例の件
フリー編
新しいJCLチームとなり、その責任者の水原さんとジョブフロー全体の確認をしていた。
ふとしたことから、その水原さんが課金サブシステムの責任者の服部さんと怪し気な話をしていた。
それを聞いたところ水原さんが口を少しずつ開いていった。
【例の件】
水原:「聞きたい?」
水原さんと服部さんが「例の件」と言って話していたこと。
すぐ横で「例の件」と言われたら、それはそれで気になってしまう。
聞いてはいけなのかな?と思いつつ、水原さんに聞いてみたのだ。
私:「え?聞いて大丈夫だったら・・・聞きたいです。』
水原:「そうだよね。」
ニヤリとしながら話はじめた。
水原:「そもそもさ、このプロジェクトって、最初から黒字にならないんだよね。」
私:『あ、そうなんですね。』
水原:「そう。だってね、額は言えないけど、とても信じられない金額でこの仕事を上で取ってきててさ、だから、もともとこの開発だけではどうにもならいんだよね。」
私:『え?どういうことですか?』
水原:「ほら、今回プロジェクトがうまくいってないのは、H社の汎用機の部分がみんな分からないからでしょ?そりゃそうだよね。だって、F社の汎用機しか使ったことないからね。」
私:『はい。』
水原:「今回、このH社の汎用機のリプレースの時期で、そのリプレースの案件をF社がとりたくてとりてくて、かなり強引にとったらしいんだよね。」
私:『なるほど。』
H社の汎用機をF社の人間が使ったことないのは当然である。
ただ、なんでH社のシステムの開発をF社がやっているか?ということが謎であった。
【システムリプレース】
水原:「で、F社がリプレース案件を取ったのはいいんだけど、H社の運用保守の期間がもう切れてさ。リプレースはまだ先になるんだけど、そこまでの運用保守と、その前に今回の新インターフェースの開発があって、でも、H社からF社へシステムが変わってしまうので、H社は手を引いてしまったんだよね。」
私:『そうなんですね。それだと運用が。。。』
水原:「そう。運用保守はH社しかできないから、そこはお客様も頼み込んでやってもらえるらしい。けど、費用も余計にかかるし、新インターフェースの開発はもうH社はやらないって完全に手を引いて、うちにそのツケが回ってきたんだよね。」
私:『え?でも、それはそれで対応するにはそれなりにコストはかかるんじゃないですか?』
水原:「そうだよね。今回の開発は、F社の汎用機に移行するので、その中の費用の一部としてお客様はみていて、通常のこれくらいのプロジェクトを対応するためにかかる金額と比較したら、考えられない少ない金額で受注してしまってるんだよね。」
私:『そうなんですね。。。』
水原:「普通だったら、対応が難しい額、というか受けれない額なんだよ。だから、Tシステムだったり、全体的にコストを抑えられるような体制で進めてしまったんで、今のような状況に陥っているんだよね。」
私:『そうですよね。必要なお金はかけれないと・・・』
水原:「そう。ただ、今の状況だと、このプロジェクトがうまくいかず、その結果、F社の汎用機にリプレース対応自体がなくなってしまう。ということになってきているから。もう、Fシステム社総出で対応をする案件になってるんだよね。」
私:『なるほど。だから、このタイミングで社員の方々がたくさんプロジェクトへ参画してるんですね。』
水原:「そうそう。けどね。黒字にならないって分かってたからね。最初からやっていれば、その部分ももう少しなんとかなったと思うけどさ。まぁ普通に考えたらあり得ないプロジェクトだよね。」
私が参画してH社の汎用機を使いこなせるエンジニアがいなかった。ただそれだけでなく、プロジェクト自体が、そもそもコストを抑えられた状態で、エンジニアも探すのが難しかったのだろう。
水原:「まぁ、こんな状態なんで、これからは社員中心になっていくだろうけど、なんとしても12月中に納品、って感じになっていくだろうから。人の面だったり、プロジェクトを進めるためには、お金は使えるようになっていくんじゃないかな?」
