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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十幕 やがていつか、みんなでいっしょに

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ルーシ・レイノルズKIA(*)

 ジョンは通信を切り、首を横に振る。


「どれだけの理想も、人殺しの外道が叶えられるわけがない。良い勉強になったよ、ディーさん。……あばよ」


 戦争は終わる。これは、強欲な者たちが仕組んだロスト・エンジェルス内での陰謀劇。それがたまたま、中欧まで飛び火しただけである。きっと、歴史にはそう刻まれるだろう。


「さて、クールの娘を探すか」


 目的を与えられて良かった。これで、ジョンはなにも考えずに済む。盟友を殺したことも、多数の犠牲者も。


 *


「ぜェ、ぜェ……」


 瓦礫の山を蹴り破り、黒髪の男が出てきた。名をポールモール。大統領クール・レイノルズが、もっとも評価する部下のひとりであり、ルーシの部下でもある。


「まさか、生き残れるとは……。シア・ハート・アタックに感謝だな」


 興奮剤を何発も打つことで、ポールモールはかろうじてここにいられる。ただ、タイムリミットはそう多くない。


「さて、うちのボスは?」


 なぜなら、ルーシの魔力が全く察知できないからだ。悪い夢のように禍々しい魔力が、一切合切感じられない。


「クソ。あのガキ、また死ぬつもりかよ」


 これで何度死にかけた? もう数えるのも億劫だ。我ながら大変な上司を持ってしまった、と思いつつ、ポールモールはわずかな魔力すらも察知していく。

 それでも、


「見当たらんな。マジで死んだか?」


 煮ても焼いても死なないであろう幼女が、こんな場所で死ぬ? いや、そんな馬鹿な話はない。あの幼女は奇跡を起こし続けてきた。今更それが破られるとも考えにくい。

 だから、ポールモールはさほど慌てていなかった。インカムが粉々になったので、魔力探知でしかルーシを見つけることはできないが、されどもポールモールは確信めいたものを持っていた。


 と、感じた矢先、


 銀の髪、美しい肌、閉じられた目、傷一つないきれいな身体。


 ルーシが、あのルーシが、まるで死体のようにそこへ転がっていた。


「嘘だろ……。ルーシ! しっかりしろ!! 魔力が足りねェのか!?」


 40キロくらいの重みは、少なくとも意識不明という推察が立つ。わずかでも意識があれば、体重そのままの重たさを感じることはないからだ。


 その最中、


「ポールモール。そのガキ、ルーシってクールの娘だよな?」

「……中将殿」

「どうした? ──まさか」

「ええ、呼吸をしていません。心拍も動いておらず、あたかも生きることを拒んでしまったかのように……」


 普段は冷静沈着な男が、このときだけは顔を強張らせていた。

 それに従うかのように、ジョン・プレイヤーも言葉を詰まらせる。


「……、回収部隊がもうじきやってくる。せめて、ロスト・エンジェルスの地で死なせてやるのが、優しさかもな」


 なおも、仕事に実直でなければならない。ジョンも、ポールモールも。


「ええ……」


 口取りが重たい場面の中、ロスト・エンジェルス製のヘリコプターが多数、こちらへ向かってきた。


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