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自分たちは終わっても・・・

フリー編

月曜日の夕方から実施される結合試験。

お客様に結果報告をする必要があり、今後のプロジェクトの方針に大きく影響する重要な結合試験だ。

経費サブシステムのメンバーがいない中、先行き不安な月曜日の朝を迎えたのだった。

【自分たちは終わっても・・・】

2日続けての徹夜で疲れた身体ではあったが、大川さんと2人で、あ、赤井さんもいれると3人で、課金サブシステムのジョブは一通り流し終え、正常系の処理であれば問題がないところまで確認ができた。


この後、請求サブシステムへデータを引き継ぎ、処理が流れれば問題ない。

請求サブシステムのJCLと入出力データは夜中に確認したから問題がないはずだ。

香川さんの帳票のプログラムが直っていれば、こっちも正常系は動くはずだ!と、夕方の結合試験に向けて準備万端になっていた。


大川:「経費サブシステム大丈夫かな?リーダーちゃんとやってるんだろうか?」


私:『う、うん。怪しいよね。大丈夫だろうか?』


小森JCLリーダーのJCLは私もしっかりと確認ができていない。

いま、それをしようにも、最新版のJCLは本人しか保存場所を知らないから、リーダーが出社しないと確認さえできない。


ちょうど、月曜日の朝の7時を回ったところだ。


大川:「結合試験、夕方からだから、一回帰ってまた夕方くればいいかな?」


私:『そうだよね。シャワーくらい浴びられるといいよね。』


赤井:「山崎さんに聞いてきますよ。」


と、赤井さんがPMの山崎さんに、今日のこの後のスケジュールと、帰宅して良いか確認をしに行ってくれた。


【2日連続の徹夜のあと】

大川:「2連ちゃんの徹夜はきついでしょ?俺もなかなかやらないよ」


私:『赤井さんもだからね。年齢的にキツいよね。』


香川:「請求のところは、僕が流して、帳票を確認するから大丈夫だよ。」


大川・私:『ありがとうございます!』


香川さんも昨日の夜から朝まで、帳票の修正をしていたから、疲れは溜まっている。

ただ、あと、1、2時間もあれば、請求サブシステムは確認ができるだろう、というところまでは来ていた。


香川さんに、請求サブシステムのところは、おまかせして・・・。

そもそも、我々の担当ではないが、この状況ではそんなことも言っていられない。

みんなでゴールに向けて頑張るだけだった。


大川さんと一旦の帰宅に向けて帰り支度をしようとしていたところに、PMの山崎さんと、課金サブシステムのSEの赤井さんがやってきた。


山崎:「あ、2人とも、いいかな?朝までお疲れ様でした!今日、この後、結合試験があるのは知ってるよね?」


大川・私:『はい。夕方からですよね?』


山崎:「そうそう。だからね。ちょっと休んできて欲しいんだ?」


大川:「はい。一度、家に帰っ・・・」


山崎:「いや、駅前にさ、サウナがあるから。そこで3時くらいまで、風呂入って休憩してきてくれるかな?」


大川・私:「ええ!!サウナですか!」


帰れると思った大川さんと私は顔を見合わせ、苦笑いをするしかなかった。

赤井さんの暗い顔はそのせいだったのか。。。


【束の間の休憩】

赤井さんと大川さんと3人で、駅前のサウナへ歩いて行く。

「まぁ、風呂も入れるし、家帰って戻ってきたら、その間寝れないし、こっちのほうがいいのかな?」と慰さめあいながら向かったのだった。


「香川さんも来れればよかったのにね。」とか、「朝帰ったら、夕方戻って来ないだろうって、山崎さんの心配もあるだろうし。」なんて、冗談を言っているうちに、サウナについた。


