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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第五幕 忍び寄る陰謀、クーアノン
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陰キャ嫌いの陰キャ

 無法者の頭領が、ロスト・エンジェルスへ戻ってきた。

 ただし仕事場へは向かわない。護衛もつけず街を歩く。


「おもしれェヤツいねェかな」


 この幼女、歩きタバコはしない主義である。路上で酒も飲まない。そのため傍らにはエナジードリンクがある。1()()()2()4()0()()()ほどの幼女にはぴったりだ。


「おッ」

「あっ」

「久しぶりだな」

「相変わらずくたばらない。アンタが死ねば借金払わなくて済むのに」

「踏み倒しは良くねェぞ? メリット」


 気温12度ほどのロスト・エンジェルス。きょうは暖かい日ではあるが、半袖のシャツを着ている者なんていない程度には肌寒い。それなのにタトゥーを見せびらかしたくて半袖を着ている、高校3年進学決定の少女メリットと出会った。

 黒髪の黒目に猫背の不気味な雰囲気が彼女を引き立たせる。


「メガネ、やめたのか?」

「あんなの、陰キャがつけるものだし」

「オマエは本当に陰キャが嫌いだな。だから陰キャなんだよ」

「は?」

「街歩くぞ」


 メリットは不満げだが、気にしもしない。


「桜の木があったら最高だがな」

「アンタ、(みかど)(くに)出身じゃないでしょ?」

「祖国みてーなものだ」

「アンタが祖国って言ったらそこのヒトがかわいそう」

「辛辣だねェ。便秘4日目と見る」

「は?」

「図星だ」無邪気な笑顔を浮かべる。

「クソガキにはこの苦労が分かんないでしょ」

「肌荒れ嫌うのにタバコ吸うようなヤツの悩みなんて、分からんよ」


 そんなこんなで険悪そうだが、存外仲が良いふたり組のようにも感じる。それはルーシの少々邪気の抜けた笑みからも感じ取れるかもしれない。


「クソガキ、一服しよ」

「禁煙したと言ったら?」

「あり得ない」

「ありえたら?」

「私も辞める。アンタに負けたくない」

「はッ。かわいいヤツめ。ほら、1本やるよ」


 ……というか、からかって遊んでいる感が強い。


「12ミリなんて吸えない」

「私に負けないんじゃないのか?」

「……分かった」


 どう見ても高校生な少女と小学生な幼女が喫煙所へ入り、誰もその異質さゆえに近寄れないのだから、この街の自浄作用は息もしていないのかもしれない。


 *


「ほらー。吐く寸前まで吸うなよ~。水飲んで落ち着け」

「いら……ごほっ……な……」

「意地っ張りなヤツは良いねェ。お姉ちゃんに会いたいな」


 ルーシは銀髪の髪をなびかせ、なんとなく女っぽく振る舞ってみる。だんだん女でいることが楽しくなってきたのだ。


「なに……女みたいに……振る舞ってる……の……ゲホッ……!!」

「私は女だ。なにが悪い」

「そもそもヒトじゃない……あー。落ち着いた」


 水を一気飲みして落ち着いたらしく、メリットは普段の不気味さを取り戻す。最前のほうが可愛らしいものがあったな、とルーシは彼女を見てニヤリと笑い思う。


「さて、陽キャのメリット。その高等なファッションは私には似合わねェが、さすがに良い服屋知っているんだろう? おめかししたい年頃になってきたんだ」

「アンタ、いつも制服だもんね」


 中学生みたいな服装している人間にそう言われるあたり、ルーシも落ちぶれたものだ。

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