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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十二幕 成功に目が眩んで

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仮初めの平和

 ジョンはアークの肩を叩き、忠告するように懸念を伝えてきた。悲観主義的なアークは、ガクリとうなだれ、糸が切れたかのごとく肩を落とす。


「もし守護天使級が本国へ乗り込んできたら、どれほどのヒトが死ぬんでしょうね」

「質にもよるわな。ただ、海軍と宇宙空軍がまず侵入させねェ」ジョンは、顔色の悪くなってきたアークを気遣うような態度である。「それでもなお侵入してくるのなら、おれらが出張るしかない。セブン・スターズの条件、覚えてるか?」

「単独で守護天使を倒せる存在、ですよね」

「その通り。おれら7人で、武人皇帝お付きの守護天使どもを片付けるほかない」


 *


 戦闘のプロである男たちが懸念を覚える中、大統領と軍の最高司令部は楽観的だった。不倶戴天のブリタニカに事実上の勝利を収め、対ガリア戦争の計画は全くといって良いほど練られていない。


 その勝利を噛み締め、ルーシは戦闘服から私服の長袖Tシャツとデニムに着替えて街を歩く。


「いやー、キャメルお姉ちゃんとパーラは同じ病院にいるのか。顔拝みに行こうかね」


 政府に不安を伝えて戦争経済へと移行できる権力を持ち、また伝えなければならないルーシですら浮かれている始末だった。ロスト・エンジェルスは、一瞬の講和の所為で緩み始めている。19世紀最初期に、安寧な欧州諸国など存在しないのに。


「でも、まずはタバコだな」


 ルーシは喫煙所みたいに吸い殻が大量に落ちている路地裏へ向かい、そこで良く見慣れた顔と全く知らない顔を見上げた。


(メリット、まだ女性風俗使っているのか。話しかけないほうが良いな)


 黒髪ショートヘアの女子高生は、タバコ片手に見慣れない笑みを浮かべていた。

 いかにもお水系の男性と楽しそうに談笑しているので、ルーシは気配を消し、タバコを呑み始める。別にここで吸うこともないが、人間観察というものは実に楽しい。それに、どうせこの場に似合わない銀髪の幼女がいることなんて、すぐに気づかれるだろう。


 それから5分。タバコの3分の2がなくなった。メリットは未だルーシに気が付かず。彼女と対面する男はこちらを見てきたので、メガネをかけた少女もすっかりピンク脳に染まったらしい。


(ッたく、お姉ちゃんが記憶喪失していると思ったら、オマエが性依存症になるのかい。この島国、だいぶ終わっちゃいないか?)


 先進化していくとなぜか当たる壁に、ロスト・エンジェルスもまたぶつかっている。


 結局、ルーシはメリットと言葉をかわさず去っていった。子どもらしい柔らかな唇を尖らせ、ルーシは不満げに病院へと向かおうとした。


 その最中、


「おぉ。死体が息吸って吐いて歩いてやがる」


 アルビノの少年が前から現れた。ルーシは高身長な少年を見上げ、ニヤッと口角を上げる。


「そして、その死体は既存の物理法則をも塗り替えちまう。久しいな、シエスタ」

「へっ。ホープから聞いてはいたけど、相変わらず不思議なヤツだ。ルーシ」


 まず、ルーシが握手すべく手を差し出した。シエスタはなんら迷うことなく、白すぎる筋肉質な腕を下げ、手同士を固く握り合う。


「で、なにしていたんだい?」

「アネキの見舞いに行こうと思っただけだよ」

「キャメルお姉ちゃんのこと?」

「そうそう。アネキ、記憶喪失になって学校へも来ねェんだ。それじゃ寂しいだろ?」

「なぁ、ふたつ聞きたいことがある」

「なんだ?」

「なんでオマエ、お姉ちゃんをアネキって呼んでいるの? 同い年だろ」

「アネキって姉御肌だから、勝手にそう呼ぶようになっちまった」

「オマエらしい理由だよ。で、ふたつ目。こっちのほうが重たい」ルーシはその碧く大きな目でシエスタを見据える。「お姉ちゃんは、なんで記憶喪失になったんだ?」

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