本格?作業開始
フリー編
課金サブシステムのJCLの疎通確認のため、入場後最初の土曜日の徹夜作業を終え、日曜日の最終電車で帰宅することとなった。
先行きの怪しいプロジェクトに頭を抱えつつ、新しい週を迎えるのであった。
【本格?作業開始】
まさか、入場2日目から徹夜することになるとは思わなかった。
ただ、そのおかげで、現場のプロジェクトがおかれている状況は少しずつであるが、把握できてきたように思えた。
前職では保険会社でシステム開発に取り組んでいたため、設計書もしっかりあるし、試験もしっかり実施するし、スケジュールもしっかり組んで対応していた。
今回はまともな設計書もなければ、試験を実施するもののうまく動かず、スケジュールは遅れに遅れている、というプロジェクトだった。
赤井さんが、プロジェクトマネージャーの山崎さんに聞きだして、本来であれば今月末に納品予定ということだった。
だから、この週末の課金システムのJCLの通しがうまくいって試験結果もバッチリ確認して、総合試験フェースに入り納品、という段取りだったらしい。
しかし現実は結合試験どころか、JCLがまともに動いていない状況であった。
総合試験なんてできるわけない。ましては納品なんていつになるかも分からない状況だった。
部屋の奥の会議室では、FシステムのPMの山崎さん、サブの石山さん、Tシステムの立花さん、そして町田さんが連日繰り返し打ち合わせを行なっていた。
なぜか、町田さんの怒鳴り声だけが響いてくる。
Fシステムの事業部長や、F社の営業部長も参加することもあった。
うまく進んでいないプロジェクトの方向性を、大問題となる前に、炎上する前に手を打とうという、そんな会議であることは誰の目から見ても明白であった。
【個人事業主】
そんな、息苦しいプロジェクトではあったが、嬉しいことに入場してまだ1週間も経っていないにも関わらず、大川さんやTシステムの若手、とくに薩田さんたちとは仲良く、冗談も言い合える仲になっていた。
大川:「佐藤さんって、個人事業主なんだよね?」
私:『うん。そうだね。大川さんもそうなんでしょ?』
大川:「そう。よかった。でもここの現場は個人でやってる人多いんだよね。町田さんだって、ああやってFシステムのお偉い方と対等に話してるけど、個人事業主だって。まぁ、もともとFシステムの偉い人だったから、今の立場で仕事してるってのはあると思うけど。」
私:『あ、そうなんだ。』
大川:「だから、プロジェクトで重要な役割を担えるように、いろいろ動いてるんじゃないかな?」
私:『なるほどね。たしかにそう言われてみると、そんな動きをしてるのかも?』
町田さんのいまいち微妙な立場な雰囲気はそんなところからきているのだと思った。
大川:「ところでさ、話は変わるけど。いま月いくらくらいもらってるの?」
私:『え?私?そうだね30万円だよ。多いか少ないか、正直分からないけど。』
大川:「え???30万?月?」
私:『う、うん。あれ?どんな感じなんだ?30万円って』
大川:「い、いや。随分と少ないんじゃないか?それ。ちょっとIシステムの飯田専務(旧I専務)に相談してみようか?全然少ないよ?」
私:「あ、そうなんだ?初めてだったから、とりあえずこれでいいかと思って。。。」
大川:「まずは、その営業の人に、値上げ交渉した方がいいよ。深夜も休日もこんなに働いてるし。そもそも安すぎる!」
私:「そうなんだ。ありがとう。言ってみるよ。」
今はもう木曜日の夕飯時。きっと、このまま徹夜になるだろう。その前に確認しなければと、営業の上田さんに連絡することにした。
【契約金額の変更?】
私:『お疲れ様です。上田さん。佐藤です。夜分にすみません。』
上田:「ああ、佐藤さんお疲れ様。なんか、とても忙しいようだね。体調大丈夫かな?」
私:「あ、体調は大丈夫です。忙しいですが、とりあえずは目の前のことをクリアしていっています。あ、それはそれでなんですが、今日連絡したのは契約のことで・・・」
上田:「あ、そうだね。契約まだだね。支払いのお金は僕が近くに持っていくから心配しないでね。」
「え?持っていくって手渡し?」と思ったが、今日はそのことはいったんいい。
私:『あ、あの。契約の金額のことなんですが、今の勤怠状況とか考えると、30万円というのはちょっと相場からも低いと思うですよね?』
上田:「あー、なるほどー」
私:『いま、徹夜もあり、休日出勤もありと、会社員だと深夜や休日の残業代とかあると思うですが、個人だとそういうこともないので、これだけの勤務状況だと、割安になるきがするんです。』
上田:「そういうことね。うんうん。」
私:『なんで、ちょっと、この金額でこの勤怠状況だと、あまり続けられない気がしているんです。』
上田:「あー、そうだよね。わかる!まさかね。こんなに忙しくなるとは僕も重合わなかったよ。そうだな。じゃぁ35万円だったらどう?」
私:『あ?え?5万もあがるんですか。いま?』
上田:「え?あ?そりゃぁ佐藤さん頑張ってるし。それくらいは僕も頑張りますよ。ただ、ここまでしかあがらないだけど。」
【怪しい気配】
そんな、ひとこと、ふたこと、言っただけで5万円もあがるなんて・・・。
そもそも、それくらいの余裕があったんじゃないか?
