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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第四幕 共に過ごした時間が、すべて宝物だったと笑えるように
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プランはふたつ

 ヘーラーは怪訝そうな顔になる。ルーシは気にする素振りも見せずに続ける。


「すべての戦争を終わらせる戦争……ってところかね。考えたんだ。パーラがなぜ『実力と陰謀の学校』に属していたのかを」


 メイド・イン・ヘブン学園。通称MIH学園。実力主義の学校で、弱者には文字通り人権など存在しない。美少年の髪がライターで焼かれるような学校だ。入学して初登校したときから、その闇は垣間見えていた。


「アイツは弱い。魔術は使えず、魔力もなく、頭も良くない。そんな被差別民があの空間でメントのようなヤツがいるからと、いじめに遭わないはずがない」


 パーラの親友であるメントは対照的に実力者だ。だが、メントが常にパーラの隣にいるわけではない。パーラと始めて話したとき、メントは別のクラスにいた。


「なら、なにがアイツを守る? 女子のいじめは苛烈だ。男を交えて強姦されていてもおかしくない。ただでさえでも裏表のないヤツだから、嫌われるのは目に見えている」

「……隠された力が無自覚のうちにパーラさんを守っていたと?」

「そのとおり。無法者は恐れられてなんぼの世界だが、アイツは自覚なく恐れられていた。羨ましいよ。まあ、そのデタントを超えたヤツらもいたが……ソイツらは耐えることに限界を覚えたんだろう」


 人間、案外直感で動く生き物だ。パーラがメント以外の生徒と溝があったのは、なにもその性格が起因したわけではない。いつか爆発するかもしれない時限爆弾に近づこうとする愚か者などいないのだ。


「そして、爆弾に着火したのはおれだ」


 こうやって話している間にも、ルーシはあまり暖かいとはいえないロスト・エンジェルスにて汗を垂らしている。つまりはパーラのバグを取り除いているのだ。


「魔力を与えればその分を放出する。拒絶反応術式ってところだな。アークとおれが闘ったとき、パーラも間違いなくあおりを受けていたはずだ」


 あれだけの魔力を放出しながら闘って、拒絶を起こさないはずがない。そしてその演台を仕掛けた張本人はルーシ自身だ。


「だからすべての戦争が終わる。プランはふたつ。このままロスト・エンジェルスが沈んでいくか、このふざけた10歳の幼女が英雄となるかだ」

「……死ぬつもりではないと?」

「自分を殺せる者に怖いものはない。だが、おれは怖い。なら死ねない。それだけだ」


 ヘーラーのもとへも途方のない処理が送られてくるが、彼女もまた天使としての矜持を守るべく、弱音を吐かない。


「1分半か……。残り1800億。どうしたものか」


 ルーシは静まり返っていた。いつもの笑顔がない。『自分を殺せない』者として、死が間近に来ていることを悟りつつあるのだ。


 そんなとき、


「ゲホッ!! ありがとよ優等生!!」

「お構いなく!!」


 メントとホープが廃墟から蘇った。


「墓場はまだ似合わねェな、おめェら」

「あったりめえだ!! パーラ!! いますぐ行くぞ──」

「だめだ。魔力を与えるな」

「あぁ!? 親友がこんな目にあっててもなんもしちゃいけねえのかよ!?」

「こっちは恋人がこんな目にあっているんだ!! 冷静になれ!!」

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