ゲルマニカ西部での闘い(*)
帝都ゲルマニカ、壊滅状態。
ロスト・エンジェルス連邦国防省には、そんな報せが届いていた。
「ゲルマニカが崩壊した!? あそこには、虎の子の“セブン・スター”アーク・ロイヤルを派遣しているはずだぞ!?」
「情報が錯綜しています!! 宇宙方面軍からの衛星映像も途切れていて、一部の情報筋によれば、“サテライト・ボンバ”が放たれたとも!!」
司令部はようやく慌て始めた。軍集団並みの存在がひとり、それに匹敵する学生がもうひとり展開されている状況下なのに、現地との連絡がつかないからだ。
されど、大統領にして最高司令官クール・レイノルズは、まったく狼狽えていなかった。
「おめェら、ビビりすぎだろ。アークとジョン、そしてルーシがいる場所に常識なんて通じねェよ」
「し、しかし、大統領!! ──って、ジョン・プレイヤー中将も現場にいるのですか!?」
「アイツは執念深いからな。スオミ・アウローラとD-スペックにやられっぱなしじゃ終われねェんだろ。それに……」
本来は戦場に向かって暴れまわりたいクールは、それでもあの幼女を信じていた。
「ルーシが必ず戦況をひっくり返す。アイツはこのおれに勝った幼女だぞ? 負けることはおれが許さねェ」
*
ゲルマニカ西部、暗闇の中で。
「おいおい……化け物かよ、あのガキは」
D-スペックは、地べたを這いつくばるアーク・ロイヤルを踏みつけながら、大雷鳴を眺めていた。
「こりゃオマエを殺しても意味がねェな。なあ、アーク・ロイヤル」
「…………」
(これが最年長のセブン・スター……! まったく歯が立たなかった。それでも──!!)
頭を踏みつけられ、いままで培ってきた尊厳をへし折られたアークは、命乞いだけはしてたまるかと目を死なせない。
「つか、本気で生意気なガキだよな。オマエらって」
「オマエ、ら?」
「目ェ腐ってるのか? ほら、そこに立ってる元王族をちゃんと見てやれよ」
18歳だというのに、10歳程度の幼女よりも背丈の低い少女。しかし、本人は低身長であることをまったく気にしていない。その理由は、自分の実力に絶対的な自信があるからだ。
「アーク、私を侮らないでよね。守られてばかりじゃ、強くてかっこいいキャメル・レイノルズには戻れないでしょ?」
キャメルがそこにいた。いつもの蕩けた態度は消え失せ、ただ戦闘に立ち向かう“強くてかっこいい”幼なじみがいた。
「無理、だ……。キャメル。いますぐ逃げて──」
アークの声を遮るように、キャメルはラクダの背後霊のような現象を発生させる。
「貴方は本当に優しいわね。でも、もう大丈夫。ルーシちゃんも貴方もメリットも……みんなで生きて帰りましょう」
「おいおい!! まさかおれに挑むつもりか!? 頭オカシイんじゃねェのか、元王族──!?」
「フランマ・カメールス!!」
ラクダのような現象が、D-スペックに直撃した。アークがあれだけ挑んで敵わなかったD-スペックは、炎の塊の前に血を撒き散らしながら吹き飛ばされていく。
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