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まさかの移転!

今から20年前、2000年の秋、私(佐藤俊輔)は新入社員として入社した会社を辞め、仕事を探していた。COBOLのプログラマーだった私は当時オープン系と言われていたC言語やJava、WEB系のプロジェクトに参画したくて、転職活動をしていたのだ。

 新入社員で入社した会社は金融系の案件を多く扱っており、私も保険会社のプロジェクトに配属されていた。新入社員に対しても、しっかりと教育ができるプロジェクトで会社の中でも人数が多く(とはいっても10名ちょっとだが)、OJTによりCOBOLのプログラムだけでなく、保険会社の業務もしっかりと学ぶことができた。


もともと、このプロジェクトは、この団体保険システムのリプレースプロジェクトとして新規開発から参画し、その後、運用保守と開発を並行で対応していた。まだ、会社内にシステム部門があり、自社開発が中心だったため、品質重視に、また、業務知識も必要とされるプロジェクトだった。


入社して2年半たったとき、ちょうど、1999年の夏、ノストラダムスの大予言の「1999年7の月」を過ぎて暑さも落ち着いてきた頃、プロジェクトのメンバーが会議室に集められた。私が所属していた課の石川課長より重大発表として、来年度の後半、2000年に入ってすぐ、保険会社の部署が東京から千葉へ移転すること、それに伴い、プロジェクトのメンバーも移転先付近に引越しをする準備をするように説明があった。


『いいタイミングかな・・・』


私は入社時よりWEB系のプロジェクトに参画したかったため、このタイミングで退職し、転職することを決意したのであった。もともと、会社ではECサイトを運営しており、そちらの部署への配属を希望していたが、部署自体の人数も少なく、増える予定もなかった。状況として、WEB系の仕事をするには、転職するしかなかったのだ。


『引越しの負担も大きいしな。』


と経済的な面も足かせになっていた。当時は実家暮らし、入ってきた給料は毎日飲み歩き・・・というのは大袈裟だが、少ない給料、ほとんどが付き合いか、趣味に消えていた。その状況で一人暮らしをするには、少しハードルが高かったのだ。


秋から冬に変わろうとしていたとき、賞与の評価と同じタイミングで、石川課長との個人面談が実施された。通常の評価のフィードバックとともに、来年度の引越しに向けたプロジェクトの方向性、そして、それぞれの引越しを含めたプロジェクトの移転についての承諾をえるためだった。


評価については可もなく不可もなく終わり、課長から引越しについての説明が始まる。時期はこれくらいで、プロジェクトとしてはこのメンバーで、この人は来年別の部署へ異動する予定で、引越し費用は会社とも協議しているが原則自己負担で・・・。と。


