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0.8 フェニックスその2

エニアが去ってから数日------------


王宮へ向かう一人の少年がいた。


中性的で整った顔立ちに強い意志を感じさせる碧眼。


絹糸のような金髪は陽光を反射し少年の歩みに合わせ揺れている。


少年は顔パスで憲兵を脇に退け、とある一室へと向かって歩みを進める。


王宮内でも一際ひときわ豪華な扉の前で少年は止まった。


コン、コン


「ホァいってひぃぞぉ」


室内からくぐもった声が帰ってくる。


「失礼します」


少年が扉を開く。


部屋の主は、豪華な赤いマントを羽織り、煌びやかな装飾の施された王冠を頭上に乗せた老爺。


ギルデティア王国・現国王クンニス・アイナスその人だった。


食事中だったらしいクンニス王は、何かの肉を頬張り終えると、口の端に着いたソースを拭いながら少年に対し問い掛けた。


「おぉ、息子か、どうした何か用か?」


「パーティーの仲間が僕がいない間に勝手に追放されたんだけど…父さん、一枚噛んでるらしいね」


丁重な物言いに反して、少年から隠しきれない静かな怒りを感じる。


「・・・・・・」


クチャ、クチャ...


「あのパーティーは僕が管理していた...僕がリーダーだった!」


「あなたに手出しされるいわれはない!」


「――この肉がなにかわかるか?息子よ...」


フォークに刺さった肉を掲げ、王は少年に問う。


「・・・さぁ?」


「これはな、フェニックスの肉だ!」


「不殺生を掲げる宗派の食いもんだ」


そこまで言うと王は堪えきれないとばかりに背を丸め身を震わす。


「肉食ってんだぞ!?アイツら!!」


クンニス王は心底愉快そうに嗤った。


はぁ...その話になんの意味が――


そんな少年の心中はお構い無しに王は独白じみた口調で語り始める。


「世の中には生きるために果たすべき義務と責任がある」


「このフェニックスがどのように解体ちょうりされているか分かるか?」


「首を切り落とし、それ以外の部位を捌く。首を残しておけばフェニックスは再生するからな!」


「しかし随分前に分かったことだが、翼にも脳にあたる部分があるようだぞ?奴らもそれは重々承知のはず…だが、我々は何者も殺さないと高らかに吠えている。」


「先刻、生きるために果たすべき義務と責任があると言ったな。それは殺生だ。

この世に存在できる魂の数は常に一定であり、新たに命を育むには新たに命を奪う必要がある。」


「動物、魔物、全ての生命はそれを理解し、その業を背負って生を全うしている。

それがどうだ、人間の中で本当にどうしようもない低脳がその義務と責任から本気で逃げられると思い、のうのうと生きている。

それは低能の思考であり、弱者である証明だ。力ある我々と同じ空気を吸う権利など微塵も無いのだよ。」


「だがこの国はあなたの言う弱者が造った街だ。そんな人々をないがしろにすると、足元をすくわれますよ。」


「はぁ〜そこまで言うのであれば仕方がない。納得できるよう、そろそろアレを見せる必要があるな」


「来なさい」


少年はクンニス王の後に続いた。


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