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幸せじゃないわけでもない。

作者: 大橋 秀人

瞬くと、何も映っていない真っ黒なテレビのスクリーンに自分の顔が浮かんでいた。


テレビもカーテンも、観葉植物やぬいぐるみも、いつも通り配置されている。


特に変わったところはない。


ただふと、いつの間にか言い知れない空しさが体の奥底に滲んでいた。


何があった訳ではない。


上手くいっている人生かはわからないが、ひどいとも思えない。


言うなれば、至極平凡に生活を送っている。


普通に仕事をして、家庭を持って、子供の世話をしている。


つまらない人生といえばそれまでだ。


でも、例えば自分が才能に恵まれて、一生夢を追いかけられたとして、例えば自分が財をなしてなに不自由なく暮らせたとして、果たして自分が今感じているむなしさを感じないと言いきれるだろうか。


誰しもふとした瞬間に、空しさを感じているのではないだろうか。


何のために生きてきたのか。


何を成し遂げたのか。


何の途中なのか。


だから何?


疲れきって高ぶった気持ちが落ち着きを取り戻していくにつれ、空しさが押し寄せてくる。


テレビに浮かんだ幽霊のような顔は、皮肉たっぷりに歪み、やがて諦めとともに弛緩していく。


幸せじゃないわけでもない。


ただ、どうしようもない空しさに襲われているだけだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ただ、どうしようもない空しさに襲われているだけだ。 この終わり方が本当は切ない気持ちが書かれている事を感じました。 こういう小説もいいですね
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