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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第五幕 忍び寄る陰謀、クーアノン
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クローン、レイノルズちゃん

 LTAS(エルターズ)の東街、イースト・ロスト・エンジェルスはルーシの街だ。

 大半の住民は、ここを取り仕切っているのはクール・レイノルズだと考えているだろう。

 10歳の幼女が(中身、18歳男子)裏社会の猛者たちを取り締まれる世界などないので、正常な考えである。

 とはいえ、18歳の無法者なんて鉄砲玉程度の役割しか与えられないので、ちぐはぐなのは否めない。


「アネキ、到着しましたぜ」

「ご苦労。ポールがいねェとオマエらも大変だろう?」


 なお、ルーシとクールの腹心、ポールモールは、このふたりの犯罪を被る形で刑務所に努めている。

 

「そりゃクールのアニキは脳筋ですからね。(みね)さんがいなきゃと考えりゃ、背筋も冷たくなりますわ」


 そんな運転手はクール直属の部下だ。アメリカ、基、『アメリカーナ』の南大陸からやってきたのだろう。中南米系統の肌の色がそれを証明し、同時にこの国の人種差別がないことを示している。


「でもアネキ、ポールモールさんも次期に釈放しますよ。こっちも計画立ててるんで」

「へえ。そりゃ良いことだ」


 カネを渡して、ルーシは自身のオフィスの前にたどり着く。乗っていた黒塗りのベンツは地下駐車場へと吸い込まれ、その銀髪幼女は顔をぱんぱん叩いて陣地にいざ参る。


「プレジデント。おかえりなさいませ」

「うつ病は治ったのかい?」

「おかげさまで」

「そうかい。まあ気をつけろよ。私たちが仕事中毒な所為で、他の社員がどんどん過労死しちまっている。休暇は定期的にとってくれ」

「承知です」


 ルーシの企業『スターリング工業』。表向きは証券会社となっている。違法寸前の取引で荒稼ぎし、投資委託してきた客からの評判はうなぎのぼり。

 だが、本質はマフィアの摩天楼だ。

 殺人・麻薬・武器・詐欺・恐喝・強盗……業深き無法者たちが9割を占める企業モドキである。


「着替えるかね」


 その銀髪の幼女は、専用の個室に入ってスーツを取り出す。身長が一行に伸びないから、どうしても仮装感が否めない。

 それでもスーツを着ないと仕事をする気にならない。ある種の職業病だ。

 赤のツヤありスーツにグレーのシャツという出で立ちで、ルーシは会議室へと向かっていく。


「レイノルズちゃんを停止しねェとな……。自分の意志を反映するヒューマノイドなんて怖すぎるぜ」


 ルーシは一時期『スターリング工業』を離れていたが、なにも本島から完全に離脱していたわけではない。しっかりダミーを用意してあった。

『レイノルズちゃん』と名付けたそれは、いわゆるヒューマノイドと呼ばれる機体だ。見た目から人間でないことを判別することは不可能。ラジコン操作の感覚で魔力や動きを遠隔操作できる。

 ただしコントローラーは使わず、あくまでも脳波で動き回る。その近未来型影武者を呼び寄せ、電源を切った。


「股触れねェと電源切れない仕組みにしたヤツを詰めてェな。普通、こんなところに指紋センサーつけるか?」


 自分とまったく同じ見た目をしたロボットの股を触るとき、もし濡れていたら惨めだと感じる。

 当然そんな機能は備わっていないので、服越しに人肌そっくりの感触を得ただけで終わったが。

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