拝啓、我が盟友たち
150センチ・40キロ。これはルーシ・スターリングという幼女の身長と体重である。
なお、いまルーシが担いでいる軽機関銃はだいたい20キロ前後で、体重の半分を占める。また身長の70パーセントほどの大きさでもある。
そしていま、その幼女はその銃を片手で連射していた。
「ケチ臭せェ仕事しやがって。てめェに資本主義の素晴らしさを教えてやりてェが、あいにくなことにそれを学んでいる時期でね。知ったかぶりになっちまうから勘弁してやるよ」
的になっていたのは男女混同の5人組。身体はかろうじて原型を留めており、しかし本体は穴のように見えるほどに破損している。
「ッたく……たまにはひとりで仕事して、昔を振り返るのも悪くねェな」
ルーシの暮らす国『ロスト・エンジェルス連邦共和国』は『技術と魔術の国』とも名高い。きょうもきょうとてマッド・サイエンティストたちが魔術と技術を混ぜて作ったであろうヒトを砂にしてしまう液体をルーシは取り出す。
「やはり自然は大切だな。離島を買って良かったよ。ただ原住民は邪魔だ。浄化しないとな」
彼女がいまいる場所、ルーシの個人所有の島だ。ロスト・エンジェルス政府から買い取った島である。とりあえず原住民にパンと資本主義を教えて、麻薬と武器を作らせようと思っていたが、いきなり過ぎる行動であるため反目が現れるのも無理はない。
「拝啓、我が盟友・友邦たちよ。21世紀最大の怪物はたぶんおれになったはずだが、殺しと薬物は結局罪に問われるらしく……」
なにやら語り始めた。だが、たまにはひとりで語らないとやっていられないときがある。それはルーシが前世の記憶を保持しているところから始まる。
「なんと10歳児くらいの幼女になっちまった。身体能力は衰えていねェが、いかんせんデカいものを使うのに苦労する。障がい者の気持ちがわかり、無名義で寄付したほどだ」
ルーシは18歳のとき、確かに死んだ。あれが嘘なわけがない。
「だが、案外この生活も味わい深い。相変わらず犯罪で金作っているが、最近は学校へも通っている。かわいい恋人もできた。女なんざ、全員ヘドが出る売女しかいなかった前世とは……偉れェ違いだ」
液体をかけ終わった。すこしずつ溶けていく。ルーシはなぜか十字を切る。自分で殺したくせに。
「我が兄弟・姉妹たち。地獄での再開はもうすこし時間がかかりそうだな。手土産に神とやらの首を持っていくつもりだ。この国にいれば、神すらも殺せる気がするんだ。この銀河に二度と作れないような歴史、埋め込んでやるよ」
砂になった遺体を埋めていく。木の破片で十字架を作るあたり、小バカにしているのか悼んでいるのかわからない。ルーシの考えていることなんて、ルーシにだってわからない世界だ。
「さてと、帰るか。ああ、服は溶けねェんだな。見せしめにちょうど良い。村へ投げておこう」
ルーシは暴力の化身だ。恐るべき犯罪者で、独裁国家の指導者でもないのに、彼らより多くの人間を殺してきた。
そんな無法者が『銀髪』で『碧眼』の『幼女』になったらどうなるか。これは、その物話である。