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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十二幕 成功に目が眩んで
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憎しみへの道

『えー、ブラシリカ方面軍より伝達。森林地帯を暖めろ、とのことだ。サテライト・ボンバ、放射準備開始』


 核兵器並みの兵器を使うというのに、今ひとつ緊張感のない声色とともに、ロスト・エンジェルス最高司令部は宇宙空軍へと命令を下した。


『了解。放射開始まで残り5、4、3、2、1……』


 一方、ルーシの原子力空母はにわかに揺れた。地殻変動が起きたかのように。


「なんだ? ブラシリカの襲撃か?」


 一般兵がそう呟く頃、決着はついていた。さながらキノコのように広がる炎は、ブラシリカ方面軍総軍に巨大な衝撃を与えた。通信を妨害するほど漂っていた魔力が露のように消え去り、熱波がこちらの頬をかすめる。


「な、なんだ? 誰がミサイルを? い、いや……ミサイルなんて騒ぎじゃないぞ!! こんなに離れた距離から見えるか!? 本国はなにをした!?」


 アークの部隊〝ギガバイト〟の実質的な大隊長であるミラ大尉は、これが本国からの攻撃であることを理解し、声を荒げる。こんな攻撃を加えれば、森林地帯はすべて燃え散る。そこに住んでいた一般人も、チリと化して消えていっただろう。


「……大尉、ルーシへ連絡を」


 そんな中、アークが現れる。彼は憔悴した表情で、ミラへ伝えた。


「アーク少佐……。これは、あの幼女が放ったということか?」

「良いから」


 魔力による電波の乱れは、もはやこの沿岸には存在しない。また、魔術によって盗聴される可能性の高い短波通信も、今や盗聴する者もできる者もいない。アークへ通信機が渡される。


『よう』

「……これは、一般人に対する大量虐殺だ。ブリタニカも更に必死になるよ?」

『そうかい? それよりも、この炎を見ろよ。美しいだろ。すべての問題は、今吹き飛んだのさ』

「憎しみの炎だ」吐き捨てた。「君は、大切なヒトにこの蛮行を行えるの? 一般市民を巻き添えにするというのは、僕らとブリタニカの果てしない絶滅戦争の始まりかもしれないんだよ?」

『アーク。仮定の質問には答えられない。大切なヒト? あぁ、いるよ。オマエもその一員だ。だが、ライミーとポルトゥスの連中にそれらはいない』

「……!!」

『さて、ロスト・エンジェルスへ帰ろうか。なにか言いたいこと、あるかい?』

「どうかしてるとだけ、伝えておくよ」

『あぁ、そうかい。なら、感情的な考えは戦争において、なんの役にも立たないとだけ伝えよう』


 ルーシは徹底的に現実主義的であり、対するアークはやや感情的。しかし、ルーシの行いを裁く法律は存在しない。ロスト・エンジェルスにも、国際的にも。


 *


「ブリタニカの連中が、講和交渉を申し込んできました。大統領」


 クール大統領は、つい数日前までの狼狽えようが嘘のように、落ち着き払った態度で外務省の役人へ言う。


「なら、以下の通り伝えろ。1、ブラシリカの権益は我が国のものに。2、あくまでも対ガリアへの戦争を継続すること。3、この戦役における賠償金は両国ともに問わない。4、我が国からのアメリカーナへの支援はただちに取りやめる。以上だ」


 クールは冷静に条件を並べ立てる。外務省の役人は頷きながらメモを取っていく。


「なるほど。我が国へはブラシリカの権益を、彼らにはガリアとの戦争を心ゆくまま行える状態、というわけですか」

「そういうこった」退屈気に耳に小指を入れ、フッと吐き出す。「アイツらは気が済むまで踊れば良い。ブラシリカの権益を手にすれば、ガソリン代も急降下。食料も手に入る。これで、次の大統領選挙の結果は決まったようなものだな」


 ロスト・エンジェルスは徹底的に国益を追求し、結果勝ち取った。教科書に記載される内容は、現状それだけで充分だろう。今のところの揉め事は、だいたい解決したのだから。


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