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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十二幕 成功に目が眩んで
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最大の苦難への道

 そういう話ではないのに、ルーシはすでに戦闘服に着替えていた。アサルトライフルを背中に担ぎ、ボディーアーマーを着込んでいる。


「そういえば、オマエ杖歩行生活治ったの?」

 アークは注射器を見せてくる。「〝SHA〟漬けだよ。でも、僕が向かうのは最前線じゃないしね。予備戦線さ」


 SHAという軍人用の興奮剤を刺さなければ、アークは自分の足で動くこともできない。こうなってくると、前線に出るのは危険なのは明白だった。


「……といっても、ゴールデンバット少将と連絡が取れないから、ブラシリカにはなにか罠がありそうだけどね」


 アークは、最悪のパターンを考えている。それは、ブラシリカに展開された兵隊の壊滅状態という事態だ。


 きょとんとした面持ちでルーシは言う。「なんの罠だよ。連隊程度じゃ足りないってわけかい?」

「いや、なんなら軍団程度は送ったほうが良いのかもしれない」

「軍団は30000人程度必要だろ。予備役を徴兵して、本土防衛につかせるなら行けなくもないけど」

「ルーシ。ブラシリカの国土を1軍団と1連隊で屈服させられるのなら、むしろ破格だよ」

「そうかい? 連邦国防軍の狙いは、最短での戦争決着だろう。電撃戦だよ」

「……、国防総省はブラシリカを甘く見積もってる。君も珍しく、この戦役を安く見てる」

「そんなこともないだろ。こちらには、ブラシリカの200年先の技術があるんだぞ。油田が取れる部分以外を、空中機動魔術部隊と爆撃機で燃やし尽くせば良いだけさ」


 会話を交わしながら釣りしていたが、やがてルーシはなにも釣れないことに業を煮やし、釣り竿を置いてどこかへ去っていってしまった。


(みんな、甘く考えすぎだ。技術力で圧倒してても、闘いは数こそ正義。だいたい、ただの爆撃に効果があるのかも曖昧だしね……)


 残ったアークは、釣れそうにもないのに竿を持ったまま、ボーッと考え込むのだった。


 立ち去ったルーシは、昔自分で購入した原子力空母に乗り込む。同じく戦闘服を着た私兵が最終調整を行っていた。ルーシは彼らから敬礼を受けつつ、艦長室へ向かう。そこのベッドに横たわり、意味もなく眠ってしまうのだった。


 *


 クール・レイノルズ大統領と参謀総長、軍幹部たちは、悲痛な面持ちでうつむくしかなかった。


「……状況を改めて説明いたします。まず、ブラシリカへ送られた、ゴールデンバット少将率いる旅団が壊滅状態。ただちに送られた潜水艦で、ゴールデンバット少将を含むごく一部の兵士は帰投していますが、この作戦の失敗は誰の目から見ても明らかでしょう」


 続いて、軍幹部がお通夜のような表情で伝える。


「ブリタニカは想像以上にやる気です。5隻の軍艦が、すべて大破しました。更に、こちらが持っていた制空権も少しずつ奪われつつあり、制海権に至っては完全に失っています。もし、制空権を奪取されたら、ブリタニカは上陸作戦を仕掛けるつもりでしょう」


 参謀総長は、弱々しい声で言う。


「短期決戦のはずが、ドツボに嵌まったのか?」


 クールは、ボソッと歌うように呟く。


「なぜだ……」


 これは、過信の末に起きた現実だった。ブリタニカは大陸や植民地での戦争で余力がないと見積もり、ブラシリカに至っては蛮族どもの国だと端から戦闘になるとも考えていなかった。


「なぜだ、チクショウ!!」


 クール・レイノルズは勝利を重ねてきた。


 大統領選挙のとき、対抗馬をルーシに殺害させて前職を国家反逆罪で逮捕し、クールは大統領という立場を手にした。


 彼にとって初の戦争となった、ゲルマニア方面でも、最小限の被害で最高の戦果を得られた。


 しかし、それらはすべて転生者ルーシの実力ありきだったのだ。


 これは、クール……いや、ロスト・エンジェルス建国以来最大といえる国難であった。


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