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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第三幕 すべての陰謀を終わらせる陰謀、壮麗祭

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壮麗祭、開幕

 パーラは珍しく釘を刺す。よほど気に入ったのだろう。


「変なこととは変なこと」

「珍しく賛同だな。変なこという人間に見えるのか?」

「自覚ねェの? こりゃ重症だ」

「だよね! ホープちゃんのことけなすような人たちなのに!」

「……あ? ホープ?」


 メントの言葉を皮切りに、メリットも眉を細める。

 そんななか、浮足立つような足取りで人が現れた。


「ぱ、パーラちゃん……。うちもう帰りたいよ……」

「大丈夫! このふたりは変人だけど、そんなに悪い人たちじゃないから!」


 ルーシに比べれば悪い人間などいないというのに。恋は盲目とはこういった現象を指すのであろう。


「げっ……。ランクAかよ」

「エリート様が出来損ないどもをバカにしにきた?」


 ルーシはホープと目を合わせ、怯える目つきを察したのか、とりあえず胃薬を渡した。


「悪い成分は入っていない。コイツらとつるむのなら、胃は10個あっても足りねェくらいだしな」


「え……あ、ありがとうございます」

「シエスタからオマエの面倒を任されているんだ。良い恋人に巡り会えたな。あんなに人のこと想えるヤツ、そうはいねェぞ?」

「こ、恋人なんて……」


「もう結婚式も捉えているか」冗談交じりに、「さーて、貧乳を言い訳にするお二方。ホープは貧乳だが、恋人以上の関係性のヤツがいるぞ? 自分の努力不足を棚に上げないで行動したらどうだい? ちなみにふたりとも彼氏作れなかった場合、仲良くふたりで一週間ゴスロリ生活だ。それじゃ、よーい……スタート!」


「うおおおお!! 男はどこじゃああああ!!」

「ゴスロリなんて着ないぞおおおおお!!」


 性欲と恐怖に駆られる少女ふたりはどこかへ消えていった。


 ルーシは煙草を携帯灰皿に捨てて、

「行くぞ。開幕宣言だ」

 パーラとホープの腕を引っ張ってMIH学園の中心地へ向かっていく。


「ルーちゃんのお父さんが来るんでしょ!? かっこいい!?」

「生き様も顔もスタイルも最高だぜ! ホープ、壮麗祭へは出るのか?」

「ま、まだ迷ってる、ます……」

「好きにすれば良いが、身体動かすのも案外楽しいぞ? あと敬語やめろ。そういうのは目上の人間へ使う言葉だ。私とオマエに格差はないだろう?」

「あ、は……うん」

「よっしゃ。開幕だ」


 *


 演説ははじまったばかりだった。

 クールは余裕たっぷりの表情で、学生たちへと語りかけている。


「──良い若けェもんたちが大人の顔色伺ってるんじゃねェ!! ランクSが歴史上ふたりしかいない!? それが目の前にいる!? だからなんなんだよ!! あンとき、ランク・セブン・スターズだったおれやジョンはすっかりおっさんだ! あのときみたいに1日10回もヤれなくなった! 5回が限界だ!」

「……アイツ、演説うまいんだか下手なんだか分からねェな」


 ルーシは母国語でそうつぶやく。パーラとホープがその意味を捉えないためだ。


「もう男っていう生き物としては下り坂って意味だぞ!? 歳を食うってのはそういうことだ! だが、諸君らは二度と帰ってこない青春を謳歌してェはずだ!! 野郎ども!! 良い女抱きてェだろ!? 女子の諸君!! 良い男と付き合いてェだろ!? ならば……勝つしかないだろうが!!」


 抑揚がうまい。内容はひどいが、ちゃんとした演説用の紙を渡せばかなりの腕前だろう。もっとも、コイツの場合は用紙どおりに読むことはないだろうが。


「……おっと、これ以上は禁句のようだ。ともかく、ひとつだけ宣言して終わる。ことし、ランク・セブン・スターズは最大ふたり生まれるとな」


 突然のサプライズに生徒たちは湧く。あのクール・レイノルズがそう宣言したのだから。


「ひとつ! おれの娘、ルーシに勝ったヤツは問答無用でランクS!! もうひとつ!! この大会の勝者はランクSへねじ込んで見せる!! おれを信じろ!!」


 異様な雰囲気が流れはじめる。主に教員たちへ。


「ちょっと待て!! そんなこと一言もいってないぞ!?」

「ランクSの権威はどうなるんだ!?」

「うるせェ!! おれがそういうんだから良いんだよ!!」


 教員たちの慌てようを見る限り、最初から確認などとっていなかったらしい。本当にクールらしい宣言である。


「以上!! 武運を祈るぜクソガキどもォ!!」


 嵐のような演説が終わった。


「る、ルーちゃん……。お父さんすごくやばいこといってない?」

「盛り上がって結構なことだろ」

「あの……ルーシさんを潰した人がランクSになるんですよね?」

「そうだろうな」淡泊な返しである。

「も、もっと慌てたほうが良いんじゃないんでしゅ……すか」

「だから、敬語やめな。6歳上だろ? ホープ」


 そもそも気にしてすらいない様子であった。自分の首に途方も無い賞金がかかっていようと、それをプレッシャーに感じないのだろう。究極的な鈍さともいえるし、それだけ自分の実力に自信を持っているともいえる。


「ま、盛り上がることは良いことだ。愛と平和の守護神として、未来ある若者が血気盛んに挑む姿を見るのも楽しいじゃねェか」

「愛と平和を崩してるのはルーちゃんだと思うけどっ!?」

「文句は父親にいってくれ。さて、きょうはランクDとCのヤツらが闘うんだよな? パーラは出ないのか?」


 話を適当にそらす。これでも反応し返してくれるのだから、パーラの性格は良い。


「え、うん!! 女子生徒でランクC・Dの生徒に出席義務はないからね。メリットちゃんの応援しておくよ!!」

「じゃあ私はアークが勝つほうに賭けようかね。ホープ、どう思う?」

「……正直、メリットさんが勝つのは確定だと思う。アークくんのことは良く知らないけど、ルーシさ……ルーシがそういうんなら、それだけの実力はあるはず」


 無難な返しだが、問題がない返しをできない連中だらけなので、むしろ貴重に感じる。


「んじゃ、ホープ。オマエも出なよ」

「えっ? あ、え?」

「ランクAが出ないと盛り上がらねェだろ? 大丈夫、もうランクAには女子生徒しかいない」

「……ウィンストンは?」パーラはいぶかる。


「アイツは出ない。確定事項だ。ランクA勢はキャメルお姉ちゃんにラークって後輩、それにホープ。ピアニッシモって先輩は知らねェけど、おそらくまともに闘うつもりはないだろうさ」ルーシはニヤリと笑い、「さあ、開幕だ。すべての問題に決着をつけてやろうぜ」

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