大川さんと話して感じていた怪しさの疑いは、この5万円アップの話で確信に変わったのだった。
いったん、5万円アップで了承し、席に戻り、大川さんにやりとりを話てみた。
大川:「それ、なんか、怪しくないか?飯田専務はうちの下にその上田さん?の会社があるって言ってけど、契約書もないんでしょ?それに簡単に単金があがるなんておかしいな。」
私:『やっぱ、そうですよね。話してても上田さんおかしかった気がするんですよ。』
大川:「俺、飯田専務に言ってみるよ。少なくとも、悪い方向には行かないと思うし。いま佐藤さんに抜けられても困るからね。俺」
私:『いやいや・・・。このまま抜けた方がいいような気もしなくはないんだけど笑』
プロジェクトの進捗が悪いだけでもストレスなのに、まさか、契約のことで問題になるなんて。。。
今分かってよかったけど、なんか、騙されたようで心が痛い。
「田口先輩の奥さんの紹介だったから、信用してたんだけどなぁ」
知り合いの知り合いは他人。
そうでなくても知り合いであってもお金のことをしっかり確認してなかった自分が悪いと反省し、これからの契約をどうするか?をちゃんと考えなければと気持ちを入れ替えた。
【チーム編成変更】
木曜日のの徹夜作業のあと金曜日の朝を迎えた。
朝方まで続いていたPMの山崎さんたちの会議で何やら決まったらしい。
珍しく紙の回覧が回ってきた、チーム編成の変更があるらしい。
自分の名前がどこにあるか?と探していたら・・・「町田遊軍」のところにあった。
「町田遊軍」?????なんだろう????
私:『大川さん。町田遊軍ってなんだろう?大川さんも名前あるよ?』
大川:「なんでもやるってことだろう?きっと笑」
大川さんと私、あと、Tシステムの若手たち。
なにをやるのか、若くてフットワークの軽いメンバーばかり。
大川さんの言う通り、なんでもやる、ができるメンバーだ。
そして、さらに、小森リーダーとのJCLチームのところにも私の名前はあった。
町田さんは打ち合わせが終わって帰り支度をしていた。
私:『町田さん!帰る前にちょっといいですか?町田遊軍なんですが、いま、JCLの修正があって、なかなか手が空かないのですが、いますぐ何かやることありますか?』
町田:「あぁそうだね。今日はもう帰るから、明日、打ち合わせしたいんだけど。」
明日?土曜日だけど・・・。あ、しまった、用事があったんだ。
この土曜日は大学時代のサークルのOB達で集まる会があった。
バンドサークルだったのでOB有志のライブだ。私も出演する予定だった。
私:『あ、明日なんですけど、日中、どうしても外せない用事があって、それだけは行かせていただけると嬉しいんですが、大丈夫でしょうか?』
町田:「大丈夫大丈夫!何時に来れるかな?」
私:『4時くらいなら行けると思います。。。』
町田:「じゃぁ4時から打ち合わせにしよう!」
おいおい。きっと今日も徹夜のはずである。
このまま明日の朝まで働き、バンドで演奏し、そして夕方からまた下北沢に仕事やって来るという、かつてない試練を乗り越えなければならない、と覚悟を決めた入場後1週間目の私だった。
つづく
※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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