『え?自己負担なんですか?』


と、この後、会社を辞めることを伝える準備をしている私は、心の中だけで呟き、そしてうなずいた。


石川課長:「・・・だから、来年、ちょうど一年後になるが、千葉へ引っ越してプロジェクトを盛り上げていって欲しいんだよ?」


私:『いえ。私は引っ越しは難しいです。そしてWEB系の仕事をしたいので、退職することを考えています。』


言えた。よかった。と思い、顔をあげると「え?」という困惑の表情の石川課長。


それはそうだろう。

私以外の全員は承諾して、引越しについて、少しでも会社にも負担して欲しいことをお願いしていたくらいだ。

私ひとりが、引越しを拒んでしまったのだ。


石川課長:「それは、覚悟を決めて言っていることかな?」


次の瞬間、厳しい口調で、険しい表情と変わった課長の口から、飛び出ていた。


私:「はい。覚悟をもっての言葉です。」


そのあと、何か言われたが、あまり覚えていない。

辞めることを伝えたられた満足感とともに、思いのほかの石川課長の苛立ちを受け取ってしまったからだ。


そして面談は終わった。


部長来訪

忘年会が終わり、その年も静かに終え世紀末を迎えようとしていた頃、石川課長から呼び出された。


石川課長:「移転の件だけども、まだ、気持ちは変わらない?」


いつもの石川課長の口調であった。冷静だが少しおどけた感じで優しさもある。


私:『はい。移転についていくのも引っ越しが伴うので一つのポイントではあるのですが、一番はWEBの仕事をやりたいんです。』


石川課長:「そうか。想定ではいつころの退職を考えてる?」


私:『はい。切りが良い、という訳でもありませんが、3月末で退職をして、4月から新しいところに行けるように考えています。』


石川課長:「3ヶ月以上あるから、3月末の退職は問題ないと思うけど・・・。保険会社の中でもWEBの部署もあるからそっちへ移れるように打診してみてもいいよ。」


私:『はい。ありがとうございます。ただWEBは社内システムというよりも、ECのようなものをやってみたいのです。』


正直な話、部署単位で決まったシステム会社が請け負っている、また、業務知識も大きく変わってしまうことから、現実的な提案だとは思えなかった。


石川課長:「そうか。残念だけど。このあと、原部長が来るから、近くの喫茶店にいって欲しいんだ。退職の件について、ちょっと話をしたいと言ってるよ。」


喫茶店での時間

石川課長に言われ喫茶店に向かった。

お客様の現場に常駐している手前、退職の話などはなかなかお客様の社屋ではすることができない。普段、足を運ばない原部長が私と2人だけで話に来たということは、お客様に不信感を与えてしまう。


喫茶店に着くと、既に原部長が席にいた。


『お疲れ様です。遅くなりました。』と席に座った。


原部長:「うん。お疲れ様」


そして、原部長が話を始めるのを待った。

が、一向に何も話さない。

たしかに寡黙な方で、口数が多い人ではないが、なんで話さないんだろうと、不思議に思いながら、微妙な空気感が漂う中、コーヒーを口にしていた。


しばらくして・・・

20分くらい経ってからだろうか


原部長:「面倒見てた蒼井くんと奥田くんは寂しくなるな。。。」


私:『はい』


原部長:「新しいところでも頑張って」


私:『はい』


原部長:「じゃぁ、仕事に戻ろうか」


私:『はい?』


原部長との面談は終わった。

いったいなんだったんだろう。なんのための面談だったんだろう。と思った。


後から思い返せば、私から退職に至る経緯を話せばよかったと思うし、もしかしたら、石川課長から原部長へ私が話したいことがある、と、言っていたのかもしれないし、それにしても、なぜ、あのとき原部長があまり話さなかったのは謎である。


 原部長との面談も終わり、年も明け、転職活動をしなければ・・・と思い始めた1月、お客様でもある保険会社の部署の川西課長のところに、自社の北沢常務と原部長が挨拶にきた。そして、石川課長も加わり、会議室に入って行った。


隣の席の先輩が、「お前の退職の件だぞ。あれ。」と耳打ちしてくれた。


これで、退職が決まり、新たな道を歩むことができると、ドキドキしながらその会議が終わるのを待った。退職が決まってから転職活動を始めるのは少し遅いとも思ったが、お客様にもプロジェクトを抜けることが伝わり、心機一転、新たな道を探すことができると思ったのだ。


しばらくして、川西課長と自社の北沢常務、原部長、石川課長が会議室から出てきた。

見た感じ普通。何事もなかったように、川西課長は席に戻り、北沢常務、原部長も我々に励ましの言葉を笑顔で投げかけ帰っていった。


『うまくいったかな?』と不安はあったが、3ヶ月前に話は伝えているし問題ないだろうと安直に考えていた。そして、北沢常務、原部長を見送りにいった石川課長が戻ってきた。


石川課長:「ちょっといいかな?」


私:『はい』


2人で会議室に向かった。


石川課長:「退職の件だが、3月末での退職は難しくなった。」


私:『え?』


思いもよらぬ石川課長の言葉に私は言葉が出なかった。


つづく


※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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