スオミVSルテニア
「無様だなぁ、ルーシ!!」
帝都ゲルマニカの東街では、ふたりの無法者の対決にケリがつきつつあった。それはスオミ・アウローラの耳障りな高笑いからも明らかだ。
「散々舐めた口利きやがったよな? エウロの無念を果たす? あたしを倒して新しい時代に向かってく? いまの女も守る? うぎゃひゃひゃひゃ!! ぜーんぶ台無しだなァ!! おい!!」
地べたへ仰向けに倒れ込むルーシ・レイノルズは、すでに満身創痍であった。胴体全体に巨大な一本傷が広がっていて、そこから流れる血はいたずらに寿命を減らしていく。
「ただまあ……オマエにぁお似合いだ。地べた転がって許しを乞う姿、昔を思い出して興奮するぜ?」
ここまで煽られてもなお、ルーシはなにも発しない。
スオミ・アウローラは溜め息をつき、もう価値のないものだと判断したのか、その銀髪幼女にオオハクチョウの翼を突き刺そうとした。
だが。
『マスター、私たちは夢の子なのだろう?』
そんな聞き慣れた声が脳内に響いた刹那、撤退していたはずのルテニアがスオミへ、巨大な波動を放つ。空気が震え、そのあおりを受けてルーシはスオミとの距離を半強制的に遠ざけられた。
「くっだらねえ」
スオミがそう吐き捨てた頃、ルテニアは指の関節を鳴らす。身長150センチ程度の幼女が、その姿に不相応なバキバキッ、という低音を響かせれば、ふたりはまたもや激突する。
「ヒトモドキが調子乗ってるんじゃねえよ。慈悲で逃してやったってのによ」
「逃してやった?」ルテニアはらしくもなく乾いた笑い声を上げ、「悪いが、私を逃してくれたのはマスターだ。貴方ではない。空虚で無価値なスオミ・アウローラ」
「あぁ!?」
スオミは怒号とともにルテニアとの間合いを縮める。そして彼女の顔面をなんら容赦なく破壊した。
ルテニアは重たすぎる拳の前に立っているのが精一杯だが、それでもスオミへ向けて殴り合いを挑む。その幼女は、決して折れない。
「いってえなぁ!! おい!! クソ生意気なところはルーシとそっくりだな!?」
「当たり前だろう……!! 私はルーシの妹で娘だ!!」
だが、そもそも精疲力尽であったルテニアに勝ち筋などない。
勝ち目のない戦争に挑んで、やはりすべてを奪われる。
「うぐッ!!」
「おお、ちゃんと赤いオイルが出るじゃねえか」
手始めに腕をもぎ取られ、耳をちぎられ、流れる汗の塩分が傷に染み渡った。
「馬鹿ガキどもが」
なおも闘う姿勢を崩さないルテニアへ、スオミは苛立つ。こうなれば完全に生命活動を停止させるほかない。
「おらぁ!! ヒトモドキの心臓ってのはどんな形なんだい!?」
スオミ・アウローラはルテニアの心臓部分を抉り、彼女の胸周りからなにかを奪った。
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