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ブラック神殿から辺境に左遷された元S級神官ですが、捨てられ聖女を拾ったので最強聖女に育てようと思います  作者: 遥風 かずら
第一章 辺境

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15.S級魔法、発揮する?


「……俺の為に捧げる――って、え?」

「何かおかしなこと、言っておりますか? あるじに尽くすことこそが、務めと聞かせられて待ち望んでいたのですけれど」


 おかしくはない、というより急にこんなことを言われてもって話だ。しかも王都に向かっている途中でこんな展開になるなんて。


 しかも彼女をよくよく見ると幼い容姿。長身と黒衣に目を奪われていたが、もしかしてカニャンと同じくらい幼いのでは。


 といっても、カニャンがいくつなのかはっきり聞いて無いけど。


「……リナス、どうするの? 連れて行く?」

「ううーん」


 アグリッピナにかけられたダークパウダーの効果がいつまで持つか。

 そもそも途中で白いローブに戻ったらどうするという話にも……。


 それにまだカニャンはまともに剣を使えないし、聖女として育てている状態で仲間を増やすのは色々と厳しい気が。


「はいはーい! それならリナスさん。連れて行けるかどうか、実力を確かめるのはどうですか?」


 またしてもアグリッピナに先に言われてしまった。

 まだどうするか決めてないのに。


「分かりましたわ。あるじがそういうお考えをお持ちなら、わたくしの力をお見せしますわ! あるじに認められましたら、わたくしは改めて名を捧げたく存じます」

「えっ、いや……まだ――」


 ――のはずが、向こうはやる気満々のようだ。

 彼女がどういう力を持ってどういう戦い方を見せるのか、確かめるしかない。


 気づけばアグリッピナとダンテ、他の連中は奥の方に引っ込んでいる。

 カニャンだけが俺の近くに残っているが、


「カニャン。ここにいたら危ないんじゃないかな?」

「大丈夫。リナスのそばが一番安心。リナスもそう思ってる」


 意外と頑固さを見せるカニャンには、守りの魔法でもかけておこう。


「……見えざる光、小さき命を護れ! 《ライト・ウォール》」


 わずかながら存在する大気の光が、カニャンに降り注ぐ。


「――? 何かやった?」

「カニャンに魔法をかけておいたよ。何かあっても問題無いようにね」

「ん、リナスを感じる気がする。ありがと」

「でもちょっとだけ離れてね」


 ここで戦うつもりなんて無かったのにやるしかないなんて。


「あるじのお強さ、この目で確かめたく存じますわ! さぁ、いつでもお出しになって!」

「君は何も手にしていないようだけど、どうするつもりがある?」

「問題ありませんわ」


 なるほど。手の内は見せないのか。

 あるいは先制攻撃を受けても問題無い強さを備えている?


 相手がそのつもりなら仕方ない。

 漆黒のあるじと思われても闇は出せないから、それっぽい属性攻撃にしとこう。


「……猛き水竜の牙、この手に委ねよ! 《アクア・ウェーブ》」


 力加減をしておかないとこの集落一帯を沈めてしまいかねない。

 手の平を天に掲げ、彼女がいるところだけに注いだ。


 彼女は何かするでもなく、頭上から絶え間なく降り注ぐ水流をまともに浴びている。加減したとはいえ、空からの水の勢いは動きを簡単に封じた。


「――これがあるじのお力? ……魔法、憎き人間が使っていた魔法?」

「その水の勢いは永遠に弱ることは無い! このまま浴び続けていれば、地中に沈むことになる。そうなる前に無意味な抵抗は止めた方がいい!」


 S級どころかF級以下の威力に過ぎないが、急な水には対抗出来なかったかも。

 そう思いながら水の勢いをさらに弱めようとした、その時。


「あるじ()()。その程度の魔法でわたくしを篭絡(ろうらく)するおつもりであるならば、見込み違いですわ!」


 彼女が手にする羽根の尖端が、俺の首筋付近にあった。

 何も手にしていなかったはずなのにいつの間に。


 首付近への注意は普段からしているが、神官ローブの魔法力が消えている今、効果のほどは薄い。


 そこを上手く突かれたことになる。

 彼女の方も本気で突き刺すつもりも無いようだが。


「もちろん、君を試したに過ぎない。あの程度の水流ごときではね」


 黒衣と羽で見えなかったが、彼女の戦い方はもしかして。


「……真のお力を出すまでも無い、そういうことですのね? ですけれど、わたくしを見くびるのは今回限りでお願いしますわ! 次はあるじといえども命を落とすことになりますわよ」

「肝に銘じておくよ」


 本気を出して無いのはお互い様だったが、彼女の動きはかなり素早かった。


「それで、君はどういう戦いを?」

「君……ではなく、サリル。そうお呼びくださいませ。サリル・グリッリ……いずれここの長となる存在ですわ」

「サリル。そう呼ばせてもらうよ」

「そう望みますわ。わたくしは暗器を使い、この身を使った体術が得意ですわ。あるじが油断したその時、いつでも狙わせて頂きますわ」


 暗器と体術――クロウ族ならではか。

 しかも俺が油断を見せると命を取るとまで言い出した。


 そうなると完全な忠誠を持つまでは、常に緊張を保つ必要がありそうだ。


お読みいただきありがとうございます。

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