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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第四幕 共に過ごした時間が、すべて宝物だったと笑えるように
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鬼畜に愛の花束を

 ──ルーちゃんはワタシを見てくれる。それだけで優しいんだよ。


 ──やり捨てされるとは思わねェのか?


 ──それでも良いんだよ。


 ルーシ・スターリングは過去の会話を思い出し、鼻でふっと笑う。


「……おまえは頭の良いヤツだなぁ。オレは本気でやり捨てしようとしていたんだぞ? だがあの言葉を聞いてから、それができなくなっちまった」


 鬼畜を極めるルーシを愛でつなぎとめたパーラは、ひょっとしたら相当な豪傑なのかもしれない。

 最終戦闘。パーラを正気に戻せるはずの術式は打ち終わった。あとは心ごと身体でぶつかって砕けるだけだ。


「……死にたくねェ? 今更そんな御託が通用するわけない。たくさん殺してきた。たくさん地獄へ叩き落としてきた。だったらおれに生きていることは似合わねェ。死と直面して、それで死んでしまっても良いんだ」


 紫色の虹彩が妖しく光る中、ルーシは人生最後になるかもしれないタバコを携帯灰皿に落とす。

 そして、背中には永久不滅の黒鷲の翼が広がる。


「全部おしまいだ」


 空を駆けていく。

 その姿をメリットはたしかに見ていた。


「……かっこつけてなにがしたいんだか」


 ヘーラーから治療を受けていたメリットは、彼女の手を振り払う。ヘーラーは怪訝そうな顔になるが、メリットが指差すパーラを中心とする塊を見て、彼女も納得する。


「ルーシさん……。意識が」

「……あのクソガキは魔力に身体の自由を任せてる。さっきの術式でだいぶ魔力をもってかれたはず。アイツ、恋人の前でカッコつけて死ぬつもりみたい」

「だ、だったら止めないと!! ルーシさんが死んじゃう!!」

「……もう止められない。ラスト・ダンスを眺めるほかない」


 それでもなお、メリットはルーシを助けようと術式を展開していた。それが無駄な抵抗だと知りながら、メリットはこのときだけはルーシ最大の盟友としていようとしたのだ。


「スパイなんていねえじゃねえか!! ルーシ──!?」


 メントとホープがトンボ返りしてくる。どうやら騙されたらしい。


「スパイだって動けないでしょうに。クソガキはアンタらを遠ざけるために嘘ついたんでしょ」

「……おめえ、よく冷静でいられるな。翼以外なんも見えねえのに」

「慌てればクソガキが死なないの? お姫様が死なないと? 冷静であるように努められないんなら、この場にいる資格もない」


 それはメリットなりの覚悟だった。


「とりあえず……ルーシの援護をしよう。街も見る影ないしね」


 ホープは糸を展開し、黒い鷲の翼へ導かれるように、空を舞った。


「えっ!? なんで空をっ!?」


 それに驚いたのはホープだった。ルーシへ極力瓦礫が飛んでこないように糸を伸ばしたはずだったのだが、なぜか彼女の糸はルーシの翼をつかみ、ホープを空に飛び跳ねさせた。


「なにかが起きてるな……。あの黒い翼がなにかを引き起こしてるんだ」


 メントは怪訝な表情で、空を見る。

 存在しない現象が荒ぶり、それがほかの魔術使いにも影響を与え始めているのだ。

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