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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十二幕 成功に目が眩んで
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煌めきのなくなった戦争

「アーク、気分は落ち着いたかい?」


 ルーシは白々しく、アークに紅茶を差し出す。戦争終了の知らせを受け、帰投する最中の話出ある。


「……、落ち着くと思う?」

「オマエは本当に、眠たいほど甘いヤツだな」ルーシは葉巻をくわえる。「軍人は国益だけを追求すれば良い。それに〝ひとりの死は悲劇だが、100万人の死は書類上の数字にしか過ぎない〟とも言うんだよ。分かったら顔上げろ。暗い顔していたら、戦勝パレードで訝られるぞ」

「そんなの、欺瞞だ」アークは顔を上げ、ルーシの目を見据える。「〝サテライト・ボンバ〟なんて大量殺戮兵器を使っておいて、平然と葉巻くわえられる君の気持ちは、正直一生分かるとは思えない」

「いつから軍人が聖者になったんだい? どんな手段を使ってでも、国を勝たせる。それが、腐ってもセブン・スターズであるオマエの役割だろう」

「……もう良い。ひとりにしてくれ」

「あぁ」あっさり応じた。


 アークの潜水艦の一室からルーシがいなくなり、アークは罪の意識で押しつぶされそうになった。ロスト・エンジェルスは、取り返しのつかない戦争犯罪をしてしまったのだ。たとえこの犯罪を裁く機関がないとしても、罪から逃れることはできない。


「……もう、王様や皇帝が国家の雌雄を懸けて闘う、なんて時代は終わったのかもしれない。僕たちは自分たちを破壊し尽くす手段を得た。これが人類の叡智の果てというのなら、僕たちは取り返しのつかない選択を取ってしまった」


 *


 1ヶ月弱の戦争の末、ロスト・エンジェルスは勝利を得た。国民は連邦の旗を振り、国歌を流しながら車で爆走する。ガソリン代も大幅に値下がり、ブラシリカから食料を輸入して品種改良することで、食費も数ヶ月前の水準まで下がった。誰もが、この戦争の結果に喜んでいた。


 その頃、アークはブリタニカ戦線から帰投してきたジョン・プレイヤー中将に、わらにもすがるような思いでこの戦争の意義を聞きに行っていた。


 ふたりは貸し切り状態のパブで再開し、アークは開口一番こう言った。


「僕たちの存在意義って、なんでしょうね」


 すでに酒へ手をつけていたジョンは、


「存在意義? 難しいこと聞くな。まぁ、あれだ。オマエはまだ若すぎる。本当は高校でガキどもと遊んでるはずが、実力が秀でてるからって国歌最高戦力に選ばれちまった。だからまぁ、存在意義もなにもねェんじゃねェの?」なにかを言いかけたアークへ言葉を被せる。「〝サテライト・ボンバ〟の件、聞いたぞ。推定死傷者は50万人ほどだとさ。だからブリタニカもこれ以上相手できんと思って、おれたちと講和した。まぁ要するに、これはあの幼女にも言われたかもしれんけど、オマエにも守りたいヒトがいるだろ? 恋人とか、友だちも。一歩間違えてたら、その絶対守りたかった者が虐殺されてた可能性もあった。そうだろう?」


 ブラシリカの人々にも、絶対守りたかったヒトがいたに違いない。一方、アークにだって自分を犠牲にしてでも守りたいヒトがいる。それらは等価であり、互いに同じことを思っているはずなのだ……とジョンは伝えたいように感じられた。


「アーク。戦争なんて、そんなモンだ。どっちも自分が正しいと思ってるし、どっちにも守りたい者がいる。そして、今回はロスト・エンジェルスの人々が守られた。まぁもっとも……あんな兵器使ったんだから、なにかしらのしっぺ返しが来てもおかしくないけどな」

「しっぺ返し、ですか?」

「あの戦争の目的は、あくまでもガリアとの戦争へ備えるためだ。なのに、こっちは思わぬ損耗を負って大量殺戮兵器を使う羽目になった。となれば……」

「ガリアの〝守護天使〟が黙っていない、ということですか?」

「そういうこった。アーク、落ち込んでる暇はねェぞ? これから、想像を絶する大戦争が起きてもおかしくないんだから」


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