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もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら  作者: 東山ルイ
第二幕 実力至上主義、MIH(メイド・イン・ヘブン)学園

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派閥勧誘中

 されどルーシは動じない。そして言葉をつなぐ。


「ま、そのうち良いことあるだろ。仲間がいるだけでだいぶ違うだろうし。これが私の連絡先な。なにかで困ったら連絡してきな。恩返しくらいはするからよ」

「……人の耳を引きちぎった女の子に?」

「おいおい、ありゃ事故だ。ちょっと引き裂く程度だったんだよ。だがアイツの耳が弱すぎて切れちまった。なに、耳なんてすぐくっつく。意外と人間ってぬいぐるみみてェな構造しているからな」


 アークの顔から血の気が引いた。どうやら失言だったらしい。ルーシは即座に発言を変える。


「あー……ほら、漫画とかでも簡単に治療できるだろ? それといっしょさ。私はこの国で生活し始めてから2ヶ月くらいだが、ロスト・エンジェルスの医療機関だったら保険適用で治せるだろ、たぶん」


「……漫画読むの?」


「まーな。ただ、最近はあまり読まなくなった。純文学にハマっているんだ。小説は読まないのか?」

「ライトノベルだったら読むけど……」

(日本の小説の一種じゃねェか。なんで異世界にそんなものがあるんだよ)


 まあ、異世界人の中には日本人もいるだろうし、特段不思議でもない。


「純文学は良いぞ。頭がおかしいヤツらの書くものってのは、なぜかおもしれェんだ。頭がおかしいからおもしれェものを書けるのか、おもしれェもの書けるから頭がおかしいのかは置いておいて」

「……よくわかんない世界だね」。

「私もまだ理解が及ばないよ。さて、と。煙草吸い終わったし、またどこかで会おう」

「うん、またね」


 ルーシは去っていった。その後ろ姿を見て、アークはつぶやく。


「……何者なんだろう。キャメルの姪っ子には思えないし」


 *


 ニコチンとタールですっきりしたルーシは、教員室へ向かう。MIH学園は一応クラス制で、まずはクラスメートに顔見せしなくてはならないから、担任へ会いに行こうとしているのだ。


「失礼します。ルーシ・レイノルズです」


 教員室はコーヒーのニオイが漂っていた。どうやら彼らは激務らしい。


「ルーシ……ルーシか!! あのクールの娘なんだよな!?」


 そうきさくに話しかけてきたのは、ルーシ以上に低身長な女教師だった。しかも美人である。


「ええ、そうですよ」


「アイツには手を焼かれてばかりでな! まあアイツの妹のキャメルは優等生なんだけどよ! さて、キミはどっちだ? もう耳を引きちぎったらしいけど?」

(もうチクったのか。根性のねェヤツらだ)

「さあ。私はそんなこと一切していませんけれど」


 さも当然のようにしらばくれる。女教師は満面の笑みを浮かべた。


「そっかそっか! なら良いんだ! いまMIHは厳しくてよ! 暴力で停学とかになるからさ! 昔はそういうのなかったんだけどな! んで……あたしがキミの担任だ! なんか困ったらいつでもいってこい! てか、まずは顔見せだな!」


(随分元気な先生だな。クールのときも先生していたのなら、実年齢はだいぶ高いはずだが、妙に若々しい。20代でも充分通用するレベルだ)


「これがキミの学生証だ! 名前のスペルも間違ってないよな?」

「ええ、大丈夫です」

「なら教室行こうか! ランクAが6年飛び級で入ってきたとなれば、アイツら驚くだろうな~!」


 すごく楽しそうである。若々しく見えるのは性格も関係しているのかもしれない。

 ルーシと担任は1緒に歩く。


「クールは元気か? キミの入学んときに来たらしいけど、アイツあたしに顔出さずに帰りやがった! あんだけかばってやったのによ~!」

「ええ、元気ですよ。でも、お世話になった人と会わずに帰るとはいただけませんね。今度呼び出しましょうか?」

「おう! 頼むぜ!」


 そんななか、ルーシは見覚えのある女生徒を目に捉える。

 10歳のルーシと変わらない程度の身長、貧相な身体つき、明るい茶髪、整った顔立ち、実はルーシより貧乳。


「おお! キャメルじゃねえか! この子のこと知ってるよな!?」

「……あっ!! 知ってますよ!! ルーシちゃん!! 入ってきたんだね!!」


 キャメル・レイノルズ。クールと歳の離れた兄妹で、このMIH学園の主席であり、名目上ルーシと親戚である。


「ええ、やはり学校へ通うのは大事だと感じまして」

「よっしゃ、家族同士すこし話しな! 教室のデータ渡しておくからよ!」


 担任は紙……ではなくタブレットを渡してきた。こういったところも「近未来異世界」らしい。


「ありがとうございます。では」


 ルーシとキャメルはふたりきりになる。別に話したいことなんてないルーシは、とりあえず彼女の出方を伺う。


「ルーシちゃんさ、ランクはなんだった?」

「Aでしたよ」


 ランク。MIH学園においてもっとも重要な評定基準である。計測は簡単だった。この国ロスト・エンジェルスでは、いや、この異の世界では魔術というものが発展しているわけだが、それの実力をDからA、そしてSの5段階評価で測るわけだ。


「ランクA!?」

「そういわれたんですけどね」

「え、えっと。この前はじめて会ったとき、私がいったこと覚えてる?」

「ランクAはいまのところ4人しかいないと?」

「そうなんだよね。当然私もそこへいるんだけど……やっぱりルーシちゃんはお兄様の娘だね。10歳でランクAになる子なんて聞いたことないもん」


(まァ、学園の上層部が持つ書類じゃ、おれはランクSなんだが)

「て、ことはさ。飛び級なのかな?」

「ええ、6年飛び級です。キャメルお姉ちゃんと1緒の高等部ですよ」

「……色々と異例まみれだね。でも、ひとついっておきたいことがあるんだ」

「なんですか?」ルーシはすこし頭をかしげる。

「私の派閥に入らない?」


 派閥。聞いたことはあるが、学校にそんなものがあるのかは知らなかった。しかし、キャメルがそういうのならば、きっと学生同士でも政治があるのだろう。


「派閥、ってなんですか?」


「えっとね、MIH学園っていじめとかひどいじゃない? だから私たちみたいな実力のある生徒がさ、そういういじめられる子を守るために設立したものなんだ。いじめられるほうにも原因があるとかいうけど、この学校でそういう扱いを受けるのは、たいていは魔術の才能がないからで、勉強とか部活を頑張ってる子も多いしさ。そんな子たちを守ろうとしてるんだ」

閲覧ありがとうございます。

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