0.2 僕は主人公にはなれない
ガシャン、ガシャン
僕は何度も何度も鉄格子を揺さぶった。
連行された後、地下牢に幽閉されてから数時間がたった。
「出せ!ここから出せ!」
パニックに陥りながら必死に叫んでいると横から声がすることに気づく。
「こっ、こういう時は、騒がしくし、したヤツからし、死んでいくんだなぁ〜デュフフ」
どうやらこの地下牢に閉じ込められたのは僕だけじゃないみたいだ。
1人は先程話していた男でギトついた髪に丸眼鏡をかけており、その口からは前歯が2本飛び出していた。
もう1人は坊主頭に半裸の筋肉質な男でブツブツと何か唱えながら壁に頭を打ち付けている。
坊主の男の方に耳を済ませる─────
「尾は1つ、
八の脚で大地を駆ける、
銀の月から、
2枚の翼が、
今にそなたを啄むであろう」
僕は鉄格子から力無く手を離すと喚いている男とは反対の牢屋の隅で蹲った。
物理的に坊主の男から距離を置いても、それはどちらの男の方がマシかという話でしかなく、心を休める暇もなく今度は丸眼鏡の男が話しかけてきた。
「な、あんた冴えない顔だけどよォ、何してこんな重罪人の檻に閉じ込められたんだ?」
震える声で僕は答えた。
「何もだよ…僕は勇者パーティーに拾って貰ったのに何も出来なかったんだ…」
「どこの世界でも同じさ無能は生きてちゃいけないんだ。転生しても僕に居場所なんてなかったんだ!」
「哀しいなぁ…」