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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十一幕 最強の無法者が帰ってくる!! ヤァヤァヤァ!!
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不穏な兆候

「うん、みんな待ってたはずだよ」


 タイペイがそう言った頃、ルーシは気絶したかのように地面に横たわった。


 *


「街並みは……あまり変わらないな」


 特段変わらない夜の街。同級生たちがまず近づかない、がやがやした歓楽街。


「まず、どこから当たろうか」


 肉体はさも当然のように、このロスト・エンジェルスに来たときと同じ。銀髪に青い目。整った顔立ち。身長は160センチには到底満たず、しかし設定上の年齢を考えれば随分高身長かもしれない。ルーシは10歳児として、この国に来たから、余計にそう感じてしまう。


 と、少し物思いに耽っていたら、


 こちらに暴走車両のように向かってくる魔力を感じた。それは空を飛んでいるが、進路を変えてこちらへ向かうようにしたらしい。


(飛行術式を使えるってことは……)


 ルーシが覚えている限り、自在に空を飛べる魔術師は限られている。敵対して潰したエアーズという青年。本来なら敵だが、協力することも多かったジョン・プレイヤー。そして……。


 刹那、目の前に炎の塊が現れた。西洋竜のような姿形だが、中にヒトがいるのも事実だった。火の粉と炎の暖かさ、更にアスファルトがメキメキと頼りない音を上げる。


「──ルーシ、ルーシか!? 天使から連絡があったのは、そういうことか!?」


 弾け飛ばすように炎の塊が消え去った頃、その炎の主は嬉しそうな声色とともにルーシに近づいてくる。


「──あぁ、クール。やはりこの世界には私が必要らしい」

「そりゃそうだろ!! オマエはまだ、本当にほしかったものを手に入れてないんだからよ!」

「ほしかったもの、ねェ」目を細める。

「どうした? 豆鉄砲くらったような顔して」

「いや、もうほしいものなら手に入れているかもしれん。だが、それらは守らないと意味がない」


 茶髪パーマでハンサムなクール・レイノルズは、一瞬怪訝そうな顔になったが、構わず続けた。


「ともかく、オマエが帰ってきたことはみんなに伝えねェと。KIA判定も取り消しだ。あれ嫌だったんだよね~。支持率が下がっちゃってさ」

「軍人でもないガキを戦死させて、いまだに大統領できるオマエは、やはりたいしたタマだよ」

「だろ? さて、早速だけど、オマエには言っておかないとならないことがある」

「なんだい?」

「あー、いや。帰ってきたばかりのヤツに言うことじゃないか。とりあえず、大統領府まで行こうぜ。空飛ぶ方法、覚えてる?」

「私を侮るな」


 苦笑いを浮かべ、空を飛ぼうとしたときだった。

 ぴっしゃ、と何者かがクールへ生卵を投げつけたのは。


「おらァ!! 簒奪者クール・レイノルズ!! 武人皇帝にビビってるヘタレが街歩いてるんじゃねェよ!!」


 クールはハンカチで生卵のあとを拭き、近くに潜んでいたSPが犯人を取り押さえた。


「おい、大丈夫か?」

「おれを侮るな」


 怒りを抑えるように、拳を握りしめていたのを、ルーシは見逃さなかった。


 クールは支持率90パーセント超えの大統領。まず生卵なんて投げつけられないし、なんならそんなマネをするヤツは支持者が止めていただろう。だが、現実的にクールの支持率が下がっているのを、夜のロスト・エンジェルスを通して知ることになった。


「おい、議会選挙があったのか? オマエって確か〝行動保守党〟から出た大統領だったよな。なのに、対抗政党の〝自由労働党〟が議席の3分の2以上を獲得してやがる」


 空高く舞っている最中、ルーシは摩天楼の電光掲示板に記された事実を知った。


「それだけ色々あったんだよ」

「明るい話のようには思えないな」

「まぁ……、大統領府で話そう。また生卵投げつけられるのも嫌なのさ」

「あぁ」


 およそ半年ほど浦島太郎状態だったルーシに、今のロスト・エンジェルス情勢は分からない。しかし、危険な兆候が漂っているのも事実だった。


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