表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック神殿から辺境に左遷された元S級神官ですが、捨てられ聖女を拾ったので最強聖女に育てようと思います  作者: 遥風 かずら
第一章 辺境

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/25

13.ジェメリン集落街道


「――というわけでして、彼はこの近くの集落で商売をしているゴブリンさんです!」


 俺とカニャンが警戒する中、橋上から街道に進んだ所でアグリッピナは隣にいるゴブリンを紹介してきた。


 紹介されたゴブリンはカニャンよりも小柄で、見上げながら言葉を発した。


「えっへへへ、ど、どうも! 紹介に預かったゴブリン、バンテっす。今後ともごひいきに」


 小柄な彼は俺を見ながら、腰を低くしてあいさつする。

 態度を見る限りでは危険は無さそうだ。


「……バンテ。君は商売するゴブリン?」

「へっへへへ、そうなんすよ。この近くにあるジェメリン集落でひいきしてもらってましてね。もちろん、アグリさんにも色々買ってもらって……ですんで、そんな怖い顔はしないでくださいっす」

「そうなんですよー! おかげで役立ちましたよ!」


 もしかしてあの瓶詰の土はゴブリン製か。


「そうなるとバンテも錬金術を?」

「へへ、それだけじゃありませんっす。その辺はジェメリン集落でお見せするっす!」


 ジェメリン集落か。

 集落ということは人間もしくは、獣人が暮らしているということになる。


 しかしゴブリンは全般的にずる賢い魔物と聞く。どこまで信用出来るものかは不明だ。


 とはいえ、群れで動くことは無いゴブリンは放浪生活を送っている。彼との交渉は話半分に聞いておいた方が良さそう。


 装備を見たところ寝具のような袋、食器類に食糧、それにアグリッピナが使用した瓶を携帯しているようで、放浪に必要な最低限の格好をしている。


「商売と言うけど、具体的には?」

「それは何とも難しい答えっすね……んでも、この(さや)なんかおすすめっすね! いかがです? 剣を抱えたままじゃ面倒っすよね?」

 

 バンテは神聖剣を抱えるカニャンを見て、そう言い放つ。

 カニャンも反応して頷いて見せた。


「…………ん、面倒」

「うーん。確かに剣を見せびらかしたまま歩くのは危ないかな」

「どうぞどうぞっす。猫族のお嬢ちゃんによくお似合いっすよ!」

「……頂くよ」


 まさか出会って早々に買い物をすることになるとは。

 

「初回限定で2ゴルドにまけとくっす!」


 神殿から左遷される際、貯めておいたゴルドは没収されずそのまま持ってくることが出来た。決して余裕があるわけじゃないが、必要なものは使うべきだろう。


「……? これ、どうやって入れる?」

「これはね――」


 カニャンから神聖剣を借り、購入した鞘に収めてあげた。まだ剣をまともに扱えない以上、小さな背中に備えておくだけでもマシかもしれない。


「リナス、似合う? 似合う?」


 カニャンは剣が収まった鞘を見せたいのか、何度も体を回転してみせた。


「うん、良く似合ってるよ」

「やった!」


 それにしても……神聖剣は神官の俺によほど触れられたくないのか、かなり重かった。カニャンが使いこなせるようになったら相当な切れ味が期待出来そうだが。


「リナスさん。このままジェメリン集落に行きますよー!」

「それは構わないですけど……。ピナさん、急がなくていいんですか?」

「ほ? 何をですか?」

「いえ、見つけた属性鉱石を王都に持って行くのではないかと」


 俺の言葉にアグリッピナはしばらく首をかしげ、


「ハッ!? ああああ……そうでしたそうでした。いやに体が重いなぁと感じてたんですけど、そうでした!」

「……」

「王都はですね、出発してから結構歩いた記憶がありましてですね、途中にある村や町に寄り道しながらでしたので~……」


 そんな気はした。彼女の年齢はともかく、実は王都では二年どころかかなりの年数が経っているんじゃないよな。


「お話の途中ですみませんっすが、ダンナとお嬢ちゃんはジェメリン集落へ行かれるので?」


 ダンナと言われる年齢じゃないんだけど仕方ないか。


「あぁ、行かせてもらうよ。俺たちはアグリッピナさんと違って、この辺りのことは何も知らないからね」

「でしたら、バンテが案内するっす。集落の連中は気が荒いっすから、アグリさんが先に入ると揉めるかもっす!」

「気が荒い……か。じゃあ案内を頼むよ」

「あぁ、それと見たところダンナは神官のご様子。白いローブを目一杯汚してから来た方が身のためっす」


 俺が神官だとすぐ分かるなんて、やはりゴブリンは油断ならない。

 まあ、白い神官ローブなんて着てる人は神殿外でいるはずも無いだろうけど。


「わたしはどうする……? 全身、汚す?」

「ん? いや、カニャンは大丈夫だと思うよ。多分俺だけが目立つはずだからね」

「……ん、分かった」


 人間の集落だとは限らないうえ、気が荒いと聞けば好戦的な種族という可能性もある。ゴブリンはともかく俺だけでも注意しておかなければ。


「リナスさん! 私も負けじとご案内しますからね!!」

「あ、うん……」

「集落に入る前に、私がリナスさんを真っ黒にして差し上げますよー!」


 何をされるのか不安だが、なるべく逆らわないようにしておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