大川:「いちおう、山崎さんからは、何かあったら電話するって言われてるから。僕の携帯にかけてくるっていうことなんで、電話きたら起こすね。」


私:『ありがとう。電話がならないことを祈ろう。」


大川:「リーダーヘマしてなきゃいいけど(笑)」


JCLリーダーの小森さんは、いいやつだが、本当にリーダーなのか怪しい動きをする。

実際の動きも怪しいときがあるし、修正が進んでいるのかも怪しい。

元ミュージシャンでドラマーだと言っていた。一度、音楽を聞かせてもらったが、・・・、コメントは避けておこう。


3人で風呂に入り、男だらけのむさ苦しい仮眠室で仮眠をとることにした。

月曜の朝なのに、割と人がいるものだ。


仮眠用のリクライニングシートで眠りについた。。。


【結合試験への関門】

大川:「佐藤さん、佐藤さん、起きて。山崎さんから来てくれって連絡きたよ。」


午後1時を少しすぎたところだった。ときどき目を覚ましながらだが、3、4時間は眠れたかもしれない。


私:『あれ?まだ1時じゃん?もう行かないとダメか?』


大川:「そうなんだけど。なんか、ヤバイらしい。来て欲しいって。」


私:『まさかの経費?のほう?リーダー?』


起き抜けの寝ぼけ半分の頭を動かし大川さんに聞いた。


大川:「いや。それは分からないけど、すぐ来てって。でも、多分経費でしょ。」


赤井さんも起こし、急ぎ足で仕事場へ向かった。


赤井:「16時スタートだから、今からだともうあんまり時間ないよね。」


大川:「そうですよね。どこまでできるんだろうか?というか、リーダーどこまでやってたんだろう。」


歩いて10分程度、すぐ着いたその部屋では、思った通り小森JCLリーダーが、重い顔をしてパソコンの画面と睨めっこしている。

赤井さんが山崎さんに聞いたところ、経費サブシステムが最後までJCLが動いていないということだった。


PMの山崎さん、経費サブシステムのSEの角川さんから、とりあえず、16時までに正常系だけでも動かしたい、ということで、大川さんと私に、経費サブシステムのJCLを確認するように依頼があった。


時間との勝負だ。


私:『リーダー、JCL、どこにあるんですか?最新版教えて欲しいんですけど。』


小森:「う、うん。ここだよ。」


【プログラムは動く?】

リーダーからJCLのある場所を聞き、大川さんと2人でJCLを確認し始めた。

今まで一度も自分たちでは動かしたことがないから、2人で実行し、結果を見て、問題のあるところを確認しながら進めた。


私:『あ、れ?』


大川:「どうした?」


私:『なんかこれ、ライブラリの指定がおかしいだけじゃ。。。』


大川:「ん?」


私:『いや、先週、おかしくて、全体的に変えたやつが直ってない。』


大川:「あ、ホントだ。でも、これってさ、このJCLだと、プログラムも全然ちゃんと動かないんじゃ?」


私:『そうだよね?』


大川:「リーダー・・・」


経費サブシステムのJCLには古いライブラリが残っていて、これが悪さをして処理がうまく動かなかったのだ。

先週、全サブシステムで最新版に更新することを周知されていた。

しかも、これが反映されていないと、プログラムの実行結果はおかしいはずであった。


山崎さんと角川さんに報告した。


取り急ぎ、ライブラリを最新版に更新して、正常系の処理は最後まで動いたこと。

ただ、プログラムの実行結果までは、我々は内容が分からず、確認できていないので、正しいとは言えないこと。

そして、時間までその実行結果の確認を小森さんに進めて欲しいこと。


【わずかな時間で】

角川:「小森さん!」


小森:「は、はい」


角川:「最後までプログラムの確認終わってなかったんすか?」


角川さんは、武道をやっていたので、男らしい話し方をする。


小森:「いやー、いちおうはやったんですけどね。なんか、うまくいかないところもあって・・・」


角川:「ダメでしょ!ちゃんと報告しなきゃ!みんなに迷惑かけるっしょ!」


角川さんに叱られ、肩を落とした小森さんがトボトボ、大川さんと私の横を通ろうとした。


小森:「チッ!」


大川・私:「?」


角川:「小森さん!ダメでしょ。助けてくれた人にそんな態度とって。悪いのは小森さんだよ」


小森:「はい。。。」


さらに小さくなった小森さんは部屋を出て行った。


今は15時過ぎ。


16時からの運命の結合試験までもう1時間を切った。

小森さん、今部屋出て行って、プログラム確認しなくていいのか?

みんなの心配をよそに時間だけは刻々と過ぎていくのだった。


待望の町田さんはこの後、来るかもしれない。

来ても相手をすることはできないだろう。


つづく


※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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