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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第十幕 やがていつか、みんなでいっしょに
255/290

ただ、光のほうへ(*)

「ぎゃ、あ、ひゃ、あ……!!」


 スオミ・アウローラは言葉ですらない、鳴き声を発する。

 焼け野原になったゲルマニカ全域に、充血した目が無数に浮かぶ。まるでルーシの背中に広がっている翼のごとく。

 それらは黒い雲をより濁らせる。大雷鳴が響き渡り、スオミ・アウローラどころかゲルマニカ、いや、ゲルマニアという国家そのものを滅ぼすべく、至るところに雷を降らせた。

 雷撃は壮麗な建築物を破壊していく。美術館、聖堂、城が、木端微塵に消え失せる。

 ルーシは最初こう言ったはずだ。「この帝都を滅ぼすつもりはない」と。

 されど、雷槌にそれらを判別する力はない。


 *


 つい数時間前、スオミが占拠していた執務用の大聖堂には、人質がふたりいた。パーラとメントだ。

 パーラはなんとか涙をこらえ、身体を小刻みに震わせる。

 もう何日と拘束されている。すでに日付すら数えられなくなっていた。だけども、すぐ隣にいるメントの手を握り、何度も問いかけた。


「ルーちゃん、来てくれるよね……」


 そのたびに、メントはこう答える。


「……当たり前だろ。アイツは愛と平和の守護神だ」


 パーラとメントの心を支配する、薄暗い感情。もしかしたらルーシが敗れたのかもしれない、と。魔力を完全に遮断され、情報を得ることもできず、わずかな黒パンの切れ端をふたりで分け合う。

 高校3年生の女子生徒が背負うにしては、あまりにも重たすぎる絶望。ルーシを信じ続けるふたりは、果たしてどんな結末を辿るか。


 そのとき、

 大地震のような揺れが、大聖堂を襲った。


「うわっ!? パーラ!」


 転がり頭を壁にぶつけたメントであったが、砂嵐が過ぎた直後、パーラの名前を叫ぶ。

 ピンク色の地毛が露わになっている獣娘のパーラの身体は、メントほど頑丈でない。その証拠に、ベキッ!! というなにかがへし折れる音が聴こえるような気がした。


「パーラ! 大丈夫か!?」


 ついに涙をこぼしたパーラは、「メントちゃんこそ、大丈夫──」と言い切る前に意識を失う。


「パーラ!!」


 メントは哀叫(あいきょう)する。そして、天井も床も振動のあまり崩壊し始めている。もう終わりだ、と信じかけたときだった。


「いや、魔断石(まだんせき)が壊れてる……!! もう破れかぶれだ!!」


 魔力を遮断する石『魔断石』もまた粉々になっていた。メントは手に力が入ること、そして魔術を使えることを知る。


『アンタの術式、せっかく破壊力あるのに使い方が下手過ぎ』

『うるせえな。だったらうまい使い方教えろよ、根暗』

『一撃一撃の重たさはいまより減らせば良いんじゃない? その代わり、放てる矢印を増やしたほうが良い』

『はあ? 意味あんのかよ?』

『ある。そもそも一つひとつの攻撃に魔力を入れすぎだし。アンタが思うよりも、アンタの術式は応用が効く』


「──うぉおおおおおおおおおおおお!!」

閲覧ありがとうございます。

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