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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第四幕 共に過ごした時間が、すべて宝物だったと笑えるように
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金鷲の雷槌(*)

 アークは首を縦にふる。

 その覚悟に満足したのか、ポールモールは彼の肩を叩いて、最大の戦地へ向かう。


 金鷲の雷槌が響いていた。

 すべてを葬り去る雷槌……とおもいきや、案外照準は絞れているようだ。

 標的はルーシの友人たちに向けられていた。

 アークはがむしゃらに走り、まずメントと青髪の少女に忍び寄る雷を魔力で静止した。


「アーク!? なんでここに──!?」

「良いから!! 伏せて! 手が来たら握って! ここにいたら必ず死ぬ!!」


 必死の説得だ。言葉も単調かつ短く済ませる。


「わ、わかった!」


 青髪の少女はその剣幕に圧倒され、了承した。


 続いてアークはこんな状況下でも動けないふたりを見つける。メリットとピンク髪の女だ。どうやら治療を行っていたようである。


「ふたりとも動けないの!?」

「……そんなにキレるんだったら動く」

「あのー……ルーシさんはなにをしようとしているんでしょうか?」

「すべての問題を解決する問題を起こそうとしてます! 説明はそれだけで充分でしょう!?」


 頷かざるを得ない。ピンク髪の女はメリットの手を握り、どこかへ消えていった。


「ルーシ……、もうすこし自分を大切にしたほうが良いよ。みんなが君のために動いてるんだ。それなのに、君は自分を大切にしないんだから」


 憂いは断った。アークはその金鷲の翼が黒い塊を食い散らかしたのを確認し、最後の力を振り絞る。


「最後に勝るのは愛なんかじゃない。それはきっと……」


 この戦争をどう終わらせるのか、ルーシは昔から考えていたはずだ。

 始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい戦争を。

 ルーシ自体が行っている仕事的にも、なにか嫌な予感が働くパーラという恋人的にも。


「人間の持つ、純粋な暴力性。君はそう言いたかったに違いない。だったらボクはこう答える」


 金鷲の翼の中心部にいるルーシの意識は、ない。

 だが、ルーシがアークに助けられることを良しとするか? 自分が誰かを助けても、誰かが自分を助けることに屈辱感すら覚えるのがルーシという人間だ。


「最後に勝つものは……自分自身だ。自分の意思なんだよ。そうでしょ、ルーシ……!!」


 意識だって飛んでいる。いまのルーシはなにもできない。ただ責任を放棄してふて寝する存在にすぎない。

 それでも、アークの考えをルーシが理解していれば、ルーシは最終手段の最終手段を使ってでも、この場をひとりで切り抜けられる。

 その瞬間。


 ノース・ロスト・エンジェルスが大雷鳴とともに再生されていった。

 その雷は破壊のためでなく、再生のために存在する。


「……心配したよ。やっぱりキミは」


 暗い空のなかから現れたのは、銀髪碧眼の幼女だった。

 ルーシ・スターリングは最後の最後で自分を取り戻したのだ。


「……死なねェものだな。地獄にいる盟友たちよ、再開はまた今度だ」


 金鷲の翼が静まり返っていく。それはつまり、ルーシがすべての問題を解決したということだ。

 最初から最後まで、すべては身長一五〇センチの幼女の掌に収められていた。

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