そうはいえ、F社で進めている限りは、H社の汎用機に詳しいエンジニアを集めるのは難しいし、H社の協力は得られないだろうと、水原さんは言っていた。
この中で、H社の汎用機を使ったことがあるエンジニアが私と大川さんだけ、と言う状況で、この話を聞いて、さらに責任が重大であると思わされるのだった。
【人員管理システム】
水原:「あ、来週から1人、うちの社員がJCLチームに入るからね。一緒にやっていこう。」
人員管理システムのJCLについても、我々が対応をすることになるとのことだった。水原さんは設計で、もう1人の方も設計をするが、実際に手を動かしてJCLも書いていくことになる。
人員管理システムは、井川さんが設計をしていてジョブフローも書いているが、実際にJCLを作れる人がいないため、我々で対応をしていたのがそのまま継続するとのことだった。
「町田さんがあんまり来てないからな、人員管理システム自体が大丈夫なのだろうか?」と姿を現さない町田さんを皆心配していた。いちおう、井川さんが開発の方は進めているようではあったが、ひょうひょうと歩き回っている町田さんがいないと寂しい。
そして、さっきの話を大川さんにも伝えた。
大川:「やっぱりな。そんなことだと思ってたよ。」
私:『なんかね。どうしてこんなことになっているのとは思ったんだけど、そんなことって、本当にあるんだね。』
大川:「まぁ、自分のところの汎用機を導入したら、運用保守も必要だからね。このプロジェクトくらいだったら、将来的なことを踏まえて、プラスになると思ってるんじゃないかな?」
たしかに、リプレースによってH社からF社へ置き換われば、その運用保守はF社がうけることになる。そうなれば、単発のプロジェクトくらいの元はとれるだろう。ただ、そうやってお金をかけれず、プロジェクトが炎上してしまったらもとも子もないけど。。。
大川:「でも、Fシステムも背に腹を変えられない状況で、体制見直して、プロジェクトを立て直そうと本気で思ってるってことだろうからね。それはそれでよかったかもしれない。」
このプロジェクトが失敗すればリプレース案件自体もなくなってしまう。
それは、Fシステム、F社ともにあってはならないことだった。
【続く退職】
大川:「あ、そう言えば聞いた?薩田さんの話。」
私:『え?なに?多分知らないと思うけど。』
Tシステムのメンバーは11月に半分、12月末にも残りのほとんどが退職すると聞いていた。しかし、薩田さんはその先をどうするかまだ決まっていと聞いていた。
大川:「薩田さんも12月末でTシステムが引き上げるタイミングで退職するって橘さんに言ったらしいよ。」
私:『あ、やっぱりそうなんだ。で、次はどうするって?』
大川:「それはまだ決まってないって。でも、開発はやりたいらしいよ。」
私:『そうなんだね。ここではなかなか経験できることがなかったから、次はそういうことができるところだといいと思うけど。フットワーク軽いし、人当たりもいいから、ちゃんと学べるところだったらいいと思うんだけど。』
大川:「そうなんだよね。薩田さんね、動きいいし、いいとおもうんだよね。」
Fシステムが中心になってプロジェクトを立て直すことで人も増えうまく進むようになってきてはいるが、Tシステム、町田さん、薩田さんと、一方では去っていく者もいる。
「我々も個人事業主として、いつ切られてもおかしくないよな。。。」
と、いつ自分の身に降りかかってくるのか、大川さんと2人でしみじみと話していた。
赤井:「ねぇねぇ、知ってる?このプロジェクトさ受注するのに・・・」
赤井さんがニヤニヤしながら話しかけてきた。
いつもの話が長くなるパターンだが、その話はきっと既に知っている内容だろう。
うまく、すり抜けなきゃ、と、大川さんと目を合わせて笑った。
つづく
※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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