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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第三幕 すべての陰謀を終わらせる陰謀、壮麗祭
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親友(*)

「それははたして本音なの?」

「ああ、本音じゃねェかもな」あっさりだった。

「人間の本質なんてわかんないよ。わかることは、どんな人も孤独と不安を抱えてることくらいだし」


 ルーシは、なにを考えているかわからない笑顔を浮かべるだけだった。


 *


 メントはひどく落ち込んでいた。

 なんであんなことをしたのか。なんで自分の救いの手を差し出してきた者を傷つけてしまったのか。

 壮麗祭前日ということもあり、学校は開いているものの授業はないため、メントはひとりで悩み続けていた

 そんな彼女の家のインターホンが鳴った。

 カメラ越しに相手を見る。相手は、紛れもない親友だった。


「……落ち込んでるところ見られたって仕方ねえけど、アイツにだけは弱いところを見せられねえよ」


 オートロックを解除し、メントはパーラを向かい入れる。


「久しぶり~!! メントちゃん!! ねえねえ、ルーちゃんと最近会った?」

「いや、会ってねえけど」


 意外な発言だった。なんらかの負い目を感じていると思っていたが、彼女にそんな心配は不要なのかもしれない。


「じゃあメントちゃんに話す。私、お金稼がなきゃいけなくなっちゃったんだよね~」

「……ああ」


「ルーちゃんのお父さんに聞いたんだけど、私のお父さんとお母さんが病死しちゃったんだって。だからMIH学園の授業料とか払わないといけないじゃん? ねえ、一緒に働かない?」

「……考えとくよ」


 ルーシとその父親は手を回したようである。パーラの記憶を一部抹消し、その上で1番精神的なダメージがないように内容を変えたのだ。

 だから、パーラはレイプされたことも、両親が惨殺されたことも、ルーシが命を賭してパーラを生かしたことも知らない。

 しかし、こういうのんきな性格のほうが彼女らしい。こんな腐敗臭しかしない世界では、パーラのような獣娘(けものむすめ)がいることで、多少たりともメントたちもやすらぎを得られるのだ。


「でもよ、仕事たってオマエなにができるんだよ?」

「そこなんだよね~……。いままで働いたことないし、特技もないしさ」

「間違っちゃいないけど」

「そこは擁護してよね~!!」パーラは無邪気な笑顔を浮かべた。

「まあ、あれだな。メイド喫茶とかどうだ? オタク知識も活かせるし、オマエたぶん人一番人気になれると思う」

「ん~!! ありよりのあり!! さっそく電話かけてみる!!」

「そんなに金困ってるのか?」

「財布のなかに二〇メニーしか入ってないもん。口座のなかのお金は学費用だし、生活費が足りないよ~」

「……ウチ住むか? 飯くらいならタダで作ってやるし」

「えっ!! めっちゃありがたいんだけど!! でもさ、メントちゃんってひとり暮らしだよね? 私実家暮らしで実家の支払い済んでるから、むしろウチにおいでよ」

「家賃代が浮くのはありがたいな。わかった。一緒に住もうぜ」


「本当!? うれしい!! 最近さ、嫌な夢ばっか見るんだ……。お父さんとお母さんが殺されるの。お母さんは犯されて、私も散々殴られてレイプされて……。だから、誰かと一緒にいたいんだ」


 顛末を知っているメントは、無言でパーラを抱きしめた。

 普段はMIH学園の一員として、その迫力に負けないよう強気に振る舞っている少女は、実のところ些細なことで泣いてしまうことがあり、さらにパーラのこととなれば、彼女は感情を制御できないのだ。


「どしたの? いきなり抱きしめてきて。照れちゃうよ~」

「……なんでもねえよ」


 パーラは微笑みを浮かべ、


「辛いことも楽しいことも、分け合うのが親友だもんね」

「……そうだ。あたしたちは親友なんだ」

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