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試験の始まり

フリー編

契約の件も無事に終わり、プロジェクトは納品に向けて佳境を迎えていた。

この1週間でお客様向けの試験を終え、報告、納品しなければならない。

タイトなスケジュールの中、最後の力を振り絞るのであった。

【試験の始まり】

試験は前回同様、画面入力からのスタートであった。

前回よりも試験項目が多いから時間がかかるのは当然であった。


しかし、その画面入力の試験の間に、前回の試験の不具合部分の修正と再試験に割り当てることができたのは、不幸中の幸いであった、と言えた。

請求サブシステムの帳票出力など、いくつか改善しないといけない部分は残っていた。


赤井:「いやー、課金サブシステムはバッチリだからね。大丈夫だから。ね?大川くん。」


大川:「赤井さん、そんな余裕ぶってると、思いがけないところで足元をすくわれますよ?」


赤井:「大丈夫、大丈夫。何かあったらね。大川くん、よろしくね。」


大川:「・・・」


慎重な大川さんが対応している課金サブシステムは大丈夫だろうとは思うが、何が起こるか終わるまでは安心できない。

大川さんが心配している中、画面入力途中で、経費サブシステムの処理が動き始めた。


【順調な滑り出し】

今回の試験範囲が広いため、大きく3回に分けて処理を実行できるのだ。

正常系、異常系、イレギュラー処理系のうち、まずは正常系の処理の画面入力が終わった。

この部分は、先週、実行したところがほとんどなので、特に問題がないはずだ。


赤井:「リーダ〜 頼むよう!!?先週みたいなミスはしないでねぇ。」


小森:「しませんよ。そんな何回も。」


少し不機嫌な調子のリーダーも、今日は大丈夫だろう。

角川さんが、リーダーの隣の席に陣取って、リーダーを監視しているような状態で作業をしていた。


「あれじゃぁ、リーダーが逆に緊張して、打ち間違えちゃいそうだけどw」


と、大川さんが笑いながら話していたが、まぁ大丈夫だろう。


1日目はそんな少しの緊張感と、赤井さんの緊張感のないツッコミの中で進んでいった。

赤井さんは、緊張でくだらないことしか言えなかったのかもしれないけど・・・。


そして、経費サブシステム1回目の処理の実行が終わり1日目を終えた。


画面入力は2回目の途中まで。


とりあえず、予定通り1日目を終えることができた。


2日目の次の日は、課金サブシステム、請求サブシステム、支払サブシステムの1回目の処理が終わり、画面入力も2回目まで終えることができた。

請求サブシステムの帳票出力も修正が間に合い、しっかりと帳票への出力も確認ができたのはよかった。


川島さんが、ホッと一安心な顔をしていたのが印象的だった・・・。


これで、最初の2日は予定通りに進んだことになる。

明日、3日目は、2回目の画面入力のデータを基に、経費サブシステムの処理がスタートする。


【2回目の処理実行】

3日目。経費サブシステムからスタートした。

2回目の異常系の処理。

動いていない処理もあるから、昨日までとはまた違った緊張感があった。


私:『リーダー、今日の処理は大丈夫そう?』


小森:「うん。大丈夫。経費サブシステムは異常系の判定はあんまりないんだよね。実際は。だから、ほとんど同じ処理を動かすだけだから。」


私:『そうだよね。じゃぁ、大丈夫だ!頼むよリーダー!』


小森:「まかせなさい!」


たしかに経費サブシステムの異常系の判定は多くない。

だから、昨日処理が動いていれば、それほど大きな問題が出ないだろう、というのは間違っていないことだった。


「やっぱり、課金サブシステムがキモだな。」


異常系の判定の多くが、課金サブシステムの処理の中にある。

大川さんの初日からの緊張感はそのせいである。


おそらく、大川さんは設計通り、仕様通りにプログラムは組んであるだろう。

しかし、設計上想定していないものまでは反映できないし、想定していないデータに対してプログラムは書けない。


そうなると、プログラムにも反映されることはないから、処理がうまく動かない可能性もあるだろう。


【嫌な思い出】

「そういえば・・・」


約半年前。


前職の退職が決まり、最後に主担当として対応したプログラムのリリースのときに、本番機でプログラムの処理をループさせ、全処理をとめてしまったことがあった。


プログラムは問題がなかった・・・。

いや、処理をループさせたのだから「問題がない」とは言えない。

しかし、もともと、処理としては大したことのないプログラムだった。


プログラム修正して、試験も万全を期して、その処理のために、本番と同じように登録画面からデータ入力し契約者の情報を作った。そして、修正したプログラムを実行させ問題なく動いていたのだ。


しかし、本番機で実行したときに、何万人もいるデータの中の1人分、登録画面から登録せずに、担当者がデーターベースに直接情報を登録していたものがあった。


契約者の情報は、主レコードと対になるべき副レコードがセットで存在すべき情報なのだが、手入力だったため、主レコードだけが存在し、副レコードが存在しない契約者の情報がデータベースに存在してしまったのだった。


主レコードと対になる副レコードが見つかるまで繰り返す


そんな処理になっていたから、プログラムがループし、本番機までを止めてしまった。


登録画面を使用せずに手入力すること自体が、そもそもの問題であった。

そのため、担当課の責任のような形になったが、仕様上ありえなくても、プログラム上は処理としてありえることであっからループした。


だから、ループしてしまったのはプログラムの問題だと、責任を痛感した。

生命保険会社であったから、本番機が止まったことを金融監督庁へ報告をして、なんて、少し大袈裟な状況にもなったし、あの時の教訓は忘れられない。


まぁ、そんな、縁起でもないことを思い出しながら・・・、課金サブシステムの処理を迎えるのだった。


【課金サブシステム実行!】

小森:「終わったよー!」


経費サブシステムはリーダーの言葉通り、問題なく処理を終えた。


大川:「よし。じゃぁ、課金サブシステム実行始めますね。」


赤井:「大川くん頼むよ!!!」


大川さんが課金サブシステムの処理の実行を始めた。


おそらく、プログラムが途中でABENDすることはないだろう。

問題はその後の処理結果の確認である。

今日、夕方まで実行し、夕方から結果の確認となるだろう。データ件数が多いからどうしても時間がかかってしまう。


赤井:「いやぁ、ドキドキするなぁ。」


私:『赤井さん、ここまで来たらもう覚悟を決めるしかないですよ。きっと、大川さんのプログラムは大丈夫だろうから、問題があるのは仕様のほう・・・。』


赤井:「え!?佐藤さん。僕の設計が問題があるって言うの???」


私:『いや、そういうわけでは・・・。』


赤井:「まぁ、でもそうだよなぁ。想定外のデータあったらいやだなぁ。」


「失言してしまった!」と思ったが、赤井さもいつもだったら怒りそうなもんだが、やはり心配なのか少し緊張しつつ、気弱な感じであった。


ここで大きな問題があったら、今月の納品は難しいからな。

それはみんなそう思って対応しているはずだった。


小森:「うちは、無事終わったからね。うちは課金サブシステムは危ないんじゃないの???」


いつもの仕返しか、ニヤニヤしながら言ってきたが、この男、リーダーだけはどんなことがあっても、緊張感はない。


大川:「課金サブシステム、処理終わりました!服部さん、赤井さん、確認お願いします!」


皆が注目している、今回の最大の難関。2回目、異常系の課金サブシステムの処理結果の確認が始まった。


つづく


※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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