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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第二幕 実力至上主義、MIH(メイド・イン・ヘブン)学園
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尊敬? 煽り? 天然?

「好きにしな。さて……」


 ルーシは制服と手に血がついていないことを確認し、彼らから巻き上げた金の総額を見る。


「2000メニーか。やはりここの学生どもは金を持っているようだ。ところで……パーラって子を知っているか?」

「名前だけは。獣人のくせに落ちこぼれな子でしょ?」

「そんなこというなって。その子の趣味とかわかる?」

「さあ。絡みないし。でも、オタサーにはよく行ってるみたい」

「オタク系か……。そこまで詳しくねェんだよな。ま、自由にしゃべらせるのもアリか」ルーシは首をゴキゴキ鳴らし、「あとでその子とカラオケ行く約束になっているんだ。たまには交友の輪を広げるのも大事だと思うぜ?」


「……考えとく。連絡先交換しとこ」

「おう」


 そんなわけでルーシとメリットは教室へ戻っていく。ちなみに彼らは拘束されたままなので、誰かが先生に報告しないと女子トイレから抜け出すこともできないし、住所を抑えられている以上チクることもできない。


 と、いうわけで、冷徹な無法者の片鱗を見せてきたルーシは、教室に戻る。


「ルーちゃんおかえり~。長かったね」

「ああ……あの日なんだ」

「ほんと? じゃあ無理しないでね! ほら、ノートとかもとってあげるし、なんなら保健室に行っても良いと思うし! 辛いよね~。身体重くなるし、めまいするし、ルーちゃんくらいの歳だとあんまり体験したことないだろうしさ! だから私がサポートするよ!」

「ああ、ありがとう」

「ところでさ、カラオケ行くっていってたじゃん? んで女の子誘ってみたんだけどひとりしかオッケーっていわないんだ! ルーちゃんあの日ならきょうはやめとく?」

「どちらでも」


 ルーシは直感で感じ取る。パーラに女友だちはほとんどいないことを。彼女が友だちだと思っている者は、きっと彼女の悪口・陰口で盛り上がっていると。それに気が付けないほど鈍感なのか、それともルーシにそんな一面は見せたくないのか、それでもなければ……。

 予鈴が鳴った。一旦休み時間ということだろう。おそらくきょうはオリエンテーション的な日であるのは間違いない。ルーシは一瞬、あたりを一瞥した。


(やはり相当ブルっているな。詰めに行ったヤツらが帰ってこなくて、おれが無傷で帰ってきたあたり、ビビるのも無理はねェか)

「ん? どうしたの?」

「いや……パーラって男友だちはいるのかなって」

「……そうだね」


 口を噤んだ。おそらく、ここがパーラの秘所だろう。しかし情報がない。だからルーシも深堀はしない。


「まあ、あれだ。メリットってヤツ知っているか?」

「メリット!? 超知ってる!! 去年のね、壮麗祭でベスト32まで残ったんだ!! ランクDなのにさ!! 正直憧れちゃうよね~! だってランクDだよ? 私みたいな落ちこぼれと評価は1緒なんだよ? でもキャメルちゃんに負けるまで勝ち進んだからね~! ほんとにすごいと思うな~!」

「なるほど。ソイツは好きかい?」

「いつかは友だちになりたいな!! なんか強くなる方法とか教えてほしいしさ! でもあの子化粧とかしてないからさ、私が教えることもできるし、決してタダで教えろなんていわないよ!!」


(……尊敬しているのか? 煽っているのか? それとも天然なのか?)

「だったら呼ぶか」

「え!? メリットちゃんの連絡先持ってるの? みんなに聞いたけど、みんな持ってないっていうからさ……。諦めてたんだけど、誘えるなら誘ってみてよ!」

「話しかけようとは?」


 パーラはすこしいいづらそうに、

「うーん……。私って人見知りなんだよね」

 寝言のようなことを抜かす。


「……そうかい。まあ、呼んでみるよ」


 この歳の女子では珍しい、裏表のない子だ。良い意味でいえば正直。悪い意味でいえば幼稚。

 しかし、そういう裏表のない、あるいはそう振る舞っている女子というものはモテるものだ……と前世で弟が酔った勢いでいっていたのを思い出す。それは小学校中退のルーシには未知の世界だし、さらにいえば、こういった良くも悪くも深く考えない女は簡単にホテルまで運べる程度の認識しかない。

 もっとも、いまとなればベッドまで連れて行くのも無理だが。


「もしもし。放課後、友だちひとり呼んでカラオケ来い。……え? 友だちがいねェ? それじゃつまらんな。じゃあ、あれだ。男ひとり呼べ。……あ? もう男は懲り懲り? 誰かと付き合ったことあるのかよ。……3人? 意外と多いな。いや、決してけなしているわけではないんだ。オマエのケツ追いかける男がいることに驚いてなんかいない。……わかった。こちらで人は用意する。最悪3人だな。ああ、パーラだ。すこし話すか?」


 ルーシは筒型の携帯をパーラへ渡す。

 この携帯電話は便利だ。畳んだ状態でも通話ができるし、念じれば写真も撮れる。近未来異世界らしい道具である。

 そう思っていると、パーラのマシンガントークがはじまった。


「もしもし! はじめましてメリットちゃん! パーラだよ~! そうそう、落ちこぼれの獣娘だよ~! ねえねえ、私思ったんだけどさ、なんでメリットちゃんって化粧しないの?」


(ナチュナルに煽ったな。確かに高校生にもなって化粧のひとつもしない女子なんて不思議な存在だが)


「……なるほど! アホな男と関わりたくないからと! でもさ、すこしくらい良いじゃん? 別に派手なメイクなんて必要ないんだよ、メリットちゃんかわいいし! だからさ、ちょっとだけいじらせてよ! ……え? ルーちゃんと替われって? わかった!」


 ルーシはニヤッと笑い、電話越しのメリットの表情を推察することでおもしろがっている。


「やあ」

『……この子、私のこと煽りたいの?』

「いや、天然だろ。普通仲良くなりたいヤツに悪意を向けるか? 私は向けないね」

『だったらいよいよ救いようがない。自覚がないのが一番怖い』

「わかるが……まだ1箱渡してねェよな? そこへ来たらやるよ。どうせ年齢確認で困っているんだろ? この国厳しいからな。どうせだったら飲みながら話そうぜ」

閲覧ありがとうございます。

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