表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/25

7.属性鉱石の行方


 地下洞で襲撃してきた時はどうなるかと思っていた。しかし調査で来ているだけで、戦う力のない人間なことが分かった。


 手にしていた斧もハッタリのようなもので、彼女自身も通じるかどうか不安だったらしい。


 アグリッピナに案内され、俺とカニャンは奥に続く地下洞を進んでいる。カニャンが怯えを見せていたのは地下洞側だったが。


「今は怖く、ない」

「そうなんだ? それじゃあ平気かな」


 しばらく進むと食事や寝泊まりをする場所に着いた。所々の土や岩の壁が削れていて、岩の壁には日数を示す印が刻まれている。


 生活空間が感じられるが、洞窟は奥の方まで続いているようだ。

 地下洞自体に魔物の気配は無く、危険性は無いようにも思える。


「どうぞどうぞ! 何も無いですけど、段差に座ることは出来ますよ」


 彼女が言うようにただ座るだけの段差くらいしかなく、お世辞にも快適な空間とは言えない。


 地面を見るとあちこちに石が転がっていて、散らばっている印象を受けた。

 

「無理。リナスだけ座っていい」

「じゃあ、俺だけ座るからね」

「……ん」


 カニャンはそこに座りたくないのか、立ったままでいるようだ。

 片や呑気そうなアグリッピナは、話したそうにして俺の反応を待っている。


「ところでアグリッピナさんは調査隊と言ってましたが、他の人は?」


 さすがにいきなり愛称で呼ぶのはまずいと思って呼ばなかったが、彼女は少し残念そうな顔をしている。カニャンに対するのはともかく、今は神官として対応しておく。


「はい! それがですね、私だけなんですよ!」

「……」

「リナス……この人、大丈夫?」

「そ、そうだね」


 誰かが隠れているでも無く、妙にひっそりとしているとは思っていたが。


「そうすると単独の調査隊ですか?」

「そうなんですよー!」


 何で嬉しそうにしてるのか。単独でこんな暗闇の地下洞になんて。今は光を灯しているから明るいとはいえ、心細くなりそうなものなのに。


「ちなみに何を調査しに?」


 転がっている石や削られている壁を見れば予想はつくが。


「属性鉱石を掘り……探しに来ました! 貴重な鉱石がこの地下洞内に埋まっているみたいですので、ミケルーア王都の錬金術ギルドを代表して来たというわけなんです」

「錬金術?」

「はいー。ご存じありませんか?」


 神殿と周辺の村や町しか知らないうえ、帝国以外のことはほとんど知識として入ってこなかった。それだけに聞くもの全てが初耳だ。


 しかも王都からとなればなおさらのこと。


「アグリッピナさんは、そのミケルーアからここに?」

「ですです! 今日で二年目になりまして、あぁっ! しかも多分今日が十九歳の誕生日ですよ!」


 二年前からここにいたのか。

 獣人がどうとか言ってたし、長くいたのは間違いないけど。


「ええと、おめでとうございます。ということは、ここへはこの奥の洞窟からここに来たってことですよね?」

「ありがとうございます! この奥から来たってこと、よく分かりましたね!!」

「まぁ……」


 彼女は少し抜けている部分があるな。

 カニャンが彼女のことを心配するのも無理は無いか。


 それにしても王国代表ということは、実は優秀な錬金術師だったりして。


「リナス、この石、変」


 世間話をしていると、カニャンが近くの石を拾って首をかしげている。


 カニャンには何らかを察知する能力があるが、石に触れただけで何かを感じ取ったのだろうか。

 

「変って、どういう感じで?」

「よく、分からない。でもリナスがくれた剣が教えてくれた……土、水、風……近くからたくさん感じるって」


 地下洞という性質上、湿気があるし行き止まりじゃないから風の流れもある。土はすぐ目の前の壁にあるし、それらを肌で感じてもおかしくない。


 しかしカニャンは神聖剣からそれらを感じている。

 

 神聖剣が意思を疎通させるなんて思ってもみないことだが、剣はカニャンをあるじと認めた。俺には一切聞こえて来ないが、剣を手にした効果が表れ始めたということかもしれない。


 それに属性は攻撃魔法の時、敵次第で脅威的な威力となる。もし神聖剣に属性を付与することが叶えば――と言っても、まずは戦い方を教えるのが先だけど。


「アグリッピナさん。属性鉱石というのは、属性が含まれた鉱石のことですよね? この子が分かるみたいなんですが、あなたはそれを探していたのでは?」

「おほおぉ……!」

 

 アグリッピナは、俺はもちろんカニャンを見ながら何やら興奮している。


 この辺りの壁を削ってかなりの石を転がしているところを見れば、見つけるのに相当苦労していたっぽいが。


「こ、これで帰れますよ!! カニャンちゃんのおかげで私の二年間が報われましたよ~。はぁぁ、どこに属性鉱石が埋まっているか分かるなんて。私なんて二年もここにいて何も見つけられずにいたというのに~……はぁぁ」


 アグリッピナは何やらショックを受けている。


「リナス。カニャンちゃんってカニャンのこと?」

「そうだね」


 属性鉱石が埋まってるのはいいとして、属性鉱石を掘るのを手伝うことになりそうだな。


「石、拾っていい?」

「それは……とりあえず彼女に聞いてからにしようか」

「ん、分かった」


 錬金術師らしき彼女をこのまま一人で帰すのは心配になる。この先のことが気になるし、王都まで付き添うことになるだろうか。



お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