた。
「例えば、綿密な計画の元、その時間にそこを歩く、男をこの棒で殴れと指示を受けたとかか?」
松本の話を聞いた小笠原は自分の考えを口に出すが、そんなとこがあり得るのか? と言った様子である。
「じゃないと人を殺す闇バイトに乗っかる馬鹿がいるとは思えない、あとは映画の撮影で周囲のカメラを気にしないように、カメラマンはいないがカメラだけは置いてあるとか言って騙したり、精密な人形とか言って、無理があるか」
松本は思いついて手口を口に出しながら、考えを深める。
「映画の撮影か、ありえそうだな。もしかしたら、今も木田悠馬は自分の父親を殺したとは思ってない可能性もあるかもしれないな」
「人と人形なんて相当違いますよ」
木下はどちらも経験がある風に言うが木下にはそんな経験はない。
「お前にわかるか? 人を殴ったときの感触が」
「わかりませんね」
松本はそうだと思ったと言ってまた話し出す。
「だろ、ついでに言うと金持ちの家には、自立型アンドロイドを持ってる奴もいる、自立型アンドロイドは生身の人間とほぼ同じ体の構造をしている。凄いのことにちゃんと妊娠するって話だ、まぁお腹が膨れるだけみたいだかな、」
「何それ」
「金持ちの趣味だろ」
「金持ちっていうなら俺らにはわからない夢と魔法の天国を生きてるんだよ」
小笠原はキメ顔で割り込んでくると松本が大きく息を吸い込み笑い出す。
「だな、ハイな世界なんだろうな。」
「さて、どうする?」
「もう行く、お前たちは周囲を固めて、俺と木下がピンポン〜ってやる」
小笠原は了解と一言言って、のはこの部屋の外に向かった。
9
時刻は朝7時05分半、予定の時間より少し押しているがほぼ問題のない時間である。
太陽がゆっくりと登り、月は見えなくなった。
まだ7時過ぎだと言うのに気温は35度を超え朝のおはようモーニングの天気予報では今日は42度予想と予報が出ていた。夕方には局地的に200mを超えるゲリラ豪雨が降る予想で世界の終焉が近づいている事が肌身で感じられた。
松本は今朝のニュースで「日本人移住計画」なんでも何も現実味が帯びてきたと思い始めてきた。
これだけ暑いと、人間は地上では生活できなくなり、地下に穴掘って暮らすことになるかもしれないと本気で考えている層もいると話に聞く。
それにただでさえ、今でも日中はカーテンを閉めて夜、太陽が完全に落ち切ってからカーテンを開ける生活をしている。
昼間の公園には人の姿はなく夜暗くなり始めてからやっと子供達の遊び声が聞こえ始める始末である。
何十年も前から対策をしないといつか地球には人が住めなくなると言う見解が湧き出ていたが、どの時代の人たちもあと30年もしないうちに自分は退場するから関係ないやと言い、今の利益を確保するために、未来を犠牲にしている。
現に、今日も国会では気温上昇対策についての議論が行われると報道がされていたが、経済界の反対の声が多く、議論は平行線どころか後退し始めている。
日中はエアコンを22度でつけないと室内が冷えることはなく、夜もエアコンをつけないと眠れないほどに暑い、24時間ずっとエアコンが火を吹いているような状況である。
一度エアコンの後ろを触ってみると温風がずっと流れている、そりゃ地球温暖化が止まるはずもないなと思いながらも、エアコンを使用する毎日である。