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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第三幕 すべての陰謀を終わらせる陰謀、壮麗祭
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銀髪ロリと"イイこと"

 アーク・ロイヤルの身体はまったく動かない。

 当たり前といえば当たり前である。あの大爆発のなか、生きていたことが奇跡だと受け入れるほかない。

 そんなアークの悩みは、まったく動かない身体だけではなかったりする。


「なー、頼むよー。魔力くれよー。銀髪ロリとイイことしてェだろー?」

「ねぇ、これで何回目か教えようか? 通算100回目だよ」


「そんな女々しいこというなよー。ウブなヤツだなー。ほら、オマエ胸と尻どっちが好き? 触らせるくれェタダだから触らせてやろうかー?」

「だいたい、ボクロリコンじゃないって100回いってるんだけどね」

「え? ロリコンじゃねェのか? そりゃ驚いた。オマエみてーなしまらねェ顔つきしたヤツは、みんなロリコンだと思っていたが、どうやら私の見当違いだったらしい……。ま! オマエはとても優しいヤツだから、身体の反応なくても挿入しちまえばこっちのもの──」


 終始こんな感じである。この銀髪碧眼の幼女は、ことあることにアークへ迫ってくる。しかも目的が曖昧すぎる。魔力がほしいというのが、どういう意味なのかわからないのだ。


「あー! もうわかったよ!! 好きにして良いよ!! この状況見てどっちが捕まるかなんて考える必要ないしね!! ルーシ!!」


 ルーシはアークにまたがっていた。というか股間を弄っていた。しかも本気だ。アークとてそういう経験がないわけではないので、この幼女が極端に早熟なのは嫌というほど理解できた。


「なーにキレているんだい? オマエの童顔と私じゃ、たぶんバレねェよ。ま……胸のなかに引っかかる女がいるんなら仕方ねェ。だが、千載一遇の好機を逃したわけでもある。10歳の幼女とヤるなんて、なかなかできないしさ」

「なーんで、ボクをロリコン扱いしたがるかなぁ……?」

「だってオマエ、キャメルに惚れられていたらしいし」

「……え? なんでそれを」


「ん? 知りてェか?」ルーシは娼婦のように腰を上下に動かし、「まあ、たいした話ではないからタダで教えてやるが……私の父親がクール・レイノルズなのは、いつだか話しただろう? その両者から聞いたんだ。兄妹ってのは似るものだな?」またもや股間を触り、「だが、キャメルにコイツは反応しなかったと。オマエ、本当に異性愛者? ひょっとして同性愛者? ほら、無償の愛を捧げている私にいえよ~」


 アークは口だけが動く状態だ。表情筋もうまく使えない。

 なので、表情を変えず、しかし語気でそれが伝わるようにいう。


「……まぁ、女の子みたいだね、って言われるのはうれしい」


 誰にもいったことのない秘密である。

 ルーシはふっ、と鼻で笑い、アークの頭をなでた。


「それならしゃーねェな。だがよ、キャメルはそういって引き下がる女でもねェぞ? 器が小せェからな。自分の考えたことこそ絶対的な事実であり、それ以外はたとえ当人が主張していても認めようとはしない。だろ?」

「……キャメルをそんなに悪くいわないで。傷つきやすい子なんだ」

「1番傷つけているオマエのいえることじゃないな」

「……ボクにどうしろっていいたいのさ?」

「ケジメをつけろ」


 端的かつ、背筋が凍るような言葉であった。


「アイツは存在自体が地雷だ。踏みたくもねェのに、踏んだら爆発する。そして、地雷原に飛び込んだのはオマエだ。私がなにか間違ったこといったか?」


「……それがなんだっていうんだ」


「オマエ、考えが眠てェんだよ。老人みてーに安直な考えをもっている。それがガキでしかない女と関わったとき、なにが起きるかわかっているのか? まァ……説教臭せェのも嫌いでね。ともかく、魔力くれ」


 この少女はいつもなにを考えているのか悟らせないように振る舞う。人生そのものが演技のようなものなのだろう。きっと、素のルーシを知っている人なんて誰もいないのであろう。

 そんな愉快な幼女による、娼婦のモノマネはまだ続く。


「……さっきから魔力くれってうるさいけどさ、具体的にはどうやって魔力を渡すの? それがわかんないと、ボクだってどうしようもないよ」


「ああ……それがだな……」


 ルーシはたまらなく愉快なことが起きたかのような、いたずらをする子どものような笑みを浮かべ、

「私にもわからねェんだ」

 眠てェことをいってきた。


「ま、あれだよ、あれ。人間なんて損得か性欲でしか生きていないんだから、両方とも満たせばいけるだろって考えたんだ」

「……ルーシ、キミは真人間になる方法を考えたほうが良い。たとえ友だちだろうと、いまの言葉にはすこし引くよ? 女の子らしく振る舞うべきじゃない?」

「意味のないことはしねェ主義なもので。あー。クソ。煙草吸いてェな。ひさびさにキメセクでも……あー、パーラにそんな危険な真似させられねェな」

「わかった。まずは普通の人になろう? そしたら魔力分けてあげるから」


 幼児をあやすような 言い方……いや、これが正しい反応である。ルーシは10歳の子どもなのだから。


「普通の人間は一度抱いただけの女を救うために命捨てたりしねェし、まったく知らねェ他人のために自殺に近いことしねェよ。私たち普通じゃねェんだ。オマエもわかっているよな? だから私は──」

「そうやって逃げるんだ? もうパーラと関わる気なんてない、くらいなこと言って」アークはなぜか動くようになってきた腕でルーシの頭をなで、「自分でも言動と行動が矛盾してることを知ってても、それでも自分が絶対に傷つかないほうへ逃げてる。キミはきっとこの言葉にたいする詭弁なんていくらでも思いつくだろうけど、それは結局逃げでしかないことに変わりある?」

「……おもしれェこというじゃねェか。私が逃げていると」


 ルーシはなんとも苛烈な、敵意しかないような笑顔を浮かべ、

「そうだ。私は逃げている。楽なほうにな。それに気がつけるなんて素敵じゃないか。やはり能力の一部を分けただけはあるな。健常であるうちに、オマエとメリットへスキルを与えたのは正解だった」

 されど優しげな言葉遣いだった。

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