0.6 沈痛
突然の横から話しかけられ、肝を冷やしながら恐る恐る男へと視線を向けると、不意に男は子供たちの方に視線を向けた。
「そろそろ帰らないとマズイんじゃない?」
子供たちに向かって男が問いかける。
「あ、そうだ早く帰らないと!」
二人は言うやいなや走り去ってしまった。
「なんで自分で作曲しないんだ?」
男は唐突に質問を投げ打つ。
「え?いやぁ…ボクにはムリだよ。」
いや待て、なぜこの男は僕の演奏した曲を人が作った曲だとわかったんだ?
「その曲…さも自分の曲のように演奏してるが、何でもトーキョーって街だかなんだかのやつが作った曲なんだって?」
「なっ、なんで知って…」
「お前さ、人様が作った曲さも自分の曲ですって顔してよく引けるよな!?
ほんとクズにお似合いだな!
そんで聞かせる相手が子供かよ笑
それで金でも取ろうってんだろ?
おめぇみたいなコモノを詐欺師って言うんだろ? すげぇな!尊敬するぜ!俺だったら恥ずかしくて生きて行けねぇぜ! 」
「か、カバー…」
男は散々に酷評した後、言うだけ言って去っていった。
鈍器で頭を打たれたような衝撃を受けヨロヨロとした足取りで宿屋へと向かう。
宿についてすぐ硬いベッドを軋ませ横になる。
男に言われた罵詈雑言が頭の中で木霊する。
恥ずかしくて生きて行けねぇぜ、ぜ、ぜ…
「あ゛ァ〜 うるさいうるさい!うるさいんだよッ!!」
僕は耳を塞いで怒鳴り散らした。
「あ、あぁ、うぁああああああああああああああ!!!」
頭を掻きむしり絶叫するが声は一向に止む気配がない。
≪ドンッ
隣室から無言の苦情が入る
僕はしんしんと泣いた。