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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第四幕 共に過ごした時間が、すべて宝物だったと笑えるように
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メイド・イン・ヘブン

 また、ルーシとアークは入院している。つい数週間前隣にいた者がまた隣にいる。


「なあ。やはりオマエは切れ者だな。あれだけの指示でよく最適解を出せたものだ」

「そう?」

「オマエがいなければ、私たちは全員死んでいただろうさ」


 今回はふたりだけではない。メリットも一緒だ。

 ちなみに、1番傷を負っていそうなクールとジョンは入院の必要性なしと判断されたらしいので、あのふたりはだいぶ遠いところにいるようだ。


「な、メリット」

「ゴスロリならあの絶壁に着させて」

「なんの話だよ……ああ、あれか。だめだ。オマエらふたりとも着ろ。もうじきキャメルも来るから、貸してもらえ」


 メリットはガクッとうなだれた。「彼氏ができなければ一週間ゴスロリ生活」という賭け事をしていたわけだが、あの激戦でメリットがなにかできるわけもなく、当然のようにメントへも彼氏はできなかった。そのため、ふたりの生活は絶望に彩られることが決まった。


「それで? キャメルへの返事は決まったのかい?」

「…………そういえば」

「忘れていたのかい?」

「いや、幼児退行起こしてマゾヒストになる幼なじみ見るのは嫌だなぁって」

「だからヤクネタだっていっただろ? ま、男は女悦ばせてなんぼだ。たまには女の子扱いしてくれってキャメルを説得させるしかねェな?」


 アークもうなだれる。1番の厄介事はルーシ自身だが、当人がそれを意図して起こしているから、いよいよ止められない。


「お、来たぜ」

「誰が──」


 先頭打者を務めるのは、クールたちだった。


「おつかれ、親愛なる生意気なガキども」

「いい方がよくないなぁ」ルーシはニヤける。


「褒めてるんだよ! これでもな!」笑いながら、「アーク。言いたいことは多いんだけども、ジョンとは仲直りした。今度おれらで飲み行こうぜ」


「じゃんけんで決めたと?」

「おれの勝ちだった。やっぱおれは最強だ」


 単純な人間が羨ましくてたまらないときがある。

 クールはルーシにタバコを渡し、ふたり揃って喫煙を始める。ここが病院であることを知らないのだろうか。


「あ……」

「メリット。タール高けェぞ?」

「でも吸いたい……」

「ほらよ」


 メリットの入れ墨だらけの身体を見たクールは、無邪気に笑う。


「最近はこんな子でも墨入れるんだな~」

「あ、はい……すみません」

「やめといて。メリットはお父様みたいな人が苦手らしい」


 一応ルーシがフォローする。別にクールも他意があって発言したわけではないだろうが。


「さてと。仕事はおれたちが回しておくから、入院生活がんばれよ。ルーシ」


 携帯灰皿にタバコを捨て、クールは手を振って去っていった。


「MIHの連中が来るかね」


 そう口にしたとき、言霊が作動したのか、病室のドアが開かれた。


「わお、大所帯だな」


 キャメル、メント、ホープ、アロマ、シエスタが現れた。


「オマエら仲良いのか?」

「良いわけ、ないだろ? ホープはまあ良いけど、その他は他人か嫌いなヤツだ」


 メントは、主にキャメルをにらみながらそう告げる。


「お互い様よ。私も貴方みたいな子は嫌いだわ」

「キャメルお姉ちゃん、恋敵ってヤツですか?」


 ルーシは嫌味っぽくタバコを咥えながらいう。


「ルーシちゃん、なにいってるのよ。もうアークと私は付き合ってるわ」

「あ? アークだってオマエみたいなヤツお断りだろ」


 ルーシはもはや爆笑するのを隠そうともしない。だいぶ傷口が開きそうなほど笑いちらしている。


「アーク、オマエ苦労耐えなさそうだな~」

「同意。昔から女運ねえもんな」


 シエスタとアロマはアークを不憫に感じた。寄りにもよってこのふたりから付け狙われるとは、アークも運がない。


「メント、喧嘩しないほうが……」

「あ? ……ああ、わかったよ」


 メントのストッパーはホープが努めているらしい。


「でも、元気そうで安心したよ。アークも変な幼女も」


 シエスタはこのままでは病院が荒らされると感じたのか、撤収するためにそれっぽいセリフを吐く。


「ま、私たちは無敵だからな」

「なに言ってるんだか。さて。帰るぞ、みんな。というか、アネキとメントは別々に帰ってくれ。面倒見切れねェ」


 このメンバーを選んだシエスタの失敗だろう。

 ちゃんと話を交わすのはまた今度だ。


「うん、じゃね」


 また人が颯爽と現れ一瞬で帰っていった。


 ルーシたちは、少々騒がしくて落ち着く空間が静まり返ったことに寂しさを覚える。


「そういえば、パーラとあのピンク髪の人は──」


 ルーシはとっさに身構え始めた。なにかを検知したのだろう。

 それは一瞬でルーシの上に乗っかる。


「ルーシさん!! 添い寝1日ですよね!?」


 ルーシは無言で拳銃を引き抜き、彼女の頭に向ける。


「退院してからだ。こちらは身体痛くてオマエ支えるのもキツイんだよ。わかったか?」

「え、優しい……」


 それで良いのか、そうアークとメリットは同じことを思う。


「わかったらどけ……ヘーラー」


 ヘーラーが興奮のあまりルーシにキスしようとしたため、ルーシは病院内で銃を撃つという珍しい体験をしたのだった。

 見舞客が病人になったところで、ルーシたちはひとりの獣娘の存在に気がつく。


「ルーちゃん……」


 ルーシは危うい歩き方でその獣娘に近づき、暖かくハグをした。


「なにもいうな。私が始めたことなんだ。なにも気負うことはない」


 メリットはルーシのタバコをもう1本引き抜き、鼻で笑う。


「どっちがクソガキなんだか」


 余計な言葉はいらない。ふたりだけの時間が流れる。


「まあ、なにもいわないでおこうよ」


 ドラマか映画のワンシーンである。アークも空気を読んで、苦笑いを浮かべるだけだ。


「なあ。パーラ、アーク、メリット。オマエらと出会えて良かったよ。オマエらと一緒に挑めて良かったよ。嘘偽りでもなく、ここに来られて本当に良かった」

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