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「あぁ、そうでしたね、木田悠馬の現住所ですね」


 話が逸れたことを思い出した安田はテーブルに置いておいた、封筒の中身を取り出し、松本に手渡した。


「ありがとうございます」

「いえ。それで木田悠馬なのですが半年ほど前に本人から転居届けが提出されています、一応、その書類には提出後の住所が記載されてます」


 安田が言った通り、手渡された紙の住所欄には、転居届提出済みと赤文字で書かれていた。


「この住所は今の住所で間違いありませんね」

「ええ、間違いありませんが……」


 安田は何か言いにくいことでもあるのか、少し言葉が詰まった。


「何か、気になる点でも?」

「この住所に、本当に木田悠馬が住んでいるのか我々にはわからないんですよ、全ての連絡は既に携帯にメールで送ることになっていて、郵便では送らないんですよ」


 だからかと松本は納得した、中学生以上の携帯保持率が98%を超えた今、料金がかかり到着まで2、3日かかる郵便を使うよりも、料金は安く、到着まで数秒とかからない。メールの方が今の時代。便利なのかもしれない。


「まぁ、この住所に木田悠馬がいなければ私たちの仕事が増えるだけですのでお気遣いなく、もしこの住所に住んでなければ別途報告に来ますよ」

「申し訳ない、そうしてもらえると助かります、」


 そう言った安田の表情は何故か暗いものであった。


「顔色が悪そうですがどうかなさいましたか?」

「いえ、木田は何かの事件に巻き込まれているのでしょうか?」


 先ほどの廃校事件の記憶が蘇ってきたのか、安田の顔色は青白くなり、心なしかその声も弱くなる。


「いえ、今のところ、ご両親から()()()()()()()が提出されたので私どもがこちらに来て捜索をしているだけです、まだ事件に巻き込まれたなど、そう言った情報は()()()()()


「なら、いいのですが……」


 安田は疲れたように呟いた。


「木田悠馬は学校には来ているのですか?」


 松本は次の話を切り出した、ちゃんと学校に来ているのであれば、校内で話を聞くことも可能と判断したようだ。


「一応、学校には来てます、昨日も姿を見ましたね」

「朝からいて、私の授業を受けて、午後は……見てませんね」

「午前中は居たと」


 松本の問いかけに安田は「ええ」と頷いた。


「であれば学校が認知してない理由もわかりますな」


 安田はそれに何も言わなかった。


 松本はこれ以上ここで聞くことはないと考え、話を切り上げる事にした。


「貴重な情報ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ。松本さん、うちの生徒を見つけ出しください」

「ええ、必ず」


 そう言い松本は立ち上がり、一階の事務所に足を運んだ。



 事務所で入館証を返却して外に出てくるとすでに夕陽が沈み、夜が現れ始める。


「今日は一度上がるか」

「え、もう後少しじゃないですか」


 木下は異論を述べる。


「今日はこれ以上追えない、明日朝7時に木田悠馬の自宅へ向かう、ちゃんと来いよ木下、寝坊は許さないからな」


 木下は「そんな〜」と言いながら大袈裟に肩を落とした。


 車に乗り込んだ松本は「署で降ろしてくれ、俺はまだやる事がある、木下、お前は先に帰ってろ」


 そう言われ、『いえ、俺も残ります』と木下が言うはずもなく、松本は警察署で車を降りた。


 木下の車が見えなくなるのを見計らって、「うん、俺も残るって言って欲しかったな」と一言漏らした。


 

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