戦争終結(*)
『ゲルマニア諸国の支配者、スオミ・アウローラが死にました。繰り返します、スオミ・アウローラが死にました』
戦争開始から48時間が経過。ロスト・エンジェルス国防総省及び大統領府は、テレビやラジオを通じてそのニュースを報じた。
「ってことは」
「みんな勝ったのかな」
ある事件の所為で、当分杖つく生活を余儀なくされたアルビノの少年。それに、ある事件の所為で一時期集中治療室に送られていた少女。
シエスタとホープはいつもの病院で、あっけらかんとした表情になっていた。
「ルーシやメリットさんが、パーラちゃんとメントちゃんを救いに行ったんだよね」
「ああ。他にも、キャメルのアネキやアークも向かったって」
「みんな、無事かな」
「ルーシ以外は読めないな」
ふたりとも、ルーシの生存だけは確信していた。とはいえ、彼らがここへ現れるのは、もう少し先の話だろう。
そう思い、テレビを消そうとすると、
「え……」
「嘘だろ」
戦死者・犠牲者報告も流れてきた。そこでふたりは、信じがたい現実を目にする。
『KIA:ルーシ・レイノルズ』
『MIA:アーク・ロイヤル少佐』
『MIA:キャメル・レイノルズ』
なお、KIAという単語は〝戦死〟を意味し、MIAは〝行方知れず〟である。
*
「中将殿。宇宙電波での通信にも応えませんし、魔力もまるで感じ取れない。これはつまり──」
ポールモールは顔を引きつらし、かつての上司ジョン・プレイヤーに報告していく。
ジョンもまた、途方にくれているようだった。まさか子ども3人も守れないとは、という感じである。
「MIAだな。カルティエ准将とは連絡ついたか?」
「ええ。なんでも、アークとキャメルさんが見つかるまで、ゲルマニアに残るとか」
「言っても聞かない女だからな。ディーさん、いや、D-スペック亡き今、アイツがセブン・スター最候補なのに」
ジョンは首を横に振り、
「でもまあ、カルティエ准将なら死なないだろ。それに、戦後処理もある。どうせゲルマニアの権限はおれたちが握ることになるだろう。であれば、軍の司令官も必要だからな」
「……、中将殿はそれで良いんですか?」
「あ? なんだよ、ポールモール」
「おれたちは国を守るために動いているはず。だというのに、ロスト・エンジェルスの子どもたち3人が戦死と行方不明。おれたちが守ろうとしたものって、結局なんなんですか?」
ジョンはサングラスに触れ、苦く笑いながら、
「オマエがどんな不満を抱いて退役したのか知らんが、所詮仕事は仕事だぞ。おもちゃ屋で痛みすら知らない子どもを相手にするのと、死ぬにも狂いで突っ込んでくる魔術師を駆除すること。どちらも、ロスト・エンジェルスには欠かせない仕事だ」
サングラス越しの目は見えなかった。ポールモールは、「ええ……、きっとそうなのでしょう」と返すことしかできない。
「さて、大統領府と司令部に連絡だな。ルーシの戦死と、キャメルちゃんとアーク少佐のMIAを報告し──」
再開します。さーせん。