我が〝ホーミー〟たち
薄情なセリフに聞こえるかもしれないが、実際パーラの一件はどうすることもできない。それは、メントやホープが一番良く分かっているはずだ。
ビーッ、とドアが開く音が聞こえた。ルーシはやや俯きながら、メントの部屋へ向かっていく。
「よう」
マンションの一室に入り、ルーシは緑髪で筋肉質な少女と、青髪で押せば折れそうな細い身体の少女との再開を果たす。
早速タバコを取り出したルーシだったが、
「ウチ、禁煙。吸うんだったらベランダ行け」
と言われてしまい、ルーシは仕方なくタバコをしまう。
「オマエら、あまり感激していないようだな」
「そりゃあ、あたしもホープもオマエが死ぬところ見たからな。それなのに、蘇ってるオマエに呆れてるだけさ」
「まぁな……」
ダイニングテーブルの椅子にルーシは座る。
「で、私が死んでいる間色々あったようだな。パーラが植物状態。キャメルお姉ちゃんは記憶喪失。オマエらは無事だったのか?」
ホープが言う。「無事じゃなかったら、ここにいないよ」
「言えているな。そういえば、メリットは?」
メントが答える。「アイツ一応退院したはずだけど、連絡がとれないんだ」
「なんで?」
「噂だと、女性用風俗にドハマリしてるって」緑髪の少女は軽蔑的な表情になる。
「どういうこった」
ホープは呆れているようだった。「うちにも返事返さないし、よっぽど風俗通いが楽しいんだろうね」
「アイツ、性格的に男へ誑かされるタイプでもないと思っていたけど」ここまで言っておいて、ルーシはひとつの答えを見つける。「あぁ、結局パーラと私を守れなかったから、現実逃避でもしているのか」
メリットは律義者。そんな少女が守ろうとした者を守れなかったから、ストレスが溜まっているのだろう。
「んで、私の紅茶は?」
「今淹れるよ」メントは立ち上がった。
ルーシはホープに向き直す。「なぁ、シエスタとはうまく行っているのかい?」
「ん、まぁまぁ」
「なるほど、倦怠期か」
「でも、なんだかんだ言ってシエスタといっしょにいると落ち着く。いつか結婚するんじゃないかな」
「オマエの口から、そんな言葉が出るとは驚きだ」
「だって、シエスタはうちのために尽くしてくれるもん。うちもシエスタに尽くしたいと思ってるし」
(結構なバカップルだな……。そういえば、メントとリヒトの馬鹿はどうなったんだ?)
ルーシは一応メントに聞こえないように、ホープへ耳打ちする。
「(メントとリヒトっていう馬鹿は?)」
「仲良くやってるみたいだよ。未だに付き合ってないと思ってるみたいだけど。メントちゃんは」
「おいおい、なんの話?」
「オマエの彼氏の話だよ」
「え、誰のこと」
「リヒトだよ、私の〝ホーミー〟だ」
顔を赤らめる。「リヒトが彼氏? え、まぁ、うん。そうなったら良いな」
「煮えきらないな……」ルーシは手を広げる。「つか、リヒトと話したい。確か、アイツMIH学園に編入したよな。あの馬鹿さで授業についていけているか気になるぜ」
いつだか、メイド・イン・ヘブン学園ことMIH学園の裏ビジネスを確保するため、リヒトを入学させようとした。その後色々ありすぎて覚えていないが、おそらく彼はMIH学園の生徒になったはずだ。
「リヒトに電話かけようか?」
「そうしてくれ」
メントはスマートフォンを取り出し、リヒトへ電話し始めた。
『どうした? メントちゃん』
「アンタと話したいヒトがいる。きっと驚くぜ」
『えーっ、誰だろ』
ルーシはメントのスマホを借りる。そしてベランダに出て、タバコをくわえながら、
「よう」
『んん? …………社長ォ!? 社長生きていたンか!?』
「あぁ。なんだかんだ生きていた。つか、オマエらはニュースをしっかり見たほうが良い。スターリング工業はどうなった?」
『あぁ、スターリング証券に名前変えて色々やってるぜ!! 社長が失踪して、クールの大アニキも大統領だから、ポールモールのアニキといっしょに働き詰めだぜェ!